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1年後 魔銃(まじゅう)の誕生

大変遅くなりました!

最新話投稿いたしましたので、ご覧いただけますと嬉しいです!


 賢司が初めて本格的な学問に触れたあの日から、早一年が過ぎた。賢司は今日も変わらず、学びの時間を過ごしているのだが、今回は少しばかり賢司自身も含め、周りの空気感が違う。

 その理由は……


「それじゃあ、始めるよ?」


 賢司のその言葉に山村子爵、山本伯爵は頷きを返すことで返事とした。

 その雰囲気は真剣そのもの。というのも今回、賢司は初の魔導具作成に挑戦しようとしているのだ。この一年で培ってきた魔法学の知識を総動員して、更には前世の知識も組み合わせて、最高の魔導具を作り上げるつもりなのである。


 必要な素材は、木材、鉄、魔晶石、少量の魔銅、そしてついこの間、賢司が新たに開発した小規模な発火を引き起こす炎魔法が込められた魔法陣。

 ひとまずはこれだけである。これらを順次必要な手順で加工していき、完成である。


 そんなわけで、賢司は一つ一つの工程を丁寧に作業していき、まずは魔導具本体の形を整えていく。設計図通りに木材を削ったり、切ったりしていき、そこに錬成された鉄を、さまざまな道具で形を整え、正確に合わせていく。

 因みに、この錬成という作業で使われるのは"錬金術"という魔法である。ものすごく高度な魔法であり、それと同時に習得する際に、国家試験に合格しないといけないほど厳格に使用が制限されている魔法でもある。

 理由としてはこの魔法が冥闇魔法の分類で、場合によってはものすごく残酷な方法で錬成しないといけないものもあるので、基本的には禁術に分類されているからだ。高度な道徳心と正しい知識で扱える者だけに使用が許可される特別な魔法なのである。

 そんな凄い技術なので、習得出来ないかな〜などと賢司は考えているが、現状習得することはできない。というのも、錬金術は高度で危険な魔法のため、帝立学園の入学試験を無事突破し、晴れて学生として迎えられた上で、その学年の上位100名にしか受講資格を与えられない超難関学問であるためだ。

 しかも、毎年皇国保護下の8つの属国からも入学者を募っているため、受験者だけで一万人を軽く超え、入学人数は2500人だ。その中で上位100人に食い込むとなると、それなりの努力が必要である。しかし、それでも賢司は習得したいと思っている。何故なら、習得出来た方がメリットが多いからだ。


(錬金術を扱えれば、どこでも簡単に錬成が必要な素材を加工できるからな。しかも魔法だけで物を変形させられるので、鉄などを使うときに道具が必要なくなるのは大きい)


 そんなことを考えながら、作業を続けていると、最後の行程に移った。それは、あらかじめ開発に成功していた魔法陣を、魔導具本体に正確に書き写す作業だ。

 これが完了すれば、


「出来た!」

「「おぉ!!」」

「魔力で鉄の塊を発射する"魔銃(まじゅう)"の完成だ!」


 それはまさにこの世界では異形のモノであった。この魔導具を手にした者たちがまず驚くのは、その大きさと重さであろう。全長約1.25メートルで、重さ2.3キロ。片手で持てなくはないが、戦場で振り回すのならば、流石に片手では無理がある、そんな代物である。


「殿下、まずは魔導具の完成、誠におめでとう御座います」

「うん、ありがとう」

「それでは一つ、お聞きしたいことがあるのですが、宜しいでしょうか?」

「うん、良いよ。何が聞きたいのかな?」


 山村子爵が興味を抑えきれない様子で、賢司に質問をする。


「では、お言葉に甘えて。初めにこの魔導具はどのように使うのでしょうか? 刀、ではないように思いますが……」

「あぁ、そうだよね。現在の大和皇国で正式に使われてる武器は刀や薙刀が多いもんね。一見しただけじゃ分からないよね」

「そうですね。刀でなければなんなのか、皆目見当がつきませぬ」

「これは僕が魔銃と名付けた魔導具で、本体中央下部のこの"引き金"という場所を指で引くと、魔力で発火して鉄の塊を敵に飛ばすというものだよ。他にも色々と効果を付与していきたいけど、今はまだこれが精一杯かな」

「なんと……大変便利なのですね。しかし、大変申し上げにくいのですが、鉄の塊を飛ばすと言っても、相手は金属鎧などを装着しております。貫通できるでしょうか?」


 山村子爵はやはり遠距離戦闘の専門家である、と賢司は思った。素早くこの魔導具の懸念点を指摘してくれた。


「そこは大事な点だね。意見をありがとう。そうだね、結論から言うと、まだ試射もしてないからなんとも言えないって感じだね。でももし仮に金属の鎧を貫通できなさそうなら、弾の形状を変えてみたりなどの工夫をしたり、魔導具の火力を調整してみたりと、考えられることはいくらでもあるよ」

「確かに……仰る通りで御座いますね」

「それに、この魔導具の利点はそこだけじゃない。通常、魔導具とは使用者本人の魔力を吸い取って起動するものだけど、僕のはそこが根本的に違う。僕が考えたのは、大気中にある魔力を吸い取る術式を魔法陣に込めたんだ。これにより魔力が少なめであまり魔法が使えない人でも、強力な戦力になることが可能だと思う」

「「!!?」」


 賢司の言葉に山村子爵、山本伯爵両名が驚愕の表情になる。しかしこの反応は当然であると言える。何故なら、今までは魔法が使えない者たちはただただ武術を極め、戦場で血みどろになって戦っていた。勿論、身体強化などの基本魔法は習得している者が圧倒的に多い。と言うよりも、軍人はほとんどが身体強化を使うことができる。

 しかし近衛抜刀隊の兵士や特戦魔導師団の魔法使いたちのように、様々な魔法を戦闘に組み込んで戦える者は限られている。そこに、新たに魔法の才能が無くても、強力な火力を叩き出す兵士が現れればどうなるか……


「殿下! これは軍事の革命ですよ! 国家機密級の開発を貴方様は成し遂げられたのです!! これは一大事ですよ!」

「山村子爵の言う通りです。殿下、もしこの魔導具が正式に採用され、量産態勢に移り、軍全体に行き渡れば戦争の仕組みそのものが変わります! 我々のように魔法を沢山扱える者ならばともかく、魔法をあまり使えない軍人からすれば、特に結界魔法が扱えない者にとっては、この魔導具はは天敵と言えるでしょう」


(流石にこの2人は理解が早いな。その通りだ。この魔導具を試作では無く、完成させることができれば、魔法を大して扱えない兵は敵ではなくなる。早急に完成、および量産態勢に移行しなければならない)


「2人ともありがとう。でもねまだ改良の余地はあると思う。だから今後も研究を続けるし、まずは試射をしないとね。だけど、君たちの言う通り、かなり有用そうなものができたから、念の為父上には報告しておくよ」

「えぇ、そうされるのが宜しいかと存じます」

「我々も同行致します」

「ありがとう。では取り敢えず、訓練場に行こうか。さっきからこの魔導具を使ってみたくて仕方なかったんだ」


 賢司がそう言うと、それに真っ先に反応する男がいる。


「分かります! 分かりますとも殿下! 早速訓練場を手配いたしましょう!」


 そう言って、山村子爵はまさに弾丸のような速度で訓練場の方に向かったのであった。


「全く……魔法の話になると、彼を止められる者はおりませぬな殿下」

「それはもう、分かりきったことじゃない」

「左様ですな」

「そうだよ」


 賢司と山本伯爵は軽く笑い合いながら、山村子爵の後を追うのであった。




 


 

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