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魔法

魔法の練習って楽しそうですよね。

 お菓子にばかり気を取られて魔法のことなんて忘れてると思われているかもしれないけど、そんなこともない。



 あの日、宰相様に直談判した結果、仕込みの時間帯であれば厨房の一角を使用する許可をもぎ取ることができた。

 しかも材料も厨房にあるものを使って良いと気前の良いお言葉をいただいたので、作ったら宰相様にもお裾分けしようと思います。



 そんなわけで、午前中にマナーやこの国のことと併せて魔法についても学んでいて、午後は厨房が使える時間以外は魔法の練習をしていたりする。

 最初はさっぱりわからなかったんだけど、ちょっとずつ魔力の流れがわかるようになって面白くなってきたところです。


『ライト』


 手のひらに魔力を集めるイメージで呟く。

 するとほんのりと温かさを感じる手のひらに、電球くらいの大きさの光の塊が現れた。


「やった! 成功!」

「おめでとうございます」


 魔法を教えてくれている先生、ユークレスト・フォン・ツァーリ様が褒めてくれる。


 ツァーリ様は魔道士団で副団長を務めている方らしい。

 私が謁見した時にもあのローブの人達の中にいたのだとか。

 肩ほどの翠の髪を後ろでまとめているツァーリ様は目立ちそうなものだけど、この国には色んな髪色の人がいすぎて全然気づかなかった。

 それにあの時は周りを見る余裕もなかったしね。


「では次はもう少し大きな光の塊を作るイメージで」

「はい」


 さっきのは電球くらいだったから、今度はボールくらいの大きさを意識してみる。

 魔法は明確にイメージすることが大事だとツァーリ様は言っていたので、まずは頭の中でイメージ。

 それから体内を巡る魔力をゆっくり手のひらに集中させていく。

 そして、集まったなと思ったら言葉を切っ掛けに具現化させる。


『ライト』


 ボワっ


 そんな音が聞こえた気がして手のひらを見ると、手のひらサイズのボールをイメージしたはずが魔力を集めすぎたのかサッカーボール大の光の塊が乗っていた。


「…一気に大きくなりましたね」

「自分でイメージしてたよりも大きくてビックリしました」

「イメージよりも……一度ステータスを見せていただいてもよろしいですか?」

「はい。『ステータス オープン』」


 あれから練習し、謁見の場では鑑定鏡がないと見られなかったステータスも自分で見られるようになった。

 このステータス、自分だけが見たい時は『ステータス』、他者に表示したい時は『ステータス オープン』と言いながら魔力を流すと使い分けることができるらしい。




 島崎佑花 Lv 39


 属性 : 光 闇


 HP 1850/1850

 MP 7100/7500


 スキル : 属性魔法無効化 状態異常無効化 迎撃(中) 魔法付与

 状態 : 健康




 あ、レベル上がってる。

 意外と簡単に上がるもんなんだなぁ、なんて思いながらもツァーリ様を見ると、とても怪訝そうな顔をしていた。


 何か変な所があったのかな?


「ツァーリ様?」

「……貴女は本当に規格外ですね」

「何がですか?」

「レベルの上がり方といい、MP量といい、おかしいです」


 おかしいと言われてしまった。

 自分ではこんなものだろうと思っていたのだけれど、どうやら違うらしい。


 ツァーリ様の呆れた顔に苦笑しながらステータスをしまう。


「ところで、光属性魔法で魔物を倒すことはできるんですか?」

「できますよ」

「闇属性魔法も?」

「ええ、もちろん。但しどちらも上級魔法ですが」


 私の属性は光と闇の二つ。


 どちらかの属性を持つ魔道士はいても光と闇の両方を持つ魔道士はいないんだとか。

 しかも、下級から攻撃魔法を使える火、水、風、土属性と違い、光、闇属性は下級ではさっきのライトくらいのことしかできなくて上級でようやく攻撃魔法を使えるようになるそうだ。

 但し、威力は他属性の上級魔法と比較にならないという。


 今の私にはこのライトが限界なので、魔物退治について行くとしても上級魔法が使えるようになってからだね。


「では今度は手のひらにあるライトを浮かせてみてください」

「浮かせる…!?」

「イメージですよ」


 にっこり笑うツァーリ様。


 この人は講義こそきっちり教えてくれるが、いざ実践となると途端に説明が減る。

 魔力はイメージだから自分の身体で覚えるしかないっていうのはわかるけど、それにしたってもうちょっとヒントがあってもいいんじゃないだろうか。


『ライト』


 抗議してもニコニコして「実践あるのみです」と言われるだけなのはここ数日だけで嫌という程わかっているので、私は諦めてイメージに集中する。


 まずは手のひら魔力を集めて光の塊を生み出す。

 そこから…浮かせる…?

 手のひらから少しずつ切り離していくイメージでいいのかな?


 手のひらに集中していた魔力の流れを、光の塊の方に移動させて手のひらから離そうとするが、なかなか上手くいかない。

 何度やっても切り離しに失敗してブツっと魔力の流れが切れてしまい、生み出したライト自体が消えてしまう。


 このイメージが間違っているのか、魔力の切り方に問題があるのか…

 でも光の塊を浮かせるって、何となく似たようなものを知ってる気がするんだよね。


 失敗している私を見ても何の口出しもしないで見守っているツァーリ様をチラッと見て、何となしに空を見上げた。


 今日は快晴。

 雲ひとつない真っ青な空。


 そこに光の塊を浮かせるイメージをしてみるが、光=暗闇に浮かぶイメージが消えなくてしっくり来ない。

 だって青空だったらシャボン玉とかの方が想像しやすいし。



 と、そこまで考えて光の塊に固執しすぎていたことに気がついた。


 そうだよ、シャボン玉のイメージでもいいんじゃない!?


『ライト』


 気持ちを切り替えてもう一度手のひらに魔力を集中。


 切り離すんじゃなくて、シャボン玉みたいにそっと空に浮かべてあげるつもりでやってみると、さっきみたいに消えることなく光の塊はふよふよと浮かんでいた。


「できた!!」

「お見事です。では次は闇属性魔法で同じことをしてみましょう」

「え、闇ですか?」

「ええ。光属性魔法がそれだけコントロールできれば大丈夫でしょう」


 実は闇属性魔法を使うのは今日が初めてだったりする。


 ツァーリ様によると、闇属性魔法は術者の精神状態が強く影響するため、コントロールに慣れない内から使うと精神を引き摺られてしまうことが少なくないそうだ。

 つまり、ネガティブ思考になりがちってことだよね。


 その状態で魔法を使うと上手く制御できず、魔力暴走を起こしてしまうことすらあるという。

 私の場合は対になる光属性魔法があるからそこまでのことにはならないだろうと早い段階から闇属性魔法の練習を始めるが、闇の適正魔道士でさえ本来半年は魔力コントロールの練習をしてから手を出すもので、それだけ扱いが難しいものらしい。


「ライトと同じように手のひらに魔力を集めて『ダーク』と唱えてください」

『ダーク』

「気分は如何ですか?」


 ライトを使う時のように意識して魔力を手のひらに集めて呟くと、それは黒紫の塊となって現れた。


 ツァーリ様が心配してくれているけど、特に体調にも精神面にも変化はなさそうなので変わりないですと返すとホッとしたように小さく息を吐いている。

 それだけこれまで体調を崩す人が多かったってことなんだろうなぁ。


「それでは次は光の塊を分裂させてください」

「分裂!?」

「複数の光の塊を作るイメージですよ」


 心配をしてくれたかと思えばすぐに無茶を吹っかけてくるあたり、この人いい性格してるよね。

 優しい人だということはわかってるんだけど。





 そして、複数と言われてうっかり蛍を想像してしまった私の周りには小さな光の塊が大量にふよふよと舞ってしまい、ツァーリ様が真顔で迫ってくるまで、あと三分。

読んで下さってありがとうございます!

今回は魔法の話だけでした。お菓子作りたいのにね。

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