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初日

ようやく討伐に行けますね!

 討伐の場所であるフォクシーアの森まではこれまで通り騎士さん達は馬、私とツァーリ様は馬車で移動した。


 入口で各班に分かれ、それぞれ回復薬を団長さんから受け取って森に入っていく。

 各班それぞれ十人ずつで

 近接戦が戦えない魔道士さんを騎士さん達で四方囲むように陣形を組んで歩く。

 私は特に大きな討伐は初めてということもあって、前にバーダック様、後ろにツァーリ様、左右に騎士さんにガッチリ固められていた。

 つまり、ど真ん中ね。

 上からの襲撃でもない限り一番安全な場所だわ。



 私達の組は入口から最初の分岐を右に行くルート。

 道順については騎士団側のリーダーであるローウェン様が指示を出してくれている。

 魔道士団副団長のツァーリ様がいるから本来であればツァーリ様が指示を出す立場にあるんだけど、今回は私を連れていて補佐という役割があるため騎士団側に任せたらしい。

 ツァーリ様なら補佐しながら指示出しとかサラッとやりそうな気がするけど、きっと役割分担も組で動くためには重要なことなんだろう。


「ここまで異常なし。引き続き奥へと進みます」


 ローウェン様の言葉に全員が頷いて歩を進める。

 辺りを警戒しながら少しずつ進んでいくと、すぐに再び分岐にぶつかった。


「分岐を直進します」


 地図を手に先頭を進むローウェン様についていきながら、私は顔だけ後ろを向いてツァーリ様に声を掛ける。

 前を向いて歩けって注意されるかもしれないけど、ここまで全く魔物に遭遇していないのが気になったからだ。


 第四騎士団との討伐訓練でも結構手前の方から魔物はいたのに、この森に入ってからもう十分は歩いていると思うけど魔物の姿は見ていない。


「ツァーリ様、ここはあまり魔物がいないんですか?」

「そういう訳ではありませんよ。ですが、奥の方に住み着いているようでして、あまり入口の方までは出てきませんね」

「そうなんですね」


 なるほど、だからまだ全然遭遇しないんだ。

 森によって魔物が活発に活動する場所が違うから、入口付近からウヨウヨしていることもあれば奥まで行かないと何も出ないこともある。

 だからそこ以外は安全ってことはないので、常に警戒は怠らないように進まないといけないんだと教えてくれた。


「ここから暫く直進です。そろそろ魔物の活動域に入ります」


 ローウェン様の声に騎士さん達は剣を構え直す。

 が、ツァーリ様とバーダック様は何も変化なし。

 このお二人、本当に動じないんだなぁ…





『グランドスピア』

『ファイアウォール』


 警戒を強める騎士さん達と何も変わらない魔道士さん達に挟まれ、まだ魔物の気配とかもわからない私はとにかく油断しないように辺りを見渡しながら歩いていたのだけれど、急にバーダック様が攻撃魔法を茂みの奥へ放ち、ツァーリ様が魔法壁を展開していたからビックリして立ち止まってしまった。


 そしてその瞬間、魔物が魔法壁にぶつかって、茂みの奥からは魔物の悲鳴が聞こえてくる。


『アクアランス』


『ウォーターゲート』


『ロックフォール』




 …って、待って待って待って。

 バーダック様、どんどん前に出てローウェン様と並んじゃってるし!

 そもそもそんなに攻撃魔法連発出来るものなの!?


 少しして元の位置に戻ってきたバーダック様に「片付いたようですね。さあ参りましょう」なんてにこやかに言われても、顔が引き攣るだけなんですけど…

 周りの騎士さんも苦笑してるし。

 ツァーリ様だけは涼しい顔してるけど。





「前方左奥、魔物の群れがいるようですね」

「ええ。七体程でしょうか」

「他の組は通らないルートですので、少し踏み込んで群れを討伐してから進みましょう」

「承知致しました」


 そこから少し進んだところで、いち早く魔物の気配に気付いたツァーリ様とバーダック様が、先を行くローウェン様に提案してるんだけど、訓練してる騎士さん達よりも早く気付くってどういうことなの?

 私はサッパリなんですけど。

 どうやって気付くものなのか教えてほしい。


「左奥と言いますと、接近戦には足場が少し悪いですね」

「では少し離れた場所から魔法主体で攻めましょうか。念の為防御壁を展開しておきますので、こちらに向かってきた場合の対処をお願い致します」

「畏まりました。騎士は隊列を崩さず待機!」

「「「はっ!」」」

「では、私が攻撃魔法を発動したらすぐにユーカ様は防御壁をお願い致します」

「え? あ、はい!」


 気負う気負わないの以前にまず出る幕がないからどうしたものかと考えていたら、不意に自分に仕事を振られて一瞬戸惑ってしまった。

 いけない、集中しないと。



 魔物が七体でツァーリ様とバーダック様は攻撃魔法に集中するということは、私が皆を守らないといけない。

 となると、個々を守る壁と全体を守る壁のどちらが早いか。

 討伐訓練のおかげで五人までなら同時に個々に出来るようになったけど、それだと十人いる今は二回にわけないと無理だ。

 でもツァーリ様は「すぐに」って言ったよね。

 それはきっと潜んでいる魔物の正体までわかった上で、反撃に飛び込んでくるスピードが速い魔物だからって言ってるんだと思うの。

 それなら左側の騎士さん達だけ先に展開する?

 もし違う敵が反対側から襲ってきたら?

 だったらスピード重視で全員を囲む防御壁の方が確実…!



 魔物の群れに近付きながら考え、私なりの結論が出た時にはもうギリギリの場所まで来ていた。


「この辺りでどうでしょうか?」

「十分です」

「では。『アクアレイン』」

『ファイアランス』

『アクアウォール』


 バーダック様とツァーリ様が攻撃魔法を発動したのを確認し、一番扱いに慣れている『アクアウォール』を全員を囲うように張り巡らせる。


 ツァーリ様は成程、と零して次の攻撃魔法を。

 バーダック様に至ってはその間にも攻撃魔法を連続で叩き込んでいた。

 でもやっぱりいつもの穏やかな表情なのが怖い。



 お二人のちょっと引く程の怒涛の攻撃の間も、私は防御壁の中から敵の攻撃が飛んでこないか警戒していた。


 あれから防御壁も練習を重ねて、すでに展開している防御壁の一定の場所を更に強化することが出来るようになった。

『アクアウォール』は扱いやすいから咄嗟に出すのに最適なんだけど、耐久性が心許ないから何とか出来ないかなって思ってて。

 かと言って全体を強化するのは無駄だし、攻撃が来るのがわかればそこだけ強化して防げないかなっていう試みだったんだよね。

 結果、上手くいったのであとは実践でタイミングを掴めればって感じ。



 …なんだけど、お二人が攻撃の手を止めても一向に魔物の姿が見えないところを見ると、全部倒しちゃったみたいね。








 結局、ルートに沿って奥まで向かってもツァーリ様とバーダック様の攻撃魔法のおかげで躓くことなくあっさり最深部まで辿り着いてしまった。


 私はといえば、ほぼ防御壁担当。

 たまに攻撃に参加してみたりもしたけど、私が発動する頃にはすでにお二人の攻撃魔法で敵は倒れてるって状態で。


 やっぱり人数が少ない分とはいえ、ツァーリ様とバーダック様を一緒にするのは戦力過多すぎですよね。

 私含め、他の騎士さん達もほとんど何もしてないよ?

 私だって敵に遭遇する度に防御壁張ってたけど、そこに魔物が飛び込んできたことは一度もなかった。


 深部にいた魔物の巣みたいな所もツァーリ様が燃やしてバーダック様が埋めちゃったし。

 ある意味息は合ってるのかもしれないけど。




「では戻りましょうか」


 再び先陣を切るローウェン様に続いて、陣形を崩さないように来た道を戻っていく。


 あまり広い森になると行き帰りでルートを分けて帰りも討伐しながら戻ることになるらしいんだけど、ここの森はそこまで広くないので行きに討伐して帰りに残党がいないか確認しながら戻るんだって。


 そして入口に戻ったら他の班が帰ってくるまで待機。

 団長さんが帰ってきたら報告を上げて、人員や被害の確認をして終了になる。


 今日は私達の班が最初に到着したのでのんびり待っているんたけど、全然帰って来なくてもはや暇。

 大して減ってない体力もすでに全員分治癒魔法で回復したしなぁ。



 というか、討伐ってこんなにあっさり終わるものなの?


 あ、でも今日は討伐初日だから深部までしか行かないけど、明日は別ルートで更に奥まで行くから途中で野宿するって話だったっけ。

 なら一日目で余力があって良かったって思うべきなのかな。


 何にせよ、無事に討伐初日お終いです!

読んで下さってありがとうございます!

討伐なのに騎士団の出番がないってどういうことなんでしょうね…

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