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プロローグ

私のお姉様は貴族令嬢、それも貴族として最高峰と言って良い。妾腹の私とは違い生まれながらの貴族。

いついかなる時にも貴族らしくあれと我が身を律し、そして他者にも厳しい。

私に対して当たりが強いのも、私があくまで平民同然であるという身分の格差をわきまえての事だと理解している。そう、私はお姉様を敬愛し、尊敬し、もはや崇拝しているといっていい。


しかし、そのお姉様が――――。


「ヴェロニカ・アングラータ!私はお前との婚約を破棄させてもらう!」

何故?何故お姉様が婚約破棄の上、糾弾されなければならないの?いくらエルドリック王子様とはいえ、お前なんて呼ぶ謂れは無いはず。


「お前は屋敷の使用人に虐待の限りを尽くしているという報告が上がっている、ある者は部屋を追われ納屋に押し込められ、冷たい土の上で夜を凍えて過ごし」

違う、お姉様はそんな事はなさっていない。


「ある者は身も凍てつくような寒さの中、水の中に放り込まれて死にそうになり」

それも違う!断じてそんな事はなさっていない!


「妾腹とはいえ、妹を使用人の身分にまで貶め、家族とすら扱っていない!」

違う!それは事実と反しているわ! 私は反論したいのを歯を食いしばって耐えるしかない、しかし今の私の身分ではどうする事もできない。

けれども、そんな中でもお姉様は冷静だった。いや、貴族は無闇に心の動きを顔に出してはならないという不文律を守っておられるだけだ、目を見ればわかる、あれは必死で心を抑えつけようとしている時の目だわ。


お姉様はエルドリック様に対して毅然と胸を張り一言反論された。

「バカバカしい、それはあの子が勝手にやった事よ? 私は何も知らないわ」


だが、王子様はその反論にかえって激昂されたらしい、隣にいる平民の生徒の肩を抱き、さらにまくしたてる。

「お前は自分の罪を認めないのか! アンナ嬢からも聞いている! わざとではないにしろ、粗相をしてしまったアンナに対して、『死んで詫びろ』と言い放ったそうではないか!」

だが、その言葉に動転したのは隣にいるアンナさんも同様だった、何か言いたそうにしているけれど、平民が王族に話しかけるなんて事は、いくら魔法学園内でも畏れ多いのか声にならない声を上げるだけだった。


「他にも、嫌がらせとして多額の借金を背負わせ、娼館に売り飛ばそうとしたり」

違う、


「抵抗できない生徒に消えない傷を負わせようと虐待しようとしたり」

違う、


「挙げ句は修道院に送ろうとしていたそうではないか! 世に悪女は数多いるが、お前は史上最悪レベルの悪女というほかない! もう我慢ならん! 本日この場を持って婚約を破棄させてもらう!」

違う、どうしてそうなる、どうして? 私は混乱するだけだった。


()()()()()()()()()()()()()()()()


どうしてお姉様が悪女と呼ばれなければいけないの!?

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