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蠢く邪心

この度、この作品においてご報告がございます。

ここまで読んでくださった皆様は既にご存知かとは思いますが、こちらの作品は三人称視点で書かせていただいておりました。


しかし、今回のお話から一人称視点へとお話の進め方を変えさせて頂きます。今後もストーリーの都合上、ちょくちょく他人視点が出てくることもあるかと思いますが、基本的には賢司視点で物語を構成して参ります。


急な執筆方法の変更でご迷惑をおかけいたしますが、今後ともお付き合いいただけますと幸いです。

 反乱軍に大奇襲を喰らわせた数日後、ようやく私たちは帝都へと戻ってきた。既に早馬にて、奇襲作戦が無事に完了したことは伝えていたので帝都はお祭り騒ぎである。


 "英雄のご帰還だ!" "賢司殿下が初陣で勝利"

 "賢司殿下万歳!"


 山村子爵曰く、"逆賊反乱軍に対して神童と呼ばれる第三皇子殿下が天罰を下した" と言うふうに民には映っているようです"とのことだ。


「それにしても、これほど上手くいくとはな……賢司よ、本当に良くやってくれた」


 そう話すのは、目の前のソファーにドカッと座ってお茶を飲む我が父、聖皇奉文である。それに対して私は即座に否と答える。


「父上、今回の作戦は私1人で成し遂げたものではございません。新開発したばかりで量産体制もままならない兵器の使用を許可してくださった父上。常に隣で護衛をしてくれる山本伯爵と山村子爵の2人。そして何より、命を賭して私の命を遂行しようと戦ってくれた武士たち皆の協力があってこそでした。本当に感謝してもしきれません」


 私のその言葉に皆が瞠目(どうもく)しながらも、温かい笑みを浮かべて頷く。


「確かにその通りだな。他の皆にも改めて礼を言おう」


 そう言って頭を下げる奉文に一同は慌てて止めに入る。


「か、顔をお上げください陛下! お気持ちは大変嬉しゅうございますが、私どもはあくまで仕事をこなしたまででございます」

「山本卿のおっしゃる通りでございます。安易に頭をお下げになってはなりませぬ。陛下や皇族の方々のためならば、我らは喜んでこの身を捧げる所存でございますれば」


 山村子爵の言葉に山本伯爵をはじめとした武士たちが力強く首肯する。それを受けて、父上は再び短く礼を述べる。


「そうか。感謝する。今後とも、期待しているぞ皆の者」


 父上のその言葉に私を含めた皆が力強く、そしてはっきりと返事をする。


 "はは!!" と。



 


 父上との面会が終了した後、私たちは場所を移して次の行動について話し合っていた。


「このように、敵陣営は奇襲作戦で一瞬にして千名以上の被害を出したことで最初のような勢いのある侵攻速度ではなくなっております。現地の密偵からの情報によると、寄せ集め軍の弊害が出ているとのこと。現在は敵の最初の会戦予定地である杉原伯爵領にいるようです。現地部隊の抵抗もあって、拮抗状態が続いております」


 伝令役が事細かに状況を説明してくれるおかげで状況を整理しやすい。ありがたい。正直、あの後は一目散に帝都に逃げ帰ってきたために情報収集の出来がイマイチだったんだ。


 しかし、抜刀隊と魔導士団が居ながら拮抗状態とは不穏な匂いが漂っているな。本来なら過剰戦力なくらいに派遣しているのだが……。


「君、一つだけ聞いてもいいかな?」

「は! いかがなさいましたか? 賢司殿下」

「今の報告に気になる点があったんだ。抜刀隊と魔導士団が居ても拮抗している戦況というのがきな臭いなと思ってね。何か手掛かりとなる情報はなかったのかな?」


 私が懸念点を質問すると、伝令兵は"確かに仰る通りでございますね"と呟いた後、少し考え込んでから顔を上げて再び口を開いた。


「そう言えば、奇妙な報告がございました。敵の中に異質な者たちが混じっていたとのこと。数は50名ほどと少なかったのですが他より明らかに実力が抜きん出ていたと申しておりました。結界、転移、身体強化を高い練度で行使してきており、その中でも結界魔法の練度が尋常ではなかったとのとこです」


 結界魔法が異常に強い部隊……どこかで聞いたことがあるな。


「父上……」

「あぁ……お前の言いたいことはおそらく私と同じだ」


 どうやら私と父上は同じ敵の姿を想定したらしい。そしてそれはこの場にいる上級貴族たちも同様のようだ。


「ブルボネア大公国……」

「あぁ、間違いなかろう……」


 北条大公と南条大公が口々に言う。それに他の貴族たちも続く。


「まさか彼の国が絡んでくるとは……奴らは結界だけに留まらず、他の属性魔法もものすごい練度で使ってくる」

「おそらく彼の国の人間が協力していることを悟られぬよう、使う魔法を限定していたのだろうが、彼の国のお家芸とも言える魔法を使ってしまったことは失敗だったな」


 皆の話を聞いていて、私はふと疑問に思ったことを聞いてみる。


「父上。一つご質問なのですが、ブルボネア大公国はなぜそれほどまでに結界魔法が得意なのでしょうか?」


 私の質問に父上は"うむ"と返事をして理由を語り始める。


「お前もブルボネア大公国が元々はエルムンド連邦の領地であったことは知っておるな?」

「はい」

「ブルボネアは連邦からの独立前に中央政府と政治方針で色々と揉めたと聞く。そして話し合いでは解決できないと悟った先代ブルボネア大公である、アルカン・フォン・ブルボネア大公は世界中から魔法使いをかき集め、5年の時を費やして魔法教育に力を入れた後、祖国に反逆して独立宣言を行ったとされている」


 父上の言っていることは概ね私が授業で習ったことだ。


「ここまではお前も知っての通りだろう。問題はここからだ。エルムンドは我が国に比べれば歴史の浅い国だが力は本物だ。四大国に名を連ねるだけあってブルボネアの独立戦争は長く厳しいものとなった」


 父上の話を聞いた私はそうだろうなと言う感想を抱いた。なんせいち領地と国家では自力が違いすぎる。

資源も人も資金も足りないであろう中、どうやって生き残り続けたのだろうか?


 そこまで考えた私はふと思い至った。おそらくだが……いや間違いなくそうであろう。私は答え合わせをするかのように父上に尋ねた。


「まさか、独立戦争で苦境に立たされたが故に結界魔法が強くなった、と?」

「まさしくその通りだ。彼らには人的資源も天然資源も資金も足りない。それでも祖国は無慈悲にも自分達を制圧しようと襲いかかってくるのだからな」


 そこで言葉を区切ると、父上は"だが"と続ける。


「彼らは抵抗した。それはもう頑強に。祖国の人間たちが戦慄を抱くほどの領主の独立への執念は民にも伝播していたからだ。結果として、攻撃よりも多くの命を守れる結界魔法が彼の国では発展したと言うわけだ」


 私は父上のその説明を聞き、なるほどなと思った。確かにそのような状況に追い込まれれば、誰でも防御の方法を必死に考えるものだ。


「そういう事情だったのですね……ならば結界が得意というのも頷けます。であれば今後は彼らが本格介入してくる事態を想定して作戦を立てなければいけませんね」

「その通りだ。全く……よりによって我が国と同じで魔法に秀でた国がちょっかいをかけてくるとはな」

「えぇ、警戒を強めるしかないですね」


 私の言葉を最後に報告会議は解散となった。


(はてさて、これからどうなるのやら……)


 そんな一抹の不安を抱えながらも私は休息を取ることにした。

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