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豹変

悪い意味の豹変ではありませんのでご安心を…

 アルバート様に告白されて早一週間。



「ユーカ殿、奇遇だね」

「アルバート様…」



 行く先々でアルバート様に遭遇します。



 何故!?


 ある時は食堂、ある時は騎士団詰所、ある時は王宮内、ある時は市街、ある時は近衛騎士団の詰所付近、ある時は魔道士団の詰所付近、ある時はマイキッチン。


 マイキッチンは私に用事があったからだし、騎士団詰所もわかる。

 市街も前にバッタリ会ったことがあるから無くはないけど、他の場所は何でいたのかよくわからない。

 特に食堂と近衛騎士団の詰所。

 食堂は騎士団の詰所にあるからそっちを利用していたはずだし、騎士団のアルバート様が近衛騎士団の詰所に来る必要があるのだろうか。


 これだけ偶然が続くと私の行動がどこかから流れでいるのかとも思ったけど、私の行動なんて侍女さん達しか知らないし、中には思いつきで行った場所もあるからラミィ達に聞いて来た可能性は低いんだよね。


 じゃあ何でこんなに毎日顔を合わせるんだろう?

 もちろん剣の練習は今も継続して見てもらってるから定期的に顔を合わせている。

 でも今までもこんなに毎日会うようなことはなかった。


 会いたくない訳じゃないし、もちろん顔を見れるのは嬉しいんだけど、会うとどうしても早く返事しないとって焦っちゃうんだよね。

 まだ答えを出せていないのに。



「最近よく会うね…?」

「そうだね。近頃はユーカ殿に会えるかもしれないと思った場所に足を運ぶと本当に会えることが多くて私も驚いているよ」

「え、勘なの!?」


 アルバート様、すごくない!?

 勘ってこんなに毎回当たるものかな!?



 私が本気で驚いているのを何だか楽しそうに見てくるアルバート様。

 何がそんなに楽しいのか聞いてみたら、私に会えて嬉しいのだと満面の笑みで返されてしまいました。


 アルバート様、あの日からめちゃくちゃ直球すぎて私の心臓がもたないんだけど…!


 ほら、控えてるラミィも顔赤くしてるじゃない!



「あ、アルバート様、お願いだからそーゆーのは小出しにして…」

「そういうの? どれの事かな?」

「その、会えて嬉しいとか、」

「事実を口にしたまでだろう?」

「こっちが恥ずかしいの!」

「ふふ、ユーカ殿の反応は一々可愛いな」

「だ、だから…っ」

「そんな所も好きだよ」

「~~~~っ!」


 ほんっっっっとうに心臓爆発しそう…


 私の要望は聞いてもらえないことがわかったので助けを求めてラミィの方を見ると、彼女は真っ赤になって両手で顔を押さえていた。



 …あんなラミィ、初めて見た。

 いつも冷静で穏やかで、取り乱してる所なんて滅多に見せないのに。


 あぁ、でもラミィも恋バナ好きだったね。

 今までもたまに聞かれてたし、あの告白の後は案の定噂が広まって侍女さん達の耳にも届いて、珍しく興奮しながら根掘り葉掘り聞かれたもんなぁ。

 おかげでラミィとファーラをは私の良き相談相手となってくれています。

 心の平穏を保つために本当に助かってる。

 いつもありがとう。



 …って、そうじゃなくて。

 ラミィが興奮してる様子を見て自分が少し冷静になれたかと思ったけど、単に現実逃避してしまっただけだった。



 アルバート様は私の百面相をどんな目で見てたんだろう…

 きっと面白いって思われたんだろうな…

 当人はいっぱいいっぱいなんですけどね!



 なんて脳内で大混乱していると、アルバート様がさて、と急に表情を引き締めた。



「私はそろそろ行かないと」

「あ、お仕事?」

「ああ。今日は夜番だから」

「夜番大変なのに仕事前に出歩かなくても…」

「ユーカ殿に会えるかなと思ったら足が勝手にここに向かってたんだ。でも仕事の前に顔が見れて良かったよ」

「あ、そ、そう…です、か」


 そんな甘いセリフを言いながら頬をそっと撫でられて微笑まれるとか、免疫のない私には刺激が強すぎる…!


 しかも騎士の顔に戻ってるのにそんなことされると、同じ人のはずなのにまた違って見えて更にドキドキしてしまう。


 


 …あれ、待って?

 アルバート様も誰かと付き合った経験はないんだよね?

 何でそんなに余裕なの!?


 私だけが慌てているように見えて何となく納得がいかないけど、相手がアルバート様だからと思うと仕方ないと納得してしまうのは何故なのか。


 …アルバート様だからか。

 うん、知ってた。




 それじゃ、と手を上げて去っていくアルバート様を見送り、私達は部屋に戻ろうとラミィに声を掛ける。

 するとラミィは慌てて取り繕ったかのように姿勢を正し、いつものように側についた。


「ラミィがそこまで動揺するのは珍しいね」

「大変失礼致しました。お見苦しい真似を…」

「ううん、そんなことないよ」


 むしろラミィがそんな反応をするほどの事態だったってことよね。

 慌てまくっていた私がおかしい訳じゃないよね?



「クライス様のお噂は耳にしておりましたが、まさかあれ程お変わりになられているとは…」

「ラミィもそう思う!?」

「えぇ…以前よりお優しい方ではいらっしゃいましたが、あのようなお姿は初めて拝見致しました」

「だよね…」



 この前、ファーラが一緒にいてくれてた時も同じようなことがあったんだけど、やっぱり同じ反応をしていたもの。


 他の侍女さんが付いてくれてる時も皆驚いてたから、それだけアルバート様の変化は大きいってことなんだろう。



 最初は私がアルバート様の気持ちを疑っていたからこうして言葉や態度で示してくれてるのかなって思ってた。

 だから、それならちゃんと信じてるからそんなことしなくていいよって本人にも言った。


 だって、ただでさえアルバート様関連の噂は広まりやすいっていうのに、あの人は全然人目を気にせずにさっきみたいなことを平気でやるんだもん。

 また人に囲まれて質問攻めされるよって言ってるんだけど、いつも気にしなくていいって流されるんだよね。

 ちょっと前までのアルバート様だったら、それは面倒だから…ってなってたはずなのに。


 侍女さん達の情報によると、あの騎士団での出来事が噂で広まったせいか、それ以降のアルバート様の私に対する言動のせいか、度々アルバート様が貴族のご令嬢方に捕まっている場面を見掛けるらしいし。


 どうしちゃったんだろう…



「それにしても、クライス様は本当にユーカ様にご執心なのですね」

「正直信じられないけどね…」

「ユーカ様はもっとご自分に自信を持たれると良いと思いますわ」

「って言われてもねぇ…特に取り柄がある訳でもないし、可愛い訳でもないし」

「まぁ! 今のお言葉をクライス様が耳にされたら何と仰るでしょうね」

「う……」



 ラミィ…それを引き合いに出すのは狡いよ。


 実際私は自分に自信があるタイプじゃないから、彼氏を作ろうと思ったら甘い物が好きな人にしてお菓子で胃袋を掴むしかないと思ってきたし。


 アルバート様もお菓子で胃袋は掴めてる気はするけど。



「クライス様のお気持ちを信じていらっしゃるのでしたら尚更、ご自分を卑下されることはクライス様のお気持ちも軽んじてしまうことになりかねませんから」

「そっか…それもそうよね」

「えぇ。ユーカ様は大変魅力的な方でいらっしゃいますわ」

「そんな風に言われると照れるね。でもありがとう」


 差し出がましい真似をして申し訳ございませんと前置きした上でラミィに言われた言葉は、私に随分重くのしかかった。


 でも、ラミィは心配して言ってくれているのがわかるし、その通りだとも思う。


 出会ったばかりの頃は「侍女が意見するなどとんでもないことでございます」って言って今みたいに叱ってくれることもなかったのにね。

 今ではお姉さんみたいなものだから、ラミィにそうやって言われるのが嬉しかったりするんだよ。





 日本にいた頃は自分に自信が持てなかったけど、今からでも変われるだろうか。



 そう考えた時、ふとアルバート様の変化を思い出した。


 あの変化はアルバート様自身が変わったわけではないけれど、きっと何か思う所があってのことだと思う。




 …今度、聞いてみようかな。




 私は私を変える切っ掛けを探し、真正面から向き合えるようになりたいと強く思うようになっていた。

読んで下さってありがとうございます!

どこかの後書きでも書いた気がしますが、アルバートがこれまで何にも興味が持てなかった反動で興味を持った対象に執着するタイプというのは最初から決まっていたことでした。

それに対する佑花の反応までは決めていませんでしたが、このタイプの子は相当困惑するんでしょうね。

そのまま溺愛されればいいと思います。←個人的趣味

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