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料理

タイトルの通りです。唐揚げ食べたい~

「美味い…!」




 あまり得意とは言えない料理だったけど、どうやら上手くいったらしい。



 あれから唐揚げの下味をつけている間に他の肉の下処理をして小分けにして冷凍し、鶏の残った骨の部分って鶏ガラにならなかったっけ?って思って茹でてみている。


 アルバート様は私が作るもの=甘いものと思っていたのか、唐揚げを揚げ始めた時の香ばしい匂いに驚いていた。


 そういえばこの国に来てこんな香ばしい匂いかいだことなかったっけ。

 私としては懐かしい匂いなんだけど、アルバート様からしたら知らない匂いだから味の想像がつかなくて困惑していたみたい。


 熱々の揚げたての唐揚げを網に上げ、味見をどうぞと差し出した所で冒頭に戻る。





「んーっ! 唐揚げ~!」

「これはからあげというのか…美味いな」


 ハフハフと熱を逃がしながらジューシーな肉汁を口いっぱいに感じる。

 久しぶりの唐揚げは身体中に染み込む美味しさだった。

 ここに来てからずっと甘いものばっかりだったから余計に美味しく感じる。

 これにポテトがあれば最高なんだけどな~。



 …とそこまで考えて気がついた。

 私、明日シチューを作ろうと思ってさっきじゃがいも持ってきてたわ。

 作れるじゃん!



 速攻で脳内会議の結論が出たので再びコンロの方へ向かう私をどうしたのかとアルバート様が見ている。


 何かその顔、今日すごくいっぱい見た気がしますね。

 私の言動はそんなに不思議なの…?



 ちょっと腑に落ちないけど、国が違えば暮らしも違うから当たり前か。

 私だって騎士さんとかお城とか魔法とか、こっちでは当たり前のものを初めて見て驚いたんだし。



 一人納得してじゃがいもをくし切りにしていると、アルバート様が傍に寄ってくる。

 素揚げするだけだから面白くもないと思うんだけどね。


 しっかり水気を切って油に入れて火をつける。

 あとは浮いてくるまでほっとけばいい。


 しばらくして揚がったポテトに塩をまぶして、お皿に唐揚げと一緒に盛り付ければ唐揚げ&ポテトセットの出来上がり!


「これは何だ?」

「じゃがいも」


 目の前に出されたポテトを見て首を傾げるアルバート様。

 そっか、じゃがいももこの国では使われてなかったのか。

 じゃあ何で片栗粉はあったんだろう。

 もしかして食べずにデンプンだけ取ってたとか?



 …ということは、ポテトサラダもないってこと?

 あ、その前にマヨネーズがないのか!

 マヨネーズってどうやって作ったっけ?

 卵黄とお酢ってことは覚えてるんだけど……今度挑戦してみようかな。

 余った卵白でラングドシャでも作ればいいし。


 私が脳内で今後の計画を立てている間、アルバート様は「美味い!」と嬉しそうにポテトを食べていた。

 それは何よりです。











「ご馳走様でした」

「お粗末様でした」



 割とガッツリ盛った唐揚げとポテトをペロリと平らげ、私達は今満足感に浸っている。


 アルバート様も私が唐揚げをフォークに刺してかぶりついた時はナイフを使わないのかとものすごく驚かれたけど、唐揚げにナイフなんて入れたら肉汁逃げちゃうからね。

 実際同じように食べてもらったら納得してくれたし。


「これはユーカ殿の国では一般的に食べられているのか?」

「そうですよ。日本では甘いものよりこういう味付けの物が食事に出るの」

「そうなのか……当たり前に甘い物が食事なのだと思っていたが、私はこちらの方が好みだな」


 どうやらお気に召してもらえたようでよかった。


 念の為この国の人はお肉を食べちゃいけない慣習がないか聞いてみたけど、そもそもお肉を食べるという発想がないだけだと言われたので大丈夫だろう。


「私はこれが当たり前だから、甘いパンを三食には飽きちゃって」

「それはそうだろうな」

「お肉に巡り会えてよかった~」


 それもこれもアルバート様に市井に連れて行ってもらえたおかげだ。

 荷物持ちも含めてありがとうと改めて御礼を言うとアルバート様はこちらの方が御礼を言わないといけないと笑ってくれる。


「ユーカ殿がこうして教えてくれなければ、私はこんな美味しい物をずっと知らないままだったのだから」

「えへへ」

「だが、これを食べた後にいつもの食事を摂る気にはならないな」

「確かに」


 ご飯とお味噌汁があればこれで夕食にしちゃってもよかったけど、こっちには米も味噌もない。

 鶏ガラもどきもまだ煮込んでる最中だし、作れるとしてもサラダくらいしか思いつかないし。


 でもアルバート様の言うように、唐揚げ食べた後に甘いパンと海藻サラダと中華スープは食べる気にならないんだよなぁ。

 主食はないけど、もう少し何かおかずを作ってお腹を満たすか…?


 どうしたものかと悩んでみるものの何も思いつかない。


 とはいえ、これだけだと後でお腹空きそう。


 食後のデザートならアイスが残ってるんだけど、その前にお腹が膨れるもの……


 明日作る予定だったシチューでも作る?

 ちょっと時間かかるけど、その間にガーリックトーストでも作ればご飯になりそうじゃない?

 フレンチトースト用のフランスパン、ラスク作ろうと思って少しもらっておいてよかった。


「アルバート様、まだ帰らなくても大丈夫?」

「ああ、急ぐことは特にないよ」

「ならシチュー作るから食べていかない?」

「しちゅー?」

「野菜とお肉をミルクスープにしたもの?」

「よくわからないけど食べてみたいな」


 もうお肉に抵抗はなくなったのか、すんなり受け入れられたので急いでシチューを作ることにする。

 調理の工程は簡単だけど煮込むのに時間がかかるのよね。

 レンジがほしい……オーブンあるだけマシだけど。


 火が通りやすくするために小さめに具材を切って、バターで玉ねぎを炒めていく。

 この匂いが好きなんだよね~。

 バターが溶けた匂いってものすごく食欲をそそるんだもの。


 因みに、隣でアルバート様も同じように「いい香りだね」と鍋を覗き込んでいた。



 それから切った食材を入れて、小麦粉を多めにまぶして、まだ煮込み中の鶏ガラだけどまぁいいかと具材が浸るくらいまで注いでいく。

 あとは火が通るまで煮込むだけだから、次はガーリックトーストを作ろう。

 ニンニク刻んでバターと混ぜるだけだけど。

 こんなに簡単なのにめっちゃ美味しいって正義だよね!




 そうこうしている内にすぐにトーストも焼くだけ、シチューも煮込み待ちになったので、鍋をかき混ぜながらのんびりアルバート様とお話することにした。


 今日一日で随分アルバート様と話すのにも慣れてきた気がする。

 まだ敬語が完全には抜けないけど、距離にも多少慣れて………


「ユーカ殿」

「ひゃい!?」


 なかった。

 慣れたなんて嘘です。

 めっちゃ緊張します。

 だから急に覗き込んでくるのやめてください。


 動揺を隠せない私にアルバート様はクスクス笑っている。

 遊んでいるでしょう、アルバート様。


 ムッとした顔を見せるが、アルバート様は気にした風もなくすまないと笑ってる。


 だから笑うのやめましょうよ。


「からかわないでよ…」


 目が合わせられなくて鍋に集中しながら文句を言うが、隣ではやっぱり笑っている。


「悪かったよ。君は本当に面白いな」

「は?」

「ほら、私は剣以外に興味が無いと言っただろう?」

「あぁ、はい」


 広場で話してたことかな。

 確かに剣以外に興味が無いからご令嬢達に言い寄られてもやんわり逃げてたって。

 それがどうかしたの?


「つい最近までずっとそうでね。自分でもこの先も変わらないだろうと思っていたんだ」

「うん?」


 つい最近まで、ということは最近になって何か興味が持てそうなことが出来たってことなのかしら。

 アルバート様って今まで他のものに興味がなかった分、一度興味を持ったら突き進みそうなタイプだよね。



 なんて呑気に考えていたのが悪かったのか。




「最近は貴女に興味がある」

「……………………はい?」





 唐突に爆弾を投げ込まれた。

読んで下さってありがとうございます!

佑花の心情が忙しいですね。ようやくデート(仮)もそろそろ終わりです。

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