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告白の話はさておいて、ケーキの箱の相談をしています。

 あの後、騎士さん達の騒ぎは団長さんの所まで届いたようで団長さんが大広間まで来て怒ると、皆それぞれ訓練や巡回に戻っていった。


 アルター様は止めようとしていただけなのでもちろん怒られるようなことはなく、アルバート様には呆れたように溜め息をついただけだった。

 まぁアルバート様も騒ぎの一端とはいえ、周りが勝手に騒いだのであってアルバート様本人が何かしたわけじゃないからね。



 そんな訳で、人の居なくなった大広間で私はアルター様とのお話の続きをしている訳なんだけど、



「…あの、アルバート様お仕事は…?」

「ああ、今日はもう終わりだよ。帰りは送っていこうか」

「いえ、ラミィが一緒に来てくれてるから…」



 何故かアルバート様は普通に隣にいます。


 えぇと…?

 アルター様とのお話に同席するってことなんだろうけど、隣が気になってやっぱり話が頭に入ってこないよ!?


 隣に座るなんて今まで何度もあったのになぁ…

 ここに来てから培ったイケメン耐性はどこに消えちゃったんだろう。



 とりあえず、この状態でアルバート様に送ってもらうのは私の心臓がヤバそうなので何とか回避したいところなんだけど、送りはラミィがいるから大丈夫と言ったのに何やらアルバート様がものすごくにこにこしてるから無理そうな気もしてる。


 こういう時のアルバート様の笑顔はちょっと曲者だって、これまでの短い付き合いでも察してるからね。


「聖女様、侍女殿には私から伝えておきますので、本日はアルバートに送らせてください」

「えっ!?」


 私の口じゃアルバート様に勝てないことはわかってるからそうなるかもしれないとは思ってたけど、まさかアルター様から言われるとは思っていなかった。


「今のままでは今後の関係に支障が出てしまわれるでしょう。アルバートも今日の件は強引すぎだ。一度しっかり話した方がいい」

「ああ、そうだな」



 頷くアルバート様に対して、私は何も言えなかった。


 そうだよね、このまま別れれば次会う時ギクシャクするのは目に見えてる。

 それに、アルバート様のお気持ちも時間が経てば経つほど聞きにくくなるだろう。

 もしここで私を助けるための冗談だったと言われたら切り替えればいいし、本気だと言ってくれるのなら、私も真剣に考えればいい。


 アルター様の言う通り、恥ずかしいから、聞くのが怖いからって先延ばしにするべきではないよね。



「…わかりました」

「ありがとうございます。では話を戻しましょうか」

「ユーカ殿が考えている紙の強度はどの程度のものなのか教えて欲しいそうだよ。大きさは幾つか欲しいと言っていたね?」


 アルター様がにこりと笑みを浮かべてその話は終わりとばかりに切り出すと、アルバート様が話を引き継いでくれる。

 いつも通りの空気を意識してくれていることがわかって、私も今はアルター様の話に集中しないといけないと気持ちを切り替えた。


「そうなんです。ケーキが二つ三つくらい入る大きさの物と、五つくらい入る物と、丸々ホールで入るくらいの物が欲しくて」

「となると、寸法はどの程度になりますか?」

「えぇと……そうだ、お二人にお渡ししようとと思って作ってきたんですが、これを一つとして考えてもらえたらと…」


 もう渡すタイミングもわからないから今あげちゃえばいいかとお二人にそれぞれ包んだガトーショコラを差し出す。

 お二人とも喜んで受け取ってくれたし、ついでにサイズも伝えやすいから作ってきて正解だった。


「なるほど。そうすると小さい物はこの程度かな?」

「それだと小さくないか?」

「あまり余裕がありすぎても崩れてしまうだろう」

「ああ、それもそうか」


 どこから取り出したのか、アルバート様とアルター様は紙で実寸サイズを確認している。

 私としてはアルバート様の提案するサイズで問題ないため口を挟むこともない。

 アルバート様は私の意図をしっかり理解してくれてるから話が早いんだよね。

 そういう所、本当に助かってる。


「五つのほうは単純に倍にして横を長くするべきか、少し縦に膨らませるべきか」

「持ち歩くことを思うと横に長いよりも縦を膨らませた方が安定しそうだな」

「それはあるな。聖女様はどうですか?」

「それで良いと思います」

「畏まりました」

「けーきを丸ごと入れる箱はあまり余裕が無さすぎると取り出すのに苦労しそうだな」

「そうすると真四角で全体的に少し余裕を持たせる方がいいか」


 助かってるどころか、私の言いたいこと全部言ってくれてるんだけど!

 アルバート様、すごくない!?

 私そこまで細かく話してないよね?

 話したとしてもサラッとしか言ってないはずなのに…


 本当に口を挟む隙がない。




「では、それぞれこちらの大きさで箱と蓋という形でよろしいでしょうか?」

「はい、お願いします」

「他に何かございますか?」

「あの…もし出来ればなんですけど、小さな紙袋と、ホールケーキを乗せる紙皿は作れないでしょうか?」

「紙袋と…皿、ですか?」

「はい」

「紙袋は問題ありません。皿と言いますと…」

「丸くて平たくて、うーん…この紙十枚分くらいの強さが欲しいんですが」

「畏まりました。そちらはまた検討させていただきます」

「そうすると、皿は箱よりも一回り小さくしないといけないな」

「そうだな、出し入れができるように調整が必要だ」


 ちょうどホールケーキの出し入れの話で思い出したからついでとばかりにお願いしてみたけど、思いの外あっさり通じて話はすぐにまとまった。

 ケーキの箱の強度も紙皿より強いくらいでとお願いしたし、あとは出来るかどうかアルター領で試してみてまたお返事を下さるらしい。


 ケーキのフィルム問題が残ってるけど、これで大方…………


 あれ、何か忘れてるような…?



「あっ!」

「ど、どうされました?」

「何かあったのか?」


 ケーキの出し入れの話で、そういえばカットケーキの下に敷くアルミ紙が無いことを思い出してつい大きな声を出してしまった。


 お二人とも驚かせてすみません…!


 そうだよ、ケーキを箱に直置きしたらクリーム系のものなんてぐちゃぐちゃになっちゃう。

 フィルムはケーキ同士の間隔を上手く空けてバランスを取れば何とかなるかもしれないけど、アルミはないと困る。

 だって取り出せなくなっちゃうし、そもそも入れるのがすごく大変。


「すみません…ちょっと忘れていた物を思い出して…」

「忘れていた? けーきを販売するのに必要な物?」

「うん、この国ってアルミはある?」

「アルミか…ある事はあるがあまり知られていないかな」

「アルミをどのようにお使いになられるのですか?」

「ケーキの下に敷きたいんです」


 ジェスチャーでこういう感じと伝えてみるが上手く伝わらないので、一度お渡ししたケーキと紙を借りて説明することにした。


 それで箱への出し入れがスムーズになることを話すとお二人は理解してくれたのでそっとケーキをお返しする。


「確かに紙があると楽に取り出せますね」

「これはアルミでないといけないのか?」

「ううん…………あ、紙でもいいんだ」

「皿や箱と違い、一枚の紙なら良いかもしれませんね」

「ただ、直接ケーキを乗せるから清潔にしないといけないよね」


 お弁当のおかずカップみたいにプラスチック加工があればいいんだけど、この国にそんなモノないよねぇ…

 これはもう少し考えないといけないかな…

 色んな人に似たようなものがないか聞いてみよう。


 これに関してはアルター様の方でも領地の方で相談して考えてくれるそうなので、私は私で出来ることをやろうと思う。

 お願いしたからはい終わり、って訳にはいかないしね。


 それに、ショーケースとテイク用の箱が用意できたら今度はイン用のテーブルセットや食器に、コーヒーや紅茶も用意しないといけないし、他にも………



 ダメだ、戻ってリストを作らないと絶対何か抜ける。

 お店を作るってこんなに大変なことなんだなぁ…

 私は一から作る訳じゃないのにすでに手一杯。

 世のお店を立ち上げてるパティシエさん達を心から尊敬するわ。



 それでも私は私なりに一つずつ準備をしていこうと改めて思い直し、アルター様とアルバート様にお礼を言って頭を下げる。

 二人は力になれたら嬉しいと笑って言ってくれて、本当に優しい人達に助けられているなと実感した。





「それでは私はこれで失礼させていただきます」

「あ、はい。わざわざお時間いただいてありがとうございました!」

「構いませんよ。また自領から返事がありましたらお声掛け致しますね」

「よろしくお願いします」

「それじゃ、アルバートはまた後で」

「ああ」


 それから私に騎士の礼をとり、アルバート様に軽く手を振ってアルター様は大広間を出ていってしまい、いつも賑やかなこの広間に私とアルバート様の二人だけになる。


 そして広がる静寂。




 ど、どうしたらいいの…!?

読んで下さってありがとうございます!

アルバートは佑花の話だからちゃんと聞いていたので意図を理解しているのですが、それが佑花に正しく伝わるかどうかですね。


今は毎日更新させていただいていますが、どこまで続けられるのかわからないので急に更新が無くなることもあると思います。どうぞご了承くださいませ。

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