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意外

久しぶりのディガーです。

「……っていうことがあってね」

「そうだったのか」


 





 私は今、仕事終わりのアルバート様とアルター様を捕まえてお茶をしている。


 いつもアルバート様が来てくれるのでたまには私の方から行こうと思ったのが発端なんだけど、詰所で騎士さん達と話してたらアルバート様とアルター様が並んでやってきたのでお誘いさせてもらったのです。

 朝焼いたブラウニーもたくさんあるしね。


 アルター様は最初こそ遠慮されていたけど、アルバート様からも誘われれば断る理由もないらしくご一緒してくれた。


 二人きりの方がって気を遣ってくれたんだろうけど、その時間はアルバート様がたくさん作ってくれてるので…




 お二人の分のコーヒーとブラウニーを出して、自分の分は少し牛乳多めのカフェ・オ・レにする。


 そういえば、アルター様はコーヒーを飲むのが初めてなんだって。

 香りは気になってたけど悪評が多かったから手を出す気になれなかったらしい。

 苦手な人も多いのはわかっていたからコーヒーか紅茶どちらがいいか聞いてみたんだけど、アルバート様がいつも通りコーヒーを選んでいたからかアルター様もコーヒーでって言われたのよね。


 アルバート様がいくら食に興味がないとはいえ、さすがに美味しくないものを好んで口に入れないだろうし。

 それに、少し前までだったらきっと「何でもいい」って答えてただろうしね。

 そのアルバート様が自分からコーヒーを選択した事でアルター様も試してみようって気になったのかもしれない。


 私が淹れるコーヒーはブラックでも十分飲める濃さだけど、甘い物が大好きなこの国の人達には少し苦いかもしれないので牛乳と砂糖と甘いお菓子を添えて。

 アルバート様は最初はブラックで飲んで、途中から少しずつ足して味を変えながら飲むのがお好きみたい。

 アルター様はコーヒー自体が初めてだからまずはそのまま飲んでいたけど、やっぱり少し苦いのか砂糖を足していた。

 それならもっと甘いお菓子を添えればよかったかな?

 ブラウニーはそんなに甘くないもんね。

 あとでショートケーキも出そうかな。









「それは大変でしたね」

「そうなんです。私が、というよりはツァーリ様………いえ、バーダック様かな…」

「バーダック殿は気のいい方だからな」

「聖女様が気にされる程気にしていないかもしれませんよ」

「そうでしょうか………というか、お二人ともバーダック様と仲良いんですか?」



 私はついこの間のツァーリ様とのスキル検証の話をしていた。

 あの後、私の迎撃が返した魔法は私にはわからない魔法だったんだけど、何か隕石みたいなデカいのが降ってきたのは覚えてる。


 …ツァーリ様、よく避けれたよね。


 ただあの時何でツァーリ様の光の壁に被せるように闇の壁を展開するように言われたのかは理解した。

 光と闇は相互関係であり、反属性だから融合も出来るし打ち消し合うこともできる。

 あの時私も光の壁を展開していたら、衝撃を緩和しきれずにもっと大きな被害を出していたかもしれない。

 つまり、ツァーリ様は自分の最大魔法に対して私の迎撃が光と闇の融合魔法で来ることを予測していたってこと。


 それでもあの大きな穴だもんね。

 あれ、防御壁なかったらどうなってたんだろう…



 まぁ結局あの後ツァーリ様に呼ばれたバーダック様がいつもの如く地面の穴を直してくれたので元通りにはなったんだけど。



 …と、その話をしたらアルバート様もアルター様も何やら旧知のような反応をされたものだからちょっと気になってしまった訳ですよ。


 お二人はバーダック様と歳も近そうだし、所属は違ってもやっぱり面識はあるものなのかな?


「バーダック殿は魔道士団には珍しく気さくな方だろう?」

「うん」

「だからあちらに用事がある時はつい声を掛けてしまうんだ」

「逆に気がいいことが災いして、こちらに用事がある時は彼が遣われるのですよ」

「あー………」


 何かわかる気がする。

 バーダック様、頼み事とか断れなさそうだもの。


「それを繰り返している内にほとんどの騎士と仲良くなったんじゃないか?」

「そうだな」


 いい事なのかそうでもないのか何とも言えないけど、バーダック様が騎士団にいても違和感ないとは思う。


「あとは討伐部隊で一緒になる機会が多いから、それもあるかもしれないな」

「え? バーダック様って討伐も行くの?」

「知らないのか? バーダック殿は魔道士団の中でも討伐隊に属しているはずだよ」

「それも、彼はなかなかの遣い手なのですよ」

「えー!? 何だか意外です…!」


 もちろんバーダック様が相当な魔法の遣い手であることは重々承知してる。

 散々お世話になっているからね。

 あんな大きな穴が空いた地面を全くの元通りに出来るなんて、繊細な魔力操作が求められるはず。

 それを毎回平然と笑顔でやってのけちゃうんだから、凄い人なんだろうなとは思っていたけど。


 まさか討伐隊の人だったとは思わなかった。


 あの穏やかなバーダック様が戦う姿が想像出来ないというか。

 治癒とかならわかるけど、確かバーダック様は土と闇の属性だったはずだから治癒魔法は使えない…よね?

 そうなると攻撃担当…?

 やっぱり想像つかないなぁ。



 私が心底驚いている様子をアルバート様とアルター様はにこやかにコーヒーを飲みながら見ている。


 いくら想像しても、私が知ってるのはいつだって穏やかなバーダック様だけなんだから結びつかないの!


 ちょっとムッとしながらそう言うと、お二人は顔を見合せた後、真っ直ぐに私の目を見て衝撃的な事を言い放った。




「バーダック殿は普段のままだよ」

「ええ。笑顔でとんでもない魔法連発されますよ」

「え」



 …ちょっと待って。

 バーダック様のイメージがガラッと変わりそうなんだけど。


 笑顔でとんでもない魔法連発って、どこのツァーリ様よ!?

 あ、だからツァーリ様と仲良いのか!?

 いや、そもそも仲良いの!?

 っていうか、ツァーリ様も笑顔でバンバン魔法ぶっぱなしてる訳じゃないか!



 だんだん頭が混乱してきて何を考えていたのか自分でよくわからなくなってきた。


 よーし、ちょっと落ち着こう。

 カフェ・オ・レ飲んで、ブラウニー食べて。

 ついでにそろそろショートケーキ出そうかな!


 消化出来ない自分の脳に休息を呼び掛けて席を立つ。

 冷蔵庫にあるショートケーキを取り出しながら、近くにいたラミィに縋るように視線を向けると気まずそうに目を逸らされてしまった。


 マジですか。

 ラミィがそういう反応をするってことは、少なくとも耳にしたことはあるってことだよね…

 火のないところに煙は立たないって言うし。


 そもそも一緒に討伐に出てる騎士さんが二人そろって言うんだから疑いようはないんだけど、何となく信じたくなかったというか。

 バーダック様を見る目が変わっちゃいそうで怖いなぁ…


「何て言うのかな……バーダック殿は魔道士なのに前衛に出ていってしまうような方だからね」

「えぇ!?」

「本当ですよ。下手をしたら私達騎士よりも前に行ってしまわれますから」

「ば、バーダック様って…」

「ああ見えて血気盛んなのでしょうね」



 ………騎士よりも前に出る魔道士って何なんだろう。

 何かもうよくわかんなくなってきたよ。



「そういえば、ユーカも近い内に討伐に参加することになるんじゃないのか?」

「あ、うん。そのために今攻撃魔法とか防御魔法の練習してる」

「では、スキル検証も討伐に出るために?」

「そうみたいです。自分のスキルの特性を知っておけば戦いやすいからってツァーリ様が言ってました」

「確かに、どこまで無効化出来るのか、何が迎撃対象なのかは大きい所だろうな」

「そうそう。だからアルバート様にもお願いしたんだよね」

「まさか物理攻撃も迎撃対象になっているとはね」

「聖女様が物理攻撃を迎撃とはどういうことだ?」

「どうやら本人の意思関係なく水の剣が発動されるみたいだね」

「あれはビックリしたよ」

「しかしそう考えると迎撃というスキルは討伐に出るには安全なスキルですね」

「スキルなどなくても、出来ることなら私が帯同して守りたいのだけれど」

「お前は自分の仕事をしろ」

「ふふっ」



 さっきまで大分混乱してたけど、相変わらずなお二人の様子を見ていたら少し落ち着いてきた気がする。


 やっぱりこうしてゆっくりお話出来るっていいなぁ。

 今度はライオット様も来てもらえたらいいんだけど。

 アルター様とライオット様と一緒にいるアルバート様は普段見る姿とはまた違っていて新鮮なんだよね。



 私は、お二人の仲睦まじい様子に頬を緩めながらショートケーキを口に運んだ。


 あ、バーダック様のことは一旦忘れることにしました。

読んで下さってありがとうございます!

まさかのバーダック。ちょいちょい出番がある彼ですが、実は意外な人でした。討伐でまた出てくるかもしれませんね。

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