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今後の方針

最近投稿がまばらで申し訳ございません。なるべくコンスタントに投稿できるように頑張ります!

 貴族派陣営蜂起の報告を受けた賢司はすぐさま聖皇奉文の執務室に直行した。


 コンコンッ


 扉を叩くとすぐに衛兵が顔を出し、賢司だと確認が取れるとすぐに傍に控えた。


「おぉ、賢司か。呼ぼうと思っておったがもう来たか。ならばお主も報告を耳にしたのであろう?」

「えぇ、父上。ついに逆賊が動いたと」

「ぎゃ……いったいどこでそのような言葉を覚えたのやら……」

「……?」


 賢司がキョトンとした顔で首を傾げたので、奉文ももういいとばかりに話を始めた。


「まぁ良い。報告を聞いているのであれば話は早い。今貴文や真司、真堂卿も呼んでおるところだし、出来るところだけでも話を進めておこう」

「かしこまりました。失礼します」


 賢司はそう言ってすぐに席についた。そして改めて貴族派陣営の詳細が書かれた書類を従者がまとめて賢司らに渡していく。それを眺めながら奉文は早速本題に入った。


「まず今回の首謀者だが、密偵の話によるとやはりと言うのだろうか、石丸伯爵のようだ」

「そうですか。長年皇家に尽くしていたというのに残念です」

「む? なんだ、あまり驚いておらんな。予想しておったのか? この展開を」


 賢司が予想とは違った反応を見せたので、奉文は思わず聞き返してしまう。


「えぇ、そうですね。元々貴族派は石丸伯爵が筆頭となってできた派閥。それだけでも納得はできますが、一番の理由は違います」

「ほう、他に理由があると」


 奉文は興味深そうに賢司に問うた。


「はい。それは僕が個人的に皇宮で仕事をしている他の貴族たちにそれとなくいろんな貴族の情報を聞いていたからです」


 この回答に奉文は驚かずにはいられなかった。まさか自分の知らない間にそんなことをしていたなどと予想もしていなかったからだ。


「まさかそんな貴族家当主のようなことまでしていたとは……まぁ、良い。そしてそこで貴族派について色々と情報を手に入れておったわけだな」

「はい。そこで得た情報によれば、石丸伯爵は貴族としてはそこそこ優秀であるが、一方で少し感情的になりやすい一面があり、極たまに軽率な行動に出ることがあったとのこと。ですのでその性格から考えるならば、今まで簡単に蜂起しなかったのはむしろ彼にしては我慢したほうなのではないかと」

「ふ、ふははは!! まさかそこまで正確に情報収集を行なっておったとは! いや恐れ入った! 凄いぞ賢司よ!」

「い、いえ父上。このくらいなんてことはございません」


 賢司はあまりの褒められっぷりに気まずくなり、謙遜したが、奉文はそんなことは気にも止めずに話を続ける。


「そう謙遜するでない。とても優秀なことを成し遂げたのは事実であるのだ。余としては、変に自尊心を抱えるのはよろしくないと考えているが、ちゃんとした実績に基づく自信は持つべきと思うぞ。だから賢司よ、自信を持て」

「……はい。ありがとうございます!」


 賢司が心からの称賛に嬉しくなっていたまさにその時、扉を叩く音が聞こえてきた。


 コンコンッ。


「おぉ、あ奴らもようやく来たか。そこの君、通してやりなさい」

「はは」


 奉文が入室を許可し、衛兵に扉を開けさせると、そこには貴文、真司、そして真堂侯爵もいた。


「父上。遅くなり、大変申し訳ございません」

「陛下、遅れましたこと、心よりお詫び申し上げます。真堂正道、ただいま参上いたしました」


 貴文の挨拶に次に頭を下げた真司に続いて真堂侯爵も挨拶と礼をした。


「良い良い。お主らが忙しいのは重々承知しておる故、気にせずとも良い。それより先に賢司と軽くだが話を進めておった。まずはその軽いおさらいから始めたいのでな。早速だが座ってくれ」

「お心遣い感謝申し上げます」

「父上、ありがとうございます」

「ありがとうございます。それでは私も失礼致します」


 3人がそれぞれ席についたところで、先ほどの話題を

話す奉文。それを一同は真剣な面持ちで聞いている。そして貴文がおもむろに口を開いて喋り出す。


「まさか、賢司がそこまで観察力や情報収集力を養っていたとは……お前は本当になんでも出来るな」

「兄上の言う通りだな。俺はそういった方面が苦手だから今度色々と指南してくれ」

「賢司殿下のなさることは常に驚きの連続でございますな」


 またしても褒めちぎられる賢司。流石に居心地が悪くなってきたので、話題を変えようと賢司が口を開いた。


「お褒めに預かり光栄ですが、今は国難を乗り切るための会議です。早速ですが父上、本題の方に移りませんか?」

「うむ、そうであるな。ではまず今回の貴族派の蜂起についてたが、殲滅までは考えておらん」


 聖皇奉文がはっきりとそう言ったことで部屋の空気が緊張に包まれる。


「正直裏切り者に対して甘い対応かと思うかもしれぬが、理由はいくつかある。まず一つ目は貴族派は数が多い」


 奉文のこのセリフに一同は真剣な面持ちで首肯し、次の言葉を待つ。


「そして数が多いだけではなく、伯爵や強い影響力を持つ子爵などの中堅貴族が多いことがさらに事を難しくしておる。これらを全て殲滅、または極刑に処した上で権限を没収などしてしまえば、たちまち皇国の経済や政治は立ち行かなくなる」


 (そこは私と同じ考えだな。やはり中途半端に優秀な者が多すぎるが故に簡単に力技で解決するわけにはいかない)


 さて、どうするか? と賢司を含め一同が見守る中奉文は再び口を開く。


「故に敵と戦う際はなるべく私兵のみを殲滅し、抵抗力を奪った上で指揮官たる貴族たちは生け捕りにしてほしい。戦局的に難しい場合は仕方が無いが、出来るならば貴族は全て捕虜にしたい。そして筆頭たる石丸伯爵は絶対に許されないので極刑とお家取り潰しは決定事項であるが、その他の貴族はその領地内でのいくつかの権限を没収し、さらに資産を4割強制徴収。私兵を今までの半分しか徴兵できないという罰を与える。だが国からの援助資金や実績を上げた際の報酬金の額は今まで通りとする。これにより領民を困らせる事なく、貴族たち自身の力を削ぐことにつながるかと考えるがどうか?」


 (父上、流石だな。私としても異論は無い。ならば……)


 賢司は父奉文の案に賛成だったので、その意思を伝えるため口を開いた。


「父上、まさにこれ以上ない解決策かと。いきなり大量の貴族を滅してしまえば、困るのは領民です。そこをなんとかするには仰る方法以外無いかと」


 賢司が同意すると貴文たちも同じ考えだったのか、賛成していた。しかし、考え込む様子の者が1人……。

 それに素早く気づいた真司が真堂侯爵に声をかける。


「真堂卿、どうかなされたか?」

「おっと、これはこれはしばし考え込み過ぎました。失礼致しました」

「ふむ。何か思うところがあるのか? 真堂卿」


 真堂侯爵の様子が気になった奉文は彼に声を掛けた。


「そうですね。概ね陛下の仰った方針に賛成なのですが、一つ懸念点が御座います」

「ほう、申してみよ」


 奉文は真堂のその言葉に興味が湧いたので続けるよう促した。


「はい。それは裁かなかった貴族たちが大人しく罰に従うかということです。今まで殺し合いをしてきた憎き相手からの屈辱的な裁きです。監視者が必要かと愚考致します」


 真堂侯爵のその意見に賢司は思わず感心してしまった。


 (確かに、裁きを与えるだけでは今後問題も出てくるだろう。それを事前になくすために監視者を、ということか。流石だな)


「ふむ。監視者、か」

「はい。我々の陣営からは2人ずつ内政に明るい者を派遣し、定められた方針に背いていないか逐一報告をさせるのです。そしてその監視者は我々常道派から出すのが良いかと」


 真堂侯爵の意見に疑問が湧いた貴文が質問をする。


「なるほど、真堂卿の意見は理解できる。だが監視者を皇家からではなく常道派から送る意図は何だ?」

「はい。理由としましては皇族派と貴族派は今まで対立していたことにあります。そんなことはないとは思いますが、もし皇族派から監視者を派遣した場合、万が一今までの対立から相手のことが許せないということで監視を厳しくしてしまう者が現れた時、新たな対立の火種を生みかねません。しかし、最近まで中立の立場を保持してきた我々の陣営ならば比較的公平に監視ができるのではないかと。あくまで可能性の話です。絶対に皇族派の方々がそのような横暴をするとは申しておりません。ですので陛下のご判断にお任せいたします」


 貴文からの鋭い質問にも怯まず真堂侯爵は淡々と説明をしていく。そして納得のいく説明であったので、貴文もすぐに引き下がった。

 そして一同は奉文の判断を静かに待った。


「うむ。真堂卿の言うことも一理あるな。よし分かった! ならば監視者を派遣することと、その監視者は常道派から選抜するということで決定とする! 他に意見のある者はおらぬか?」


 奉文の最後の問いかけに誰も手を挙げずに静かに頭を下げ、反対意見がない事を示した。


「よし、無ければ今決めた方針で今後は行動していくものとする! 皆の意見、非常に価値有る物であった。礼を言う」

「何をおっしゃいますか父上。方針の大まかな内容は父上がお考えになったこと。私は何もしていません」


 聖皇奉文の言葉に貴文があまり意見を出していなかったからと謙遜をする。それは真司も同じであったようで、頷きながら肯定していた。

 しかし奉文はそれをすぐに否定する。


「何を言うか。たとえ意見が出ていなかったとしても、お前たちのように知恵ある者が揃って会議をすることに意味があるのだ。お前たちならば会議で出た案が微妙であればすぐに分かるであろう?」

「それは……そうですが」

「それが大事なのだ。話がわかる者がたくさん同席することに意味がある。故にお前たちがいてくれたことには大いに意味があるのだ。謙遜は良せ」

「父上、ありがとうございます」

「私もこれからもっと精進いたします」


 2人の決意と自信のこもった目を見て、奉文は優しく微笑みながら頷いた。


 (父上は本当に素晴らしいお方だな。ただ権力に物を言わせて自分の意見を押し通すことはできる。だがそれだと付いて来る者がいずれ居なくなる。本当に凄い人だ)


 前世でたくさんの失敗した統治者の姿を見ている賢司だからこそ、その者らと父奉文の違いを明確に感じ取っていた。


 (さて、これから忙しくなりそうだ)


 賢司はそのように思いながらも、これから起こるであろう激動の日々に向けて覚悟を決めた表情を浮かべるのであった。



 

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