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召喚…?

プロローグ的なやつです。

 夜も更け、通りを走る車のライトもまばらになった頃、私、島崎佑花は一人で暮らすアパートまでの道をゆっくりと歩いていた。


 専門学校も二年に上がり、早二ヶ月。

 今のカリキュラムにも慣れてきたからと昨年よりも少しバイトの時間を延ばしてみたのだが、慣れない長時間の立ち仕事は思った以上の疲労を呼び、ようやく帰れるというのに上手く足が上がらない。


 パティシエ志望の私はデパ地下の製菓店の一つでバイトをしている。

 お店の人達は優しいし、勉強もさせてもらえるし、辞めたいという気持ちがない以上、何とか体力をつけるしかない。

 インドア派で体力のない自分を恨むわ。


 とにかく、今日はもう疲れきってしまった体をお風呂に入ってしっかり解してゆっくり寝よう。


 そう思って一歩、また一歩と踏み出していくが、家まであと少しという所で足が縺れてしまった。


「あっ…」


 転ぶ。

 そう思って次に来る衝撃に思わず目をキツく瞑る。


 一瞬目の奥がチカッと光った気がした。


 が、いつまで経っても痛みを感じない。


 恐る恐る目を開けてみると、そこはさっきまでと同じく暗い夜道ではあるが、車もなければ街灯もない。ついでに人もいない。

 辛うじて宵闇に紛れて見えている建物はどう考えても日本の作りではない。


 何故なら、


「お、お城…?」


 そう、少し遠くに目を向けるとお城が見えた。

 しかも洋式の造りのようで、これ迄見慣れていた日本のお城とは全く違う。

 お城というか、もはや宮殿だ。


 帰宅途中、足が縺れて転びそうになったことは覚えているのに、どうやってここに来たのか、ここがどこなのかもさっぱりわからない。

 いっそ夢なのかとも思ったが、頬を抓ってみても痛いだけ。


 え、どうしたらいいの? 私の家はどこ?


 家に帰りたいだけなのにどうして良いかわからず、見知らぬ場所で右往左往する私はそれは不審だったのだろう。

 人っ子一人いなかった道の路地から私の姿を認めた騎士さんが駆け足でこちらにやってきた。


 待って、騎士?

 いや、騎士…だよね?

 甲冑着てるし帯剣してるし。


 相変わらず夢か現実かわからないけど、少なくともここが日本じゃないことは理解した。


「こんな時間にどうされたのですか?」


 駆け寄ってきた騎士さんに声を掛けられる。

 うわ、美形!


 金に近いライトブラウンの髪に色素の薄い青の瞳。

 整った顔立ちに加え、騎士だけあって体格もいい。

 ガッチリ筋肉質なわけでもなく、程よい筋肉の付き方というか、しなやかというか。

 ゴツくはないけれどガッシリしているのはわかる。


 というか、あれ?

 どう見ても外人さんなのに何を言ってるかわかるってどういう事?


「あ、あの、私、バイトから帰る所だったんですが…」

「ばい…と…?」

「あ、アルバイトです。さっきまで駅前のデパ地下でバイトをしていて」

「ある…? えき…?」


 自分でもこの状況で信じてもらえると思ってないけれど、事実なのでそのまま伝える。

 やっぱりこちらの言ってることもわかるらしいが、内容までは伝わらなかったようだ。


 首を傾げる目の前の騎士さんは難しい顔をしている。

 それはそうだろうなぁ。

 だって当の本人である私もよくわかってないんだもの。


 内容が伝わらない以上、このままでは埒が明かない。

 そう思った私はせめてここがどこなのか確認しようと口を開いた。


「あの、ここはどこなんでしょう?」

「ここはウェルシティ広場ですよ」

「うぇる…?」


 今度は私が首を傾げる番だった。

 どこ、それ。


「ご存知ないままこちらにいらしたのですか?」

「えぇと、そうですね…」

「道に迷ってしまわれたのでしたらご案内しましょうか?」

「ありがとうございます。ただ、迷ったというレベルでないのでどこに行けばいいのか…」


 そこまで話して騎士さんはさすがに何かおかしいと思ったようだ。

 改めて名前や出自、現在の状況を確認された。

 




「ユーカ殿、ですね。どういう訳かわかりませんが、この国のご出身ではないようですね」

「はい」

「迷い込んでしまわれたにしてもこんな時間では何処も駆け込めないですし、明朝国王様に御説明させていただきますので、今夜は騎士団の預かりとさせていただいても?」

「あ、はい」


 いくら夏とはいえ、見知らぬ土地で何の用意もなく野宿はキツい。

 ただでさえ疲労困憊だというのに。

 それに、一人で困っているよりも保護してもらえた方が安心なので正直助かった。



 …王様に報告というのがとても不安だけれど。

 不法入国で捕まったりしたらどうしよう。


「申し遅れました。私は第一騎士団所属、アルバート・フォン・クライスと申します」


 一人百面相していると徐に騎士さんが自己紹介をしてくれる。

 この国の自己紹介なんだろうか。

 左手を胸の前に当て、恭しく頭を下げられた。

 何というか、中世の貴族みたいなイメージだなぁ。

 教科書の中のお話みたい。


 ただ、そうなるとこの長いお名前をどう呼んだらいいのかわからない。

 日本だったら大体名字にさん付けで乗り切れるけど、外国の人はどれが名前でどれが名字かもわからないし、さっきからずっと自分のことも殿付けで呼ばれていることを考えると、感覚は違うのかな。


 結局何が正解なのかわからなくて、失礼を承知で本人に聞くことにした。

 騎士さんは私の話を聞いて驚いていたけれど、すぐににっこり微笑んで快く教えてくれた。


「私はクライス伯爵家の生まれなので家名はクライス。貴族が名乗る時は名前と家名の間にフォンという貴族を表す称号が入ります」

「えぇと、クライス……様、は、お名前がアルバート様で、貴族様なのでフォンが入って、家名であるクライス様、ということ…?」

「えぇ、合ってますよ」

「では私の場合、島崎が家名だからここでは佑花・島崎ってことですね!」

「そうなりますね」


 騎士団の詰所に向かいながら色々と教えてもらう。

 こちらでもやっぱり親しくなるまでは家名に様付けで呼ぶのが常識のようだ。

 さっきアルバート様が私を佑花殿と呼んだのは、私が島崎佑花と名乗ったから佑花が家名と思ったらしい。

 クライス様は正そうとしてくれたけれど、堅苦しいのは苦手なのでそのまま名前で呼んでもらえるようにお願いすると、それならば自分も名前でと言って下さったのでお言葉に甘えることにした。



「ユーカ殿、こちらへ」

「あ、はい」


 アルバート様に先導されるままに連れられてきた騎士団詰所。

 今は時間的に夜番の人しかいないため、騎士団の団長さんへの報告は明日の朝一で行うらしい。

 案内された部屋はベッドとお風呂、トイレがあるだけの簡易な部屋だったけど、ベッドで寝れるだけ有難いから文句はない。

 アルバート様はこの後の見回りは他の夜番に頼み、部屋の近くで待機してくれているそうだ。

 何かあったら呼ぶようにとだけ言って部屋を出ていった。



 ベッドに身体を投げて大きく息を吐く。


 ここはパンディッド王国の首都、パンディッド領。

 海に面した大きな街。

 世界地図でいうと西の方にあるそうだ。


 因みに他の国のことも聞いてみたけれど、一つも知っている国名はなかった。

 地理は苦手だったけど、それでも主要国くらいは知っているのでさすがにおかしい。


 おかしいということはずっと思っていても、考えて答えが出ることでもないので諦めて寝てしまおう。

 実はこれは夢で、起きたら見慣れた風景に戻っている可能性だってあるんだしね。

 戻っていなかったとしても、身一つで来てしまった以上流れに身を任せるしかない。




 十九歳にしてすでに悟りを開きつつある自分に苦笑を漏らし、布団に潜り込んだ。

初めまして。神無と申します。

ここまで読んで下さってありがとうございます!

異世界、お菓子、騎士と私が好きな物を詰め込んだだけのお話になる予定ですが、お付き合い頂けたら嬉しいです。

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