サラマンドラサラマンドラ火の中の竜
ハワイのキラウエア火山。火の女神ペレが住むという。
粘性の弱い、さらさらの溶岩をいつも吐き出して、ずっと噴火が続いている。
「壮観だね」
「本当」
ほんのちょっと離れているだけで熱が伝わってくる。
「起きて」
星花は水晶玉を取り出すと、声をかけた。
水晶玉は初めは冷たく、青だったが、やがて中心に炎が現れ、それが自在に踊りくねった。赤い炎と青い炎がちろちろと燃えさかり、一匹の小さな竜がちっちゃなあくびをした。
日本の活火山の中心に生まれた竜で、放っておくと、大噴火するのがわかったので、急遽こうして水晶玉に入れてハワイに運んできたのだ。
「火山の中心に投げ入れればいいのかな?」
拓が呑気に聞いた。
「まず、火の女神ペレにご機嫌伺いしないと」
星花は恋人たちが飾るという花を手折って、火山に放った。
花は一瞬きらびやかに輝き、溶岩に飲み込まれていった。
「誰ぞ?」
「星花と拓と言います。実は、この竜を受け入れていただきたくて参りました」
「そちらの要望だけは聞けぬな。わらわにどんな得がある?」
「ちっちゃな竜です。おそばに置いていただけたら、可愛がっていただけると存じます」
「竜か?」
「はい」
「なんという名前の竜か?」
「サラマンドラ」
「……」
ごう、と風が吹いて、水晶玉は星花の手から溶岩流に落ちた。
「これはこれは」
「お気に召しましたか?」
「うむ。気に入った」
ペレはサラマンドラを肩に乗せて微笑んでいた。
「受け入れてくれてよかったな」
「うん」
星花と拓はついでに観光しておいでと言われていたので、アロハシャツのお店を覗いたり、楽しんで帰国した。