現実
こんな夢を見た。これは夢ではないが。夏目漱石先生に敬意を表して、、、
私は現実を見た。こう書くと、そこは“夢”の間違いじゃないのか、あの有名な夢○夜のもじりではないのか、と人に問われるだろうが、私は確かに現実を見たのだ。
あれはある七月十日のことだった。七夕はとっくに終わり、街からはそのムードも消え去るころだったが、当日何もすることがないくせにその後数日浮かれまくる私は、一人はしゃいでいた。そういえば七夕の日は好きな人の誕生日だったな。七夕にかこつけて祝おうと思ったが、何の変哲もない、しらけたものになってしまった。そんな風に振り返っていられるのも今のうちだ。せいぜい生きているしかない。そんな時、私の意識が急に浮き上がって部自分の体が見えた。幽体離脱?そんなお洒落なことができるほど器用な人間ではない。もしそうなら、とっくに世間に埋もれているはずだ。私は自分を初めて見た。これが、現実を見た、ということである。自分を見た、ではなく。
その後私は、すぐに動いた。ただひたすら山に登った。幸い、周りには掃いて捨てるほど山があった。私はこれまで山というものに一片の興味も抱いていなかったが、なぜか「山に魅了された」と思うようになってきた。それで金の心配など一つもせず山に登った。何もせず生きているより妙に心地よかった。
龍蛇⋯超短編を得意(?)とする、新人(素人)小説家。




