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解析

スキル検証はここまでになります。

 属性魔法無効化のスキルの影響で、自分以外からの治癒魔法すらも弾いてしまうことがわかり、慌てて自分で回復できるよう治癒魔法を練習した。


 そして今から私はツァーリ様の攻撃魔法をひたすら受けることになっている。



「まずは下級魔法から参ります」

「はい…っ!」


『ファイアランス』


 自分目掛けて勢いよく飛んでくる複数の炎の矢に、怯えながらも必死に目を閉じないように奮い立たせているけど、一瞬でも気を抜いたらすぐに逃げ出してしまいそう。


 大丈夫、大丈夫、大丈夫。

 無効化されるから私に当たらないってツァーリ様も言ってた。

 これが証明されれば、討伐の時に必要以上に怯えなくて済むんだから。


 自分に言い聞かせて、震える手をキツく握って真っ直ぐに前を見る。

 炎の矢は眼前まで迫っていて、私の身体に触れた瞬間、パキンッという何かが割れるような音と同時に矢は霧散した。

 そして、ツァーリ様に向かって光の矢が飛んでいくのが見えた。


「ツァーリ様!」

「問題ありませんよ」


 予め発動してあった光の壁が矢からツァーリ様を守ってくれたようだ。


 それにしても、迎撃なら跳ね返すのかと思っていたけど何で光の矢?

 炎の矢は私に属性がないから無理だとして、それなら水とか風じゃないの?


 よくわからなくて首を傾げると、それまで俯いて何か考え事をしていたツァーリ様がハッと顔を上げた。


「成程、迎撃(中)…! この(中)は確率のことかと思っておりましたが、もしかしたら威力の事なのかもしれません」

「威力?」

「ええ。『ファイアランス』がそのまま返ってこなかったのは、この攻撃自体は無効化で消されているからです。そしてユーカ様は火の属性をお持ちではありませんので、同威力で返ってくるのであれば水か風ですが、返ってきたのは光」


 最初の『トルネード』が跳ね返されたように見えたのは、私が風の属性を持っていたから同じように反撃したってことなんだろう。

 威力については私は目を瞑ってしまって見ていないからわからないけど、どちらも見ているツァーリ様が言うんだからそうなのかもしれない。


 でも、威力が(中)になると炎の矢に対して光の矢が返ってくるっていうのはどういう……


「…もしかして、光の矢の方が上級魔法だから……?」

「恐らくそういうことでしょう」

「でも『トルネード』は同じように返ってきたんですよね?」


 その理論なら竜巻に対しても光か闇の魔法で返ってくることになるんじゃないのかな。


「私もはっきり確認をした訳ではありませんが、返ってきた竜巻は私の『トルネード』よりも遥かに威力のあるものでした。あの竜巻は同じ『トルネード』だったのではなく、『トルネード』の上級魔法である『サイクロン』だったのかもしれません」

「『サイクロン』……?」

「そして『ファイアランス』には上級魔法は存在しません」

「あ、だから光魔法に…?」

「あくまでその可能性、というだけですけれども」


『ファイアランス』に上級魔法がないってことは『アクアランス』や『ウィンドランス』にもないから全部『プリズムランス』に変換されるってことか。


 でもこれって私の意思関係なく、攻撃に対して倍返ししてるようなものでしょ?

 何か罪悪感すごいね……

 実際に討伐に出て、魔物相手で生きるか死ぬかってなったらそんなこと気にしてる余裕もないんだろうけど。




「仮説が成り立った所で、確証を得るためにもう一度下級魔法を試してみましょう」

「はい…!」


 ツァーリ様は再び光の壁を展開し、距離をとって今度は『ウィンドランス』を発動する。

 やっぱり怖くてドキドキするけど、一度経験している分さっきよりは落ち着いていられる。


 何とか目を開けたまま見ていると、やっぱり攻撃は私に触れた瞬間に霧散して次の瞬間にはツァーリ様に向かって光の矢が放たれていた。



 やっぱり光の矢…!

 ということは、仮説が正しいってことなのかな。


「ふむ…それでは上級魔法にいってみましょうか」

「は、はい…っ!」


 来た…!

 下級魔法でも怖いのに上級魔法…!

 でも大丈夫、何かあってもツァーリ様がいるし無効化がきっと防いでくれる。


 歯を食いしばって前を見据え、小さく頷くとツァーリ様が手に幾つもの炎の塊を生み出した。


『フレアアロー』


 初めて見る魔法だけど『ファイアランス 』に似てる…?

『ファイアランス』は炎の矢が数本なのに対して『フレアアロー』は数十本の矢が降り注ぐようだ。

 全部衝撃を受ける前に消えてしまっているので威力はわからないけど、上級魔法だからきっと威力もすごいはず。

 それでも消しちゃうって、無効化すごいな…!?


「まだまだ参りますよ」

「あ、はい!」


 私が呆気にとられている間にもツァーリ様は次の魔法の準備をしていた。



『サイクロン』


『サンダーバースト』


『フレアトルネード』


 上級魔法をこれだけ連続で撃てる人はそういないだろうなぁ。

 どれも無効化されて私にダメージがないので、だんだん落ち着いて見られるようになってきたよ。


 というか、シレッと火と風の融合魔法使ってきたね…?

 恐らくこれも属性魔法だから試そうとしたんだろうけど、火の竜巻なんてそんな危ないもの平然と発動させないでほしい。



「やはり全て無効化されるようですね」

「そうみたいですね」

「ではこれで最後です」


 まだやるんだ。

 これだけやって何の衝撃もないのだから大丈夫だろうけど、最後ってことは多分一番強い魔法が来るってことよね…?

 今更下級魔法なんて意味無いし。


「私が使える最大の属性魔法です」

「最大…」


 ツァーリ様が使える最大の魔法ってことは、ほぼこの国一番の魔法って言っても過言じゃない。

 ツァーリ様は魔道士団の副団長で、実力的には団長であるミライズ様にも並ぶと言われているって聞いたことがある。

 団長にならなかったのは研究に没頭したいからだとか…

 らしいと言えばらしいけど。


「ですが、この魔法を威力を増大して返されてしまいますと恐らく私の光の壁では耐えられません」

「え!? じゃ、じゃあどうすれば…!?」

「ですので、私が展開する上からユーカ様にも闇の壁を展開していただきたいのです」

「闇の壁ですか?」

「ええ。お願い致します」


 ツァーリ様の光の壁が耐えられないって相当だよなぁ…

 しかもさっきMP回復薬飲んでたのにまた飲んでる。

 ってことは、今から使う魔法はツァーリ様のMP最大値にほぼ近い量を消費するってことだよね。

 どんな魔法なんだろう…



 私は言われた通りにツァーリ様の光の壁に被せる形で闇の壁を展開する。


 それを確認したツァーリ様が手のひらに大きな光の塊を生み出し、そこに火と風の塊を融合させていく。



 待って、三属性同時発動とかできるものなの!?

 っていうか、融合って二属性までじゃないの!?


 初めて見るものに私は恐怖よりも興味が勝って、食い入るようにツァーリ様の手のひらで混ざっていく塊を凝視していた。


 やがてその塊はツァーリ様の手を離れ、高く高く浮かび上がる。

 そして、



『スターダスト』



 ツァーリ様が唱えたと同時に光の塊は一瞬で弾け飛び、まるで流れ星のように無数の光がものすごい勢いで全て私に降り注がれた。










 結論から言うと、属性魔法である以上どれだけ融合しても、強力な魔法であっても、私の無効化スキルで全部消してしまえるようだということはわかった。


 体感で十分は軽く浴びせられ続けたように思えた『スターダスト』も、私に一つの傷をつけることもなく。

 逆に迎撃による私の光と闇の融合魔法がツァーリ様に返って、展開してあった光の壁と闇の壁を破壊し、地面に大きな穴を開けてしまっていた。

 ツァーリ様は何とか避けてくれたから無事だったのでホッと肩を撫で下ろす。

 穴はまたバーダック様にお願いしよう。

 毎回ごめんなさい、バーダック様。



 そもそも何故自分がまだ使えないような魔法が迎撃で勝手に発動されるのか謎すぎるんだけど。

 私のスキル、一体何なの?

 無効化も迎撃も対魔物にはすごく有効だけど、特に迎撃は味方に被害がいかないかものすごく不安だし。

 しかも無意識に発動してるのか、常時発動なのかわからないけど、自分の意思で操作できないのがまた厄介だったりする。


 うーん……これは私が強くなったらちゃんと自分の意思で使えるようになるものなんだろうか。


 自分のことながら、何だか頭が痛くなった。

読んで下さってありがとうございます!

ツァーリは実はこの国ではすごい人だったりします。本人は研究が第一なのでどうでも良さそうですが。

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