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肉塊文明ストラテジー・醜悪な文明の指導者が、英雄を悪と光落ちではなく肉落ちさせて戦う模様  作者: 福郎


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悍ましき文明が宣戦を布告しました!

 そもそも騎士国という名前が悪いのだ。


 スート騎士国は世界の中心に潜む者達から特に酷いと判断されているような国家体制で、通常の人間をよくて家畜。悪ければ単なる資源としか認識していない。

 ではなぜこんな国家が、一応は秩序・善側に属し、南から押し寄せてくる悪の勢力に対する防波堤。つまり、人類の前線である西に近い位置に存在するのだろうか。


『騎士団、全員突撃!』

『悪しきを滅ぼすのだ!』


 答えは酷い欲と打算。そして仕方ない事情が絡んでいた。

 襲い掛かる悪の勢力を防いでいる、西側国家への援軍として結成されたとある騎士団は、まだ理性的だったころのリーア聖国や他の様々な国から援助を受け、きちんと活躍を果たした。


『俺も騎士団に入る!』

『田舎の三男坊だろうと偉くなるんだ!』


 そうなると富と名声を求めて人員が急速に膨れ上がるものだが、ここで当時の騎士団は決定的な失敗をしてしまう。


『金が足りない!』


 元が単なる武力集団のため殆ど何も考えず、勢力と発言力の拡大を優先した結果、消費が供給を上回ってしまったのだ。

 そして失敗を反省すればまだ違った未来があっただろうが、騎士団にタイミングがいいことに、人類への貢献をあまりしない国家が存在した。

 単純に国力がなく外へのリソースを裂けない国家だったが、百年前は北側が一致団結して悪と戦おうという雰囲気だったので強く周辺から疑われた。

 もしここが裏切ると西の国家が孤立してしまうような位置だったことも、巡り合わせが悪かった。


『正義は我らにあり!』

『西への補給網を寸断されるわけにはいかない!』


 実績を持つ騎士団が膨れ上がったことと、地政学的に放置できない場所を疑わしい国家が統治している。

 この二つが化学反応を起こしてしまい、騎士団がその国を異端の疑いありとみなして強襲。

 リーア聖国など他の国々は黙認、もしくは秘密裏に支援。

 最前線である西の国々は騎士団が共に血を流したこともあって非常に肯定的で、立場を隠した神器持ちすら派遣した国がある。


 結果的に新たな国家、スート騎士国は様々な支援を受けて成立し、元の国家が抱えていた貧しさからなんとか脱却できた。


 その上、まだ建国して間もなく騎士国の名が相応しい時期のスート騎士国は、きちんと混沌勢力との防衛戦には参加していたため、周辺各国にとって十分なリターンがあった。

 あったのだが……。


 元々が自分の限界を見誤って膨れ上がった集団を祖としたスート騎士国は、他の支援していた国々が自国を優先し始めると破綻した。


「ぶふー。リーアも他の国々も愚かな」


 豪華絢爛。装飾()美の宮殿。


 態々玉座を作り直さねばらない程の肥満男性、ロジェリオが他国を嘲笑する。

 薄い赤毛に青い瞳。四十代だろうか。あまりにも肥えすぎているため実年齢が判別しにくく、それこそ肉塊が玉座に座っている様なロジェリオは、スート騎士国の王であり腐敗の象徴だ。


「我々を支援せねば防衛線がどうなると思っているのやら」

「左様でございますな陛下」


 ロジェリオの呟きに家臣が賛同したし、単純に考えるとこの意見は正論だ。

 しかし暗黒の勢力は現在、極端な仲間割れを繰り広げており、軍事的行動を起こしてはいるものの、数百年前の全勢力が一致団結した大戦争には遠く及ばない。


 そのため自国を優先しても、今すぐ防波堤の東西が陥落するような事態に陥ることはなく、後方支援地であるスート騎士国への関心はどこの国も薄い。

 たった一つの勢力以外は。


「税収は?」

「二等国民と三等国民で補えております」

「ならばよい。ぶふー」


 ロジェリオの問いに家臣が報告した。

 スート騎士国は、元の国を滅ぼした後にその民を異端に与しかけた二等国民。貴族や王族、それらに仕えた者を異端でありながら贖罪の機会を与え生かした三等国民に分類。

 勿論、後から征服した騎士団の人員は貴族や王族となり、末端の関係者が通常の国民になった。


 つまりこの報告は、貴族達にとって虫けらを搾り取ったというものでしかなく、それに伴う悲嘆は全く考慮されていなかった。


「ただやはり、収入を更に安定させるためには……」

「うむ。隣の金銀鉱山。いや、我が国の財宝はきちんと管理する必要がある」


 救いようがないという表現以外になにができるだろうか。

 提案する大臣も、頷くロジェリオも、足りないモノがあるから隣国から貰おうと思っているだけだ。

 その隣国が防衛線を構成する西の国の一つだろうが気にせず、寧ろ暗黒の軍勢に備えていない柔らかい場所を突けるという思考力しかない。


 彼らにとって資金は、他国が勝手に援助してくれるものであり、自らが産業を整え育てていくものではない。

 それをずっと続けてしまったスート騎士国は誕生と成長過程からして歪極まりなく、今まさに野盗騎士国家に変貌しようとしていた。


「陛下、そろそろお食事の時間かと」

「うむ。ぶふー。後は任せた」

「はい陛下」


 ロジェリオが食事のため重たい体を揺らして歩く。

 準備されていた食事は庶民のことなど全く考えていないものだった。

 民が飢えているのに家畜へ優先された餌と、それによって育った牛の肉がある。

 パンや温かいスープを庶民が食べられていないと知っているのだろうか。きちんとしたサラダではなく、木の根をほじくり返している生活は?


 勿論、ロジェリオたちは知ったことではない。

 彼らにとって民とは先祖の騎士団が率いた者達で、二等や三等の国民は家畜より更に下の扱いなのだ。


 幸いなことがあるとすれば、王城の人間が態々家畜以下の存在に直接関わる気がないことだが、王都から離れた場所ではそうはいかない。


 ニーヴィンズという子爵を紹介しよう。


「わはははは! そら逃げろ逃げろ!」


 金髪碧眼。顔には自信が漲っている、二十代中頃の若い子爵ニーヴィンズが馬を乗り回し、一応は木製の矢じりが付いた弓矢を放つ。

 狙いは二足歩行の動物で、名を人間と言った。


「ひっ⁉ ひいいい⁉」

「あぎゃっ⁉」

「わはははは!」


 老若男女の悲鳴と貴族達の笑い声が響く。

 お上品にキツネ狩りと呼称される行いは、騎士団が祖先の武を忘れないための伝統で、基本的には馬に乗り木製の矢じりの弓矢で獲物を狙う。


 この獲物は二等国民の最下層。もしくは三等国民が選ばれ、貴族曰く過ぎた名誉の役目を担っている。

 だが木製の矢じりとはいえ当たれば激痛だし、何より馬の突進に巻き込まれれば重傷を負ってしまうだろう。


「おいおいマニー! それでは最下位だぞ!」

「なんのこれからです!」

「はははは!」

「気張れよマニー!」


 気さくにニーヴィンズが家臣に声をかけると、周囲から実に楽しそうな笑い声が漏れた。

 神器使いの彼は将来を期待され、父からも早く家督を譲られている。実際家臣からの評判も良く、彼の名は王のロジェリオまで届いている程だ。


 尤もそれは下級の民には当てはまらず、周囲もごく自然なこととして受け止めている。


「陛下主催のキツネ狩りが行われないのは残念だ」

「そうですなあ。しかし、お楽しみは隣国を攻め入った時にもあるでしょう」

「うむ。そうだな」


 張り切っている家臣に任そうと思ったニーヴィンズが残念そうに呟いたが、すぐに気を取り直す。

 本来なら国王が主催する大規模なキツネ狩りが行われる時期だが、隣国に攻め入る準備が優先されているため中止になった。

 しかしもう少し待てば戦争が起こるため、ニーヴィンズのような若手貴族はそれを楽しみにしていた。


「兵は?」

「万全です」

「よし。本当に楽しみだ」


 ニーヴィンズが尋ねる兵とは通常の市民。つまりかつて騎士団に所属していた者達の集まりで、下級市民は単なる雑用で数にも入っていない。

 彼らの頭の中では騎士団は神聖なる集団であり、かつての異端がその中に混ざるなど考えただけで虫唾が走る。


「祖よご照覧あれ。我ら一同、貴方方のように戦場を駆け巡って御覧に入れます」


 ニーヴィンズが誇りに満ちた顔で宣言する。

 王であるロジェリオが聞いても頷くだろう。


 彼らの祖にはソレしかないのだから、誇るのも参考にするのも過ちだけだった。


 三等国民。もっと言えばかつての王族の血を引く娘がいつの間にか消え去り、森に誘われているなど知る由もなく、知ったとしても興味を持たなかっただろう。


 ……。

 走る。

 異形が走る。


 たった一騎の騎士が走るが、それを騎士と断言していいものか。


 異様に刺々しい甲冑に見えるだけの暗褐色の外骨格が、なんとか馬に見えるだけの肉塊に乗りスート騎士国を走る。

 手にはdの紋章を見せつける白い旗を持ち、なんとか使者としての体裁を整えている。


 山だろうが谷だろうが関係なく駆け続ける。


 集合意識に管理されている悍ましき者達の中でも最古参に近い特別個体、布告官の役割は酷く単純だ。


 暗黒と敵対関係で防衛線に強い関心を持ち、スート騎士国が後方地の役割を放棄するどころか害にしかならないと判断して、しかも重税で民が苦しみ抜いている。

 地政学的にも戦略的にも利益が存在し、そして心情的にもスート騎士国は不要だった。

 故に。


「偉大なる大王陛下のお言葉を伝える!人類の防衛線を崩しかねず、民を蔑ろにするスート騎士国を許容することは出来ない! 中央国国王シュウイチがここに、貴国スート騎士国に宣戦を布告するものである! 以上!」


 よりにもよってスート騎士国の王都、ド真ん前で布告官が名前通りの役割を全うした。



 ◆


 集合意識に接続せよ。

 蠢く者達よ接続せよ。

 進軍せよ。進軍せよ。神託が下された。

 進軍せよ。進軍せよ。神託が下された。

 スート騎士国滅ぼすべし。

 スート騎士国滅ぼすべし。


 称えよ。

 称えよ。


 偉大なりし大王を称えよ。

 慈愛と寛容の統治者を称えよ。

 知恵・勇気・節制・正義の御方を称えよ。

 至高の神々である手の十柱。右親指を称えよ。


 畏れよ。

 畏れよ。


 憤怒と闘争の御大将を畏れよ。

 吹き荒ぶ殺戮船団の提督を畏れよ。

 無知・無謀・強欲・悪の主を畏れよ。

 止まらぬ御旗の振り手にして先駆者を畏れよ。


 大王陛下ご出陣!

 大王陛下ご出陣!

 大王陛下ご出陣!

 大王陛下ご出陣!

 大王陛下ご出陣!


 醜悪王陛下ご出陣!


 ◆


 悍ましき文明がスート騎士国に宣戦を布告しました!

 悍ましき文明の大義は人類防衛線の補強と、それを崩しかねないスート騎士国の排除。並びに民の保護になります!

 スート騎士国はヒーローユニット・マテオの活動を妨害できませんでした!

 前線の都市と村落が一斉蜂起の準備を整えています!

 

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福郎先生のフレーバーテキストホント好き
鎌倉武士「(うむ、いい鍛錬法だな!)」
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