異世界のパブリック・エネミー No.1が欲しかったモノ
俺の名前は何だったかな、前の世界で呼ばれてた名前なんて覚えてもないーーー
過去は忘れることにした。
今はジャック・デリンジャーって名乗ってる。
記憶の奥底にあったちょっと憧れた人から名前を拝借している。
今は、危ない世界で自由に暮らしてる。
スリルとエキサイティングは俺自身生きていることを自覚させてくれる。
俺の仕事?
ちょっと有名な強盗さ。
俺がやる仕事は汚いお金や宝石を盗みだけだーーー
大衆からヒーローなんて呼ばれて、俺自身の記事の書いた新聞を読んだり、一部の熱狂的なファンや大衆ラジオ局なんかは称えてくれちゃってた。
いい気分なんだよなーーーー
好きなものは全て手に入れる。
そうやってこの世界で生きていたーーーー
激しい銃撃戦の中を逃げて、警察を巻いて越境してまた情報を集めたら盗みをするだけ....
手に持ってるマシンガンは脅しの道具で殺しの道具じゃないってのは俺の美学だ。
スマートに仕事は終わらせるーーー
無用なことはしない、人質にユーモア溢れるジョークを言って和ませる。
硬い笑顔をどうにかしか和らげるーーーー
俺の目的は...
弱いやつを脅したり、端金を盗みわけじゃない....
「スリルを味わうわけさ...そして全てが欲しいだけさ
明日、いなくなるかもしれないでも。だから、今を全力で生きるだけさ」
ただ、それだけだったーー
名高いマフィアのボスの協力を経て、仕事もやりやすかった。
大衆からは英雄とも崇められたりでーーー
そんな最高な日々を謳歌してるはずなのに何か毎日毎日足りないと感じていたーーー
美人を侍らせたり、これでもかと贅沢な食べ物に酒にというのを楽しんだが....
何かが足らなかったーーー
そんな時に運の尽きがやって来たようだった。
同郷の凄腕捜査官にアジトを抑えられたんだよなーー
アキラ・ジンボウってやつだ。
俺よりも10歳ほど歳は離れてたな....
そんなのはどうでもいい、激しい銃撃戦の末に仲間達は全員死んで、俺は両脚に弾が貫通して骨が砕けて特に歩けないところをやつに手錠をかけられたわけだーーー
その時は本当のついてなかった、マフィアのボスも政府の犬のよって弱体化を余儀なくされて、俺を助けるほどの余力もなかったようで...
何もできないようだったーーー
ベッドの手すりに手錠をかけられた状態で、久々に同郷のやつと喋ることになったーーー
「おい、ポリ公。お前も転生者だろ?」
「ああそうだ。ジャック・デリンジャー....それはこっちでの名前だろ?公的な文書で前の世界での名前がなかったが、教えてくれないか?」
「同郷の好で教えてやるよ。奇遇だが俺もアキラだ」
ジンボウ捜査官はそれを聞いて、ベッドの横に腰掛けてコップに水を注いでこう言った。
「そうか...お前がなぜ今まで100件を超す強盗と脅迫に第1級殺人未遂と警官殺害未遂を犯したのかは聞きたくもない。
陪審員もマフィアの関係者は全て排除しての審議になるそうだ...」
「お国も俺を捕まえるのに必死だってことか...
まーあいつらの懐から札束を奪い取って、そのクソみたいな金で遊び尽くしたからなーーーところで、お前若いだろ?」
「そうだな、一応お前は俺のパイセンみたいなもんだからな〜
ああ、今年で30だ」
俺はそれを聞いて鼻で笑ってみた。
この国の役人は今まで、頭の硬い年寄りばっかりだったイメージがあったからだったーーー
ジンボウ捜査官は若干ながら、陣頭指揮を取ってこの俺や仲間たちを次々と倒して行った男だから関心は持てた。
彼からは疲れもみれたが、心の底には何か強い真のようなものが感じられて俺は気になって聞いてみた。
絶対、奴と俺は真逆の人生を送って来ただろうと思ったからだったーーー
スタートは同じ異世界転生でやって来た身かもしれないが....
俺がワルのエリートなら、こいつは反対の道を突き進んだ奴だろう。
「一つ俺が聞きたいんだが。なんで、異世界に来てなぜ絵に描いたような真っ当な人生を送ってるんだ?」
ジンボウはそう言うと強い目つきで俺を見つめてこう言った。
「俺はこの世界が好きだ。守るべきものができたーーー
それだけだ...」
「なんだよそれ...テンプレかよ」
ジンボウはそれを聞いて鼻で笑ってこう言った。
「そうだな。確かにテンプレみたいな答えだな。でも嘘じゃないそれだけだ....
ジャック・デリンジャーは前の戦争で戦禍に巻き込まれた街で転生直後は過ごしてたって聞いてる。
その街は我が国の爆撃で街は火に包まれたそうだなーーー
デリンジャー商会の従業員と家族は全員死んだって聞いた。一人を除いてな」
「何だ、知ってるのか....俺はその会社でお世話になってたんだよ。全てを失ったよ。楽しかったよあの頃はさーー」
思い出したくない思い出をふと頭をよぎったので俺は目を閉じた。
明るい未来も...あるはずだったーーーー
「真っ当に生きて来たお前にはわからないだろうな....目の前で幸せが崩れる瞬間なんてさ」
俺がそう言うとジンボウはこうどこか感情すらこもってないようなトーンで言葉を返して来たが。
その奥に自分と同じ暗い悲しみが見えた気がした。
「知ったことじゃねぇ。俺は目の前で他人の幸せが崩れていくのは嫌ってほどみて来たし、
一度失いかけたが取り戻すことができたーーー」
ジンボウはそう言うと一枚の写真を俺に見せて来てこう言った。そこには結婚式の写真だろうか若い男女二人が並んでにこやかにしているのが写っていた。
写真の端には赤い血でシミができているのも目に入ったーー
「この前殉職した部下だ。お前の仲間に撃ち殺されたーーー」
「知ったことかよ」
そうは答えたもののふと、過去の記憶を呼び覚ましていたーー
何かは言わね。
でも、気分のいいもんじゃなかった。
ジンボウ捜査官はそれを聞いて、写真をしまった。
その微妙な感情の変化も読み込まれたような気がしたーー
鋭い眼光で俺を見て来てこう言った。
その目は感情はなく、ただ鋭く正義に燃える何かがあるように感じられた。
「お前が殺してないにしろ。お前自身はヒーローと称えられる裏で、ないている人もいたことを忘れるな...
同郷の好でお前の境遇には同情してやるが、
お前自身が行って来たことにはきちんと責任をとってもらうーーー」
「俺とお前は似てるな。ただ、違うところがあったな...
お前には守るべきものがある。俺にはない。
お前は責任をとってる、俺は自由にだけやってたーーー
そんな気がするぜ」
ジンボウはそれを聞いて、こう呟いた。
「お前みたいなのを少し憧れたよ。
何にも縛られない人をさ...でもわかったことがある。
最後は一人なんだなってさ」
「そうだな。罪人にはちょうどいいかもしれないさ。
俺はお前が羨ましいよ。誰かに囲まれて使命感に燃えてるのもなーーー」
俺はほんのふとだったが、目の前にいる逆の人生を歩んできた男の背後にいる彼が守りたいという人々が見えてちょっとだけ羨ましかったーーー
彼は信念を持って俺を捕まえた。
いいじゃねーか。
「男らしくやらせてもらうか....」
俺はふとそう呟いたーーー