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訪問

新キャラです。魔道士団の団長さんです。

そういえば騎士団の団長さんは早くから登場している割に名乗ってないな…

 魔道士団の詰所は王宮の西側にあり、騎士団の詰所とは王宮を挟んで反対側に位置している。

 私は王宮の一室を借りて生活しているため、魔道士団に行くには王宮を出て市街を通り、詰所に向かうことになるのだけれど。


 相変わらず方向音痴の私は、ファーラに案内してもらっていた。



「ユーカ様、こちらが魔道士団詰所です」

「ありがとう、ファーラ」

「いいえ。それでは私は王宮に戻りますね」

「うん」


 ツァーリ様と合流してしまえばその後はツァーリ様に連れて行ってもらえるので、ファーラには王宮に戻ってもらうよう話していた。

 私付きの侍女さんといっても色々やることもあるだろうしね。




 詰所の入口まで来ると、そこにはすでにツァーリ様ともう一人、綺麗な金色に肩くらいまでの髪で少し目つきの悪い切れ長の瞳の人が立っていた。

 誰だろう?

 ローブを着てるから魔道士団の人なのはわかるけど、多分今まで会ったことはないと思う。


 疑問に思いながら近付いていくと、まずツァーリ様が出迎えてくれた。


「ユーカ様、おはようございます」

「おはようございます」


 カーテシーでご挨拶をし、顔を上げる。

 金髪の魔道士さんはこちらを見て恭しく騎士の礼をとると、にこやかに自己紹介をしてくれた。


「初めまして、聖女様。王宮魔道士団へようこそ。私はマティアス・フォン・ミライズと申します」

「ミライズ様、初めまして。ユウカ・シマザキと申します」

「御挨拶が遅れましたこと、申し訳ございません。ツァーリ副団長より話は聞いております」

「あっ、いえ、こちらこそ団長さんなのにご挨拶もせずに失礼致しました」



 魔道士団の団長さん、そういえば初めてお会いするわ。

 どうやら謁見の時に鑑定鏡を出してくれた人らしいんだけど、あの時はこっちに来たばかりで何が何だか訳がわからなくて、周りなんて全く見えてなかったからどんな人がいたのかとかサッパリ記憶にない。


 覚えていないことを謝ると、「御挨拶したのは今日が初めてなのですから、初めましてで良いのですよ」と笑ってくれた。


 ミライズ様は目つきが悪くて少し怖く見えるけど、お話してみると中身はとても優しい人なのね。



「それで、本日は人への魔力付与が可能か検証したいと伺っておりますが」

「はい」

「私にもお願いしても宜しいでしょうか?」

「え、いいんですか?」

「ええ。付与云々は関係なく、聖女様の魔力がどのようなものか気になっておりますので」


 そう言って私の手を取るミライズ様。


 って、ちょ、え、え!?


 慌てる私を他所にニコニコと「さぁどうぞ」と顔を覗き込んでくる。

 横にいるツァーリ様もニコニコと見守るだけで助けてくれる感じもない。


 え、これ今やらないといけないやつ? だよね?



「で、で、では、」

「はい」


 覚悟を決めて手のひらに魔力を集中させ、それをゆっくりとミライズ様の手に渡すように置いてくる。

 魔力を切り離すと目を開けて手を離し、目の前のミライズ様を見上げたら何やら難しい顔をしていた。


「『ステータス』……うん、特に変化はなさそうですね」

「そう、ですか」

「ですが、不思議な感じはします」

「不思議な…?」

「それについては同意ですね」


 ツァーリ様同様、お菓子みたいにステータスが変化することはなかったらしいけど不思議っていうのはどういうことなんだろう。

 よくわからないけど、何故かツァーリ様も同意しているし。

 まぁ、魔力自体がこの国に来て初めて知ったことなので私には違いなんてわからないけど、魔力について詳しい魔道士団の団長さんや副団長さんが言うのならそうなのかもしれない。

 何が不思議なのかわからないけど。


「それは一先ず置いておきましょう。とにかくもう少し他の人にも試してみましょうか」

「あ、はい」



 そこでミライズ様とは別れ、ツァーリ様に着いて詰所の中へと入っていく。


 ここには一度ツァーリ様の執務室にクッキーを届けに来て以来だし、その時も魔道士団の人に案内してもらってまっすぐ向かったからほとんど中を歩いたことがない。

 一見騎士団の詰所と同じような感じだけど、騎士団に比べると室内の作業をする部屋が多い気がする。


 案内がてら、ついでにと教えてくれた情報によると魔道士団では魔法について調べる研究員、騎士団と共に討伐に参加する魔道士がいて、ツァーリ様は前者なのだそうだ。


 研究員………確かに。

 検証してる時のツァーリ様、すごく生き生きとしてるもんなぁ。



 因みに、騎士団にも魔道士団にも詰所の近くに隊舎があって、基本的にはそこで生活しているらしい。

 要するに寮ってことね。

 騎士団は巡回のための夜番があるから仮眠室が作られているのに対して、魔道士団は研究に没頭して帰るのを忘れる人達のために仮眠室が作られたそうだ。

 研究員ってそういうイメージあったけど、本当にそうなのか……




 




 しばらく歩くと建物を抜けて広場に出た。


 そこには何人もの魔道士さんがいて、何やら魔法の練習をしているようだ。



 すごい、手から炎が出てる!

 向こうの人は手のひらに水が浮いてる!

『ライト』や『ダーク』と同じ感じなのかな?

 水は私も属性追加されてたから出来るのかな?


 ソワソワしながら目に映る光景を見ていると、いつの間にかツァーリ様が十人程の魔道士さんを連れてきていた。


「ユーカ様、こちらへ。あまり近づくと巻き込まれる危険がありますからね」

「あ、はい!」


 そうだよね、攻撃魔法なんだからコントロール一つで狂っちゃうし、そしたら流れ弾に巻き込まれる可能性だって十分にある。

 そうなったら私みたいな魔法初心者が咄嗟に防げるわけがないんだから、安全は確保しておかなくちゃ。


 ツァーリ様の言う通りに場所を移し、私は私の仕事をしなければと連れてきてもらった魔道士さん達に付与の実験をさせてもらう。




 が、誰一人ステータスに変化はなかった。


 やっぱり人に付与する効果はないみたい。



「ふむ……では次は騎士団へ行きましょうか」

「はい。…あの、これだけやって無理なら人には付与できないんじゃないですか?」

「可能性は高いですね」

「でしたらわざわざ騎士団まで行かなくても」

「魔力の受け取り方というのは人によって違います。もしかしたら、ということもありますからね」


 私だったらもういいやって諦めるのに。

 研究ってそういうものなのかな。


 あぁ、でもお菓子の研究だったら私もやりそう。

 材料一つで無限の可能性があるんだもの!

 それでダメだったとしても失敗は成功のもとだし、その選択肢が消えるから違うものに焦点が当てられる。

 そう思うと無駄なことでもないってわかる。



 お菓子に例えて何となく前向きになった所で、ふと先を歩いていたツァーリ様が振り返って尋ねてきた。


「ところで、ユーカ様は甘味以外は作られるのですか?」

「えぇと、お菓子じゃなくてご飯ってことですか?」

「ええ」

「得意とは言えないですけど、多少なら」


 実際、よくサボってはいたけど一人暮らしで自炊してたし、実家にいた頃はママのお手伝いもしてたから苦手と言うほどではない。

 ただ、お菓子を作る方が好きだったから料理にそこまで熱を入れていないので、作れないことはないとしか言えないのです。


「人体への付与の検証が終わったら、今度はそちらを検証してみようと思うのですが」

「わかりました。私の手で作るものが対象って可能性もありますよね?」

「ええ。それが料理以外にも当て嵌るのか、それとも料理の中でも種類が限定されるのか、その辺を調べてみようかと」


 昨夜私が考えていたことはツァーリ様にも思い当たったらしい。


 けれど、私の手で作るといっても限られているのでとりあえず料理からということだろう。

 だって他に一から作るようなものなんて、陶芸とか農作とか手芸とかしか思いつかないし…そもそも私に出来る気がしない。

 となると、やっぱり料理が一番現実的かなぁ。

 いつになったらお菓子の布教ができるんだろう。




 騎士団への道中、ツァーリ様の話に相槌を打ちながら私はずっとそんなことを考えていた。

読んで下さってありがとうございます!

今回は魔道士団でした。魔道士さん達をあまり書けなかったのが残念ですが……声の大きい騎士さん達と違って大人しい人ばかりなので特別書くことがないという……

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