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制御

恒例のツァーリ様と魔法練習です。

 翌朝お迎えに来てくれたツァーリ様は、何時ぞやの如く私の部屋でお茶を飲んでいた。


 ま、また…!?



「おはようございます、ユーカ様。朝食をご一緒致しましょう」

「…おはようございます。お早いですね…?」

「この数日貴女の様子が見られませんでしたから。時間は無駄に出来ないでしょう?」



 …うん、何も考えずに聞いたら恋人か! って発言だけど、ツァーリ様だからね。

 大方私が光の剣と闇の剣を安定して出せるようになったなんた言ったものだから、早く確認したかったんだろうなぁ。


 歳上だし、普段は落ち着いていて「冷静沈着」って言葉が似合うような人だけど、魔法が絡んだ時のツァーリ様はわかりやすい。

 言い方が悪いけど、気になったものにのめり込む子どもみたいで。



 だからといって起き抜けに平然と押しかけるのは止めていただきたいですが…

 ラミィもファーラも、当たり前にツァーリ様を部屋に通してお茶出して二人分の朝食運んでくるのやめて。

 せめて一声掛けてくれたらいいのに。


 これも実はツァーリ様の優しさだったってラミィから教えられるのは少し先の話なんだけどね。

 私が寝ているかもしれないから、起きてくるまでは無理に起こさなくていいって気遣ってくれていたらしい。


 この国、時間の概念があやふやだから明確に約束するっていうのが難しいんだよね。

 明るくなったら動き始めて、暗くなったら寝るって所は日本と変わらないんだけど、その中に何時ってものがない。

 目安として朝昼夜で鐘はなるけど、それ以外は合図になるものも無ければ時計も無い。


 だからツァーリ様との昨日の約束である「朝」も朝の鐘が鳴ってからというだけであっていつのことなのかわからないからね。

 最初は感覚がわからなくて戸惑ったけど、だんだん慣れてきたのか約束がある時はいつでも動けるようにしてる。


 とはいえ、時計に親しんできた身としてはつい時間を気にしてしまう習慣は消えないけどね。





 …と、まぁそれはおいといて。


 来ちゃったものは仕方ないのでツァーリ様の向かいに腰を下ろして、そっと差し出された紅茶に口をつける。



 いつかのようにツァーリ様との朝食を済ませ、連れ立って魔道士団の詰所に行くと演習場にはたくさんの魔道士さんが集まっていた。


 演習場にいるのは討伐に出る魔道士さんがほとんどだと聞いたことがあるけれど、結構人数いるものなんだね。




「副団長!」


 演習場の入口で止まったツァーリ様に気付いた魔道士さん達が即座に手を止めて整列する。

 すごいね、騎士団みたい。

 やっぱり統率って大事なんだなぁ。


「皆さんは気にせす続けて下さい。一つ的をお借りしますよ」

「「「はい!」」」


 ツァーリ様が片手を上げてその場を離れると、皆さんもそれぞれ戻って練習を再開していた。

 私はツァーリ様に着いて隅の的の前へ。


「まずは水属性の剣から見せて頂いても?」

「え、水のですか?」

「ええ」


 てっきり光と闇の剣って言われると思ってたから、水の剣と言われて少し戸惑う。

 でも水の剣は一番慣れてるから問題ないし、あれから練習を重ねて最初から剣の形に創り出すのもほぼ毎回成功するくらいになった。


『アクアソード』


 手のひらに魔力を集中させて剣の形にして凝縮させる。

 しっかり剣を握って目を開ければ、そこには目を丸くしたツァーリ様の姿が。


 あ、そっか。

 そういえばツァーリ様にはまだ見せてなかったっけ。


「初めから剣の形にすることが出来たのですか?」

「あ、はい、ちょっと練習しまして…。さすがに水の剣だけですけど」

「十分ですよ、本当に貴女は…………光の剣と闇の剣も見せて頂けますか?」

「はい」


 何か言いたげな顔をしているけどいいのかな…?

 とりあえず光の剣を創るために水の剣を消して集中し直す。

 光は水の倍の魔力が要るから『ライト』は出せても最初から剣にはまだ出来ないんだよね。

 ようやく水の剣が安定したからそろそろ練習してみてもいいかもしれない。


『ライト』


 手のひらの上に浮かぶ光の塊を伸ばして、あとは水の剣と同じように。

 使う魔力量が違うだけでやることは同じだからすんなり創れるようになってきた。


「ほぅ……では次は闇の剣をお願いします」

「ツァーリ様、これって魔力コントロールを見るためなんですよね?」

「そうですね」


 相当集中しないと出来ないし、やったらやったでツァーリ様に詰め寄られるのはわかってる。

 でも、私の現時点の力を見るなら出来ることを隠しておくのは違うよね。


『ダーク』


 私は消すつもりだった光の剣をそのままに、左手に闇の塊を浮かばせた。

 そしてその形を変えていく。


「両手に属性の違う剣………!?」

「ちょっと興味本位で出来るかなってやったら出来まして…」

「貴女は驚く程おかしな方ですね……」


 あれ、頭に手を当てて呆れられてしまった。

 これを最初に見せた時のアルバート様の反応から予想は出来てたけど、そんなに変なことだったのかな?


 まぁ剣の扱いすらまだまだなのに二刀流なんて出来るわけがないから、これ使えるようになった所で意味は無いんだけどね。

 振り回すしか出来ないよ。


「色々と言いたい事はありますが、魔力コントロールが上達していることはわかりました」


 色々って何だろう…

 気になるけど、ここで口を挟んだらダメな気がして大人しく次の言葉を待つ。


 すると、



『ファイアランス』



 ツァーリ様は十メートルくらい離れた的に向かって火の……矢? みたいな物を放ち、的中させた。

 すごい…!

 しかも本当に矢のように早くて、それはあっという間に的を焼いてしまった。


「今見せたのと同じことを水属性魔法でできるようにしていただきます」

「あれ、どうやって飛ばすんですか?」


 私は浮かせることは出来るけど、それを自在に動かすことは出来ない。

 ボール投げみたいになら出来るかもしれないけど、全然的まで飛ぶ気がしないよ?


 そう思って聞いてみるものの、ツァーリ様はやっぱり「イメージですよ」としか言わなかった。

 そうだった、この人の実技はとにかく想像力で何とかしろっていう割と無茶苦茶なやつだったっけ。


 とにかくまずは矢をイメージして、弓道みたいにまっすぐ飛ばす感じ?

 いや、ツァーリ様は手のひらをまっすぐ的に向けてそこから矢を生み出してたはず。

 それなら弓道よりも射的の方がイメージ近そう?

 自分の手を銃と思って、スパン! って。


 うん、さっきよりイメージ固まったからちょっとやってみよう。


 ツァーリ様に試していいか聞いたら近くから始めてもいいと言ってくれたので、ツァーリ様が放った半分くらいの所から始めることにする。

 これでダメならもっと近づけばいいよね。





『アクアランス』



 ツァーリ様のように手のひらから矢を生み出し、射的のように的を狙って弾を飛ばすようにと放った矢は一瞬で見えなくなった。


 あれ?



「えーと…?」

「今のは…何ですか…?」

「私もよく……」

「貴女の手から水の矢が創り出されたのは見えたのですが……」

「成功…したんですかね…?」


 二人で首を傾げるが、結局よくわからない。

 矢はどこいったの?


「的を見てみたらわかるんじゃないです?」

「あ、バーダック様!」

「ふむ、それもそうですね」


 いつからそこに居たのか、スウェード・フォン・バーダック様が的を指差して提案してくれていた。

 そっか、水の矢だから当たってれば的が濡れているはずだよね!



 というか、バーダック様にはミライズ様の所まで案内してもらったお礼を言おうと思ってたからちょうどお会いできてよかった。

 先日はありがとうございましたと頭を下げると、バーダック様は人当たりの良い柔和な笑顔で「お易い御用ですよ」と笑ってくれる。

 いつ会っても優しい人だなぁ。




 あ、因みに的は端の方が濡れていた。


 ということは、一応的に向かって飛ばせてはいたってこと…?

 誰も見えてなかったから判断しきれないということで、その後も私はしばらく水の矢をひたすら放ちまくっていた。

読んで下さってありがとうございます!

ツァーリが出てくるとアルバートの出番がなくなりますね。

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