始まってしまった俺の不幸
春…新たな出会いの季節だと世間は言う…最初の内は俺、『神沢 歩』も新たな出会いに期待してたさ、長身だけが取り柄で面倒くさがりな俺でもな。ああ、してたとも。
…あいつ等と知り合うまではな。
私立武争学園…七年前に親父とお袋が創った大学と高校が一緒のエスカレーター式の学園で、ある画期的な最新のシステムと技術を取り入れたことで話題になっている。その画期的なシステムとは…クラス間の戦争。正直、そんなことをやれる訳がないと思うだろ?ところが、それが可能になっちまったのさ…擬似戦闘システム、『バトルライザー』ってのが作られたせいでな。これは世界のお偉いさん方のいざこざを犠牲無く平和的に終わらせようと某大学の研究チームが国に以来されて開発を開始して、それから…まぁ、簡単に言えば戦争を血を流さずに終わらせる為に作られた訳さ。それに目をつけたのが理事長と学園長、俺の両親ってわけさ。わざわざ勉強にリンクする様にしたバトルライザーを作り出しやがった。才能の究極の無駄使いだ。…ちなみに、その学校用のバトルライザーの実験台は俺だったりする。中三になって、進路は問答無用で決定。そして…俺の一生忘れられない学園生活が幕を開けたのさ。
入学式…体育館でのくっだらない理事長と学園長(親)の話と生徒会長らしき生徒の挨拶が終わって、クラス分けがあるからということで土間の前に新入生は集められた。ちなみに、この学校に学年はあるが、クラスは学年別ではなく同じクラスの学年で一つのクラスとなっている。流石に大学と高校は別になっているがな。しかも最初に分けられたクラスは大学卒業まで変えられる事は無い。…改めて思うが無茶苦茶だ。クラスはA~Hまである。親父曰く、Aが最も良いクラスらしい。最悪はDらしい。しかもクラスは受験の時にやった心理テスト的なもので決められているらしい。つまり、クラス分けに学力は関係ないらしい。なのに最高と最悪が決まるらしい。…これまた無茶苦茶だ。全く…この学園では常識は通用するんだろうか?まぁいいや、いずれ慣れるよな。
「次、193番、神沢 歩!!」
おっと、俺のクラスが言い渡される様だ。当然Aだろ。だって、親が理事長と学園長なんだぜ?Aに決まってるさ。大切な大切な長男なんだぜ?
「Dクラス!!」
俺はいらない息子の様だ。
クラス発表が終わった。結局、Dクラスを言い渡されたのは新入生160人中…俺を含めて4人だ。俺と、黒の強い蒼の髪で不敵な笑みを浮かべている男子と、金髪のロングヘアーで明らかに気の強そうな長髪の女子と、銀髪ショートヘアーの見るからに無愛想な女子だ。新入生はとりあえず各クラスの校舎に行く事になったので、当然、俺たち四人もDクラスの校舎に向かうわけだが…俺の気分はかなりブルーだった。だって四人だぜ?これからやっていけるのかな、俺?これからの不安にかられつつ、俺(正式には俺達)はDクラスの校舎に向かうのだった…
「おい、そこの青年よ…」
黒の強い蒼の髪の男子が話しかけてきた。…終わらせようとしたのに何しやがる。
「…何?」
仕方が無いから会話をする。初対面から無視はできないしな。
「名は何と言う?」
怪しいわりには普通な質問だな、おい。
「神沢 歩だ。お前は?」
「俺は『伊集院』だ」
「下は?」
「マイケルとでも言っておこう」
前言撤回。まともな奴じゃないな、うん。
「して、そこの女子二人よ、名はなんという?」
名前を聞いたらそこまでなのか!?
「『ルミナ・綾瀬・アークスレイ』よ」
「…『岩瀬 詩織』」
お、彼女達は普通っぽいな。
「あんたらの名前は?」
ルミナが聞き返してくる。まぁ、相手が名乗ったんだからこっちも名乗るのが普通だな。
「俺は神沢 歩」
「俺は伊集院だ」
「…伊集院…下の名前は?」
名乗ると同時に岩瀬が伊集院に質問した。
「ジョニーとでも呼ぶがいい」
さっきと違うじゃねぇか!!
「…そう…」
そう言うと岩瀬は何事も無かったかの様に黙った。…本当に無愛想な様だ。
「む…着いた様…だ…ぞ?」
いつの間にか先頭を歩いていた伊集院が足を止めた。本人の言ったとうり、校舎に着いたよう…だ?
「何じゃこりゃ!?」
俺は驚きのあまり驚愕の声を出してしまった。…なんせ俺の目の前にはどっかの童話のシ〇デ〇ラに出てくるかのようなお城が建っていたんだからな。