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肉塊文明ストラテジー・醜悪な文明の指導者が、英雄を悪と光落ちではなく肉落ちさせて戦う模様  作者: 福郎


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愚か者の主観

 善悪の勢力を問わず馬鹿は共通して存在する。


「神の御意志に反する者を根絶やしにする! それこそが我々の使命!」


 場所は秩序・善に属する国家の中で最大勢力の一つ、リーア聖国。

 偉大なる最高神アーリーを奉じる者にあるまじき。もしくは相応しい叫びが飛び出した。


「そうだカスパー!」

「お前の言うとおりだ!」


 同僚達からの賛同を得ている男の名はカスパー。

 三十代中頃で短い金髪と妄信の宿った碧眼。そして鍛え抜かれた体が特徴的な大柄の男で、聖騎士の地位を得ていた。


 異端と邪悪を滅する目的で設立された聖騎士は、リーア聖国の最精鋭が所属する戦闘部署だ。

 その役割上、戦闘技能に秀でている上で熱心な信者であることが条件の聖騎士は、邪悪に与する者達だけではなく、他の神話体系を信じている者達も激しく憎悪している。

 それ故に秩序側は最大勢力であるリーア聖国が、他の国への異端弾圧に乗り出すのではと酷く警戒していて、実際に秩序勢力同士での宗教戦争が起こる手前だった。


「悪神を滅ぼすのだ! 正しき神に従う我らにこそ栄光は相応しい!」

「おお!」

「よく言ったカスパー!」


 なにせ最精鋭で国の中枢に近い聖騎士がこの有様なのだ。

 これで国家を運営している者達が、聖騎士の言動に頭を痛めているならまだ救いはあったが、大なり小なり方向性はほぼ同じのため、そこれこそ救いようがなかった。

 正しい絶対の神に従っているという妄信。優越感。そして他者を見下さねば生きていけない感性。それはどんな世界でも変わることがないのだろう。


(上の頭が固すぎる!)


 さて、国家の方針が妄信で突き進んでいるのに、カスパーの内面では不満が渦巻いていた。

 というのも彼らは最精鋭だけあって、王都から気軽に動けるものではないのだが、カスパーは現場に出て悪と異端を滅したかった。

 いや、これはカスパーだけではなく多くの聖騎士が持つ不満なのだが、上層部に言わせれば、動かすだけでとんでもない予算が費やされる存在を、単なるゴミ潰しに投入できるか馬鹿! となる。

 ただ、予算に関することは間違いなく本音なのだが、隠されている本音もある。

 聖騎士の運用で想定されているのは、悪魔や神器持ちの異端者だが、王都にいる上流階級の守護も同じかそれ以上に重要視されていた。


 最精鋭が首脳陣や首都を守るために配備され、取り返しがつかない戦況になって投入されるのはよくある話だが、極々限られた者達にすれば最も強力な存在が自分たちを守ってくれないと安心できないのである。

 それで、現場に出たい聖騎士との間に軋轢が生まれているという訳だ。


(猊下もこの件に関しては頼りにならん!)


 カスパーの不満の矛先は、リーア聖国を統べる頂点。教皇アーデルヘルム五世にも向かうが、この教皇はきちんと国を考えているだけだ。

 アーデルヘルム自身も異端と悪を滅ぼすために突き進んでいるし、出来れば前線で聖騎士を運用したいと思っている。それは間違いない。だが、ネズミの駆除に極大魔法を使う者がいないように、国内や国境をうろちょろしている存在に聖騎士を投入するのは過剰過ぎた。


 尤も、国家を運営している者達の気苦労を若手の将軍などが無視し、妄信しているだけで形にすらならない理想を押しつけたがるのもよくある現実だった。

 そしてこの理想は、自らの信じる神とその信徒以外の殲滅も含まれており、醜悪王が知ればやっぱり分かり合うのは不可能だと再認識したことだろう。


(毒森に行くか?)


 カスパーの脳裏に妄信が浮かぶ。

 世界の中心地に存在する毒森は、様々な理由で迫害された者が逃げ込む地だ。

 その中には当然、リーア聖国から逃げ出した者達も混ざっているし、異教の連中だっているだろう。更に述べると領有が定まっていないため、この地の者をどれだけ殺しても、国際関係にはあまり影響がないときた……あくまで彼の頭の中ではだが。

 まさにカスパーが使命を果たすのにこれ以上ない地であり、妄信がどんどんと膨らんでしまう。


 理性は止められるが理想は止められない。


(国に帰ることは出来ないだろう……だが……!)


 流石のカスパーも聖騎士を離脱して毒の森に向かえば、リーア聖国に居場所が無くなることくらい分かっている。

 しかし、常人としての思考を置き去りにしたような妄信者は、最早現実に生きていないも同然だ。


(……行こう……使命を果たすために)


 理想に酔うを通り越して泥酔している愚か者は、祖国を捨てることすら試練に捉え、なんの生産性もない行為に突き進む。


 最精鋭。魔法と武術の達人。神の偉大なる信徒。

 それがどうしたと言うのだろうか。

 結局のところ主観がある以上は、それに従ってしまうのが生物であり、人も……神も変わらない。


 次の日、カスパーと志が同じ四名の聖騎士が出奔。

 目的地は当然、異端が犇めく毒森の地だ。




 -神について語りたいだぁ? 適当なガキと屈強な男を連れて来い。そいつらに石を持ち上げさせて重いか軽いかを論じさせりゃあいいだろ。そうとも主観の話になる。お前が言ってるのはその類だ-

 口悪賢者

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勢力の最高戦力が勝手に出撃… 指導者涙目やんけ…
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