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● 060 エピローグ


 八月某日。



「……」

「~~♪」


「…………」

「ふんふんふーん♪」



 しゅるしゅる。ぱさっ。



「アキラさん」

「?? エディ君、どうしましたか?」


「ボクはどうして、こんなことに…?」

「こんなこと、というのは?」



 ぎい。とてとて。



「お風呂のことです」

「はい。お風呂ですね」


「ボクは…、どうしてアキラさんと一緒にお風呂に入ることになったんでしたっけ…?」

「それはですね、ついさっき、エディ君がやっと説得に応じてくれたからです。無事に遠征を終えたハンター同士の、裸の付き合いの重要性をこんこんと説き続けた実に長い戦いでした」


「ちょっと待って下さい。頭が現実に追いついてなくて…」

「はい」


「……。…………。…………、……………………説得に応じたというより、ホーンボアの大猟で浮かれていたところをあの手この手で言いくるめられて、根負けしてしまっただけのような?」

「正しい現実認識だと思います。でも、もっと僕のせいにしてもいいんですよ?」


「…いえ。そんなことはしません。はっきり断り切れなかった僕が悪いので」

「エディ君は優しいですね。そういうところも好きです」


「で、でも、本当に今日だけですからね…?これっきりの、特別です」

「はい、分かってます。今日だけの特別です。ん~♪」


「ひゃあっ!?も、もうっ、アキラさん!?」

「ごめんなさい、くすぐったかったですか?」


「むぅ…。いいですけど…。…いえ、よくありません。抱きつくのは禁止です。お風呂で抱きつく必要は何一つありません」

「む…、残念ですが分かりました。お風呂場でハグは禁止。エディ君の言う通りにします」


「ほっ…」

「それと、とても危ないので詳しい描写は自重します」


「よく分かりませんが分かりました」

「そういうものだということで。…ところで、さっきから顔を逸らしていませんか?そっちには壁しかありませんよ?」


「そんなことはありません。壁の真理が見えます。大丈夫です」

「ふふっ。じゃあ、こちらに座ってください。お背中流しますね」



 ぎしっ。あわあわ。



「……」

「痒い所はありませんか?」


「大丈夫です。とてもお上手です」

「よかった」



 ぴちょん。ごしごし。



「……」

「…ふふっ」


「どうしましたか?」

「ごめんなさい、思い出し笑いです。エディ君、すごくモテてたなあって。勇者様、勇者様って」


「うっ…。でも、いきなりあんなふうに取り囲まれるのは全然慣れてなくて、結構緊張してしまいました」

「はい。ファンサービス頑張りましたね。よしよし」


「ありがとうございます。アキラさんに誉められるだけで、ボクはどんなことでも頑張れます…」

「どういたしまして。それに、あの時のエディ君は緊張だけじゃなくて、まあまあ満更じゃない表情もしていましたよ。もっと誉めて、みたいな。僕には分かります。いい傾向です」


「もっと誉めてって…。それがいい傾向なんですか?」

「勿論です。とても子どもらしくて、人間らしい気持ちです。微笑ましいです」


「むぅ…。そういえば、アキラさんは天使様天使様ってすごくチヤホヤされても平気そうでしたね」

「それはまあ、心構え次第です。開き直るのもそう悪いことじゃありませんよ」


「開き直る…。考えておきます。…でも」

「でも?」


「開き直り過ぎというか。あの時のアキラさん、何枚も写真を撮られても全然満更じゃない表情をしてました。寧ろノリノリでした」

「そうでしたか?」


「そうでした」

「分かりました、次からは気を付けます。心配をかけてごめんなさい」


「いえ…」

「…そうだ、今度エディ君も僕を撮ってみますか? 2人きりで」


「えっ!? えっと」

「もちろん、ただの提案です。エディ君が自由に決めていいですからね」


「…か、考えておきます」

「はい。いつでも、エディ君がしたいことを言って下さい。本当に遠慮しなくていいですからね」


「はい…」

「……」


「……」

「ごしごし」


「……」

「なでなで」


「にゃあっ!? あ、アキラさん、それも禁止ですっ…!!」

「すみません。綺麗な肩甲骨のラインが気になってしまって…」


「どうしてそんなところが気になるんですか…? もぅ…」

「エディ君は気になりませんか?」


「き、気になるって、何のことですか?」

「僕の体のラインです。肩とか背中とか。腰とかふとも――」


「――気になりません」

「言い切りましたね。でも、少し焦りが見えました」


「焦ってません。事実ですから」

「気にならないのなら、目を開けても平気ですよね?」


「気にならなくても、守るべきことはたくさんあります。倫理は大事です。他意はありません…」

「はい。次は頭も洗いますね。目を開けてこっちを向いてください」


「目は開けません…」

「ふふ」



 ざばー。あわあわ。



「……」

「痒いところはないですか?」


「ありません…。とても上手で、気持ちいいです…」

「よかった」


「…そもそも、アキラさんには恥じらいが足りないと思います」

「おっと。引っ張りますか」


「引っ張ります。前々から言おうとは思っていたんです。女の子なんですから、もう少し自分の体を大事にしてください」

「はい。ごめんなさい」


「ボクは今、瞼の裏から疑惑の目を向けています」

「反省してます。信じてくれませんか?」


「反省している、というのは信じます。でも、アキラさんのことですから、確信犯でまた自分の体を使い勝手の良い道具扱いにしそうです」

「む。痛いところを突かれました」


「もう…」

「難しいところなんです」


「何も難しくありません。アキラさんが自分を大事にしてくれたら済む話です」

「はっきり言うと、エディ君を慰めるのにこの体はとても使い勝手がいいんです」


「……。はっきり言い過ぎです…」

「せっかくの裸のお付き合いなので、少し腹を割って話そうかと」


「…これで少し?」

「少しです。乙女には秘密が付き物ですから」



 ざばー。にぎにぎ。



「えっと。アキラさん?」

「例えば…、こうして僕と手を繋げばエディ君はどんな気持ちになりますか?」


「はっきり言うと…」

「はい」


「温かい気持ちになります。幸せといってもいいくらいです」

「よかった」



 ぴとっ。



「っ…」

「ぎりぎりセーフみたいですね。良かった。エディ君は、こうして掌で腕を触れられたらどんな気持ちになりますか?」


「…手を繋ぐだけとは違う気持ちです。上手く言葉にできません…」

「じゃあ、エディ君も僕の二の腕を触ってみてください」


「えっ、でも…」

「大丈夫ですから。腕に触れるだけならセーフですよ。こっちです…」



 ぴとっ…。



「……」

「感触はどうですか?」


「…すべすべしていて、温かくて、とても触り心地がいいです…」

「少しでも、あなたの癒しになっていますか?」


「…はい」

「よかった。嬉しいです。とても」


「アキラさん…」

「あとは、そうですね。ハグもなでなでも禁止されたのでこれ以上のことはしませんけど…。スキンシップ以外にも、目の保養、という意味もありますね」


「アキラさん?」

「瞼の裏からジト目を感じますが、構わず続けます。こほん。何せ、女神様謹製の超絶ロリですから。どうでしょう。上から下まで、この健康美には見るだけでも生命力が湧き上がってくるような視覚効果がありませんか?特に、このスラリとした太ももとか」


「……。正直に言うと…」

「はい」


「目を開けて、アキラさんの綺麗な姿を見てみたい気持ちと、見てはいけないという気持ちがせめぎ合っています。肌が眩しくて直視できないんです…」

「そうだったんですね。そう言ってくれると自信が出てきます」


「それに、なんだかぞわぞわします」

「ぞわぞわ?」


「頭の奥の方が刺激されるような感覚です。これはきっと危険なものです」

「危険…」


「だから…」

「よかった。この体のままでも、いつかはエディ君を落とせるということですね」


「それは違います」

「でも前に、12歳になった僕には惹かれてくれていたみたいですから、成熟した女性でないとダメという訳ではないはずです」


「う」

「言ってもたったの2歳差ですから、厳密な境界線はありません。だからぎりぎりセーフです」


「厳密にアウトです。あまりにもはっきりと区切られてます」

「くすっ」


「意味ありげに笑わないで下さい。ないですからね。絶対ありません」

「分かってます。さ、体が冷めないようにそろそろ湯船に浸かりましょう。滑らないように気をつけてください」



 ざぶん。ちゃぷちゃぷ。


 ちゃぷん…。


 ちゅっ。



「っ…、……。もう…」

「よかった。やっと目を開けてくれました」


「迂闊でした…」

「こっちを禁止するの、忘れてましたね」



 ぶくぶく…。



「…そんな顔をしてたら、怒るに怒れません…」

「僕、どんな顔をしてますか?」


「とても幸せそうな顔をしています」

「はい。とても幸せですから。エディ君も、とても幸せそうな顔をしてますよ。自然で優しい笑顔を浮かべています」


「ボクが…?」

「はい」


「そうなんですね…。…そっか」

「エディ君は今、幸せですか?」


「はい。幸せです。あと…」

「なんですか?」


「アキラさんが好きです。心から」




  ◇◇◇




 8月1日、カイア日(赤の日)。

 第23回ウィバク黄昏領域解放戦。


 消費魔力592348

 ・エディンデル67189、アキラ126759 小計193948

 ・マナ結晶 特級マナ結晶40000×3 小計120000 ※全て未使用

 ・純白の宝珠 35100×4 小計140400 ※2つ未使用

 ・聖者の守護印 69000×2 小計138000


 撃破数7523

 ・兵士級2065

 ・戦士級1976

 ・騎士級2800

 ・楽士級681

 ・神官級1


 撃破累計78845

 ・表層部26287 兵士級16669、戦士級 8338、騎士級 1260、楽士級  20

 ・中層部26261 兵士級10412、戦士級13900、騎士級 1181、楽士級 768

 ・深層部26297 兵士級 3872、戦士級 3353、騎士級17291、楽士級1774、神官級7

 ・小計 78845 兵士級30953、戦士級25591、騎士級19732、楽士級2562、神官級7


 復活後最大魔力

 ・エディンデル108355、アキラ204563


 備考・分析

 ・特級マナ結晶3個、アクセルリング10個がリリアさん、リューダ師匠、フーヤ先生から共同で無償提供。

 二等級ネクタル水8個、一等級ネクタル水2個購入。支出1800万レン。

  

 ・未使用の特級マナ結晶、宝珠、アクセルリング、ネクタル水は回収済み。


 ・神官級黒雷体の樹状放電により23回死亡。


 ・交戦24回目で黒雷体を撃破し、ウィバク黄昏領域に封じられた全陰魔を殲滅。全消費魔力、約280万エルネ。


 ・エディンデルが聖術『破魔の聖気』を継承。

 

 ・アキラが聖術『封魔の聖暈』を継承。


 ・ウィバク黄昏領域消失。解放完了。

  









 









 以上、少し長めのプロローグでした。

 二人が正真正銘のヒーロー&ヒロインとしてスタート地点に立てたところで、このお話は一旦一区切りにしようと思います。

 少しでも楽しんでもらえたなら幸いです。


 最後までお付き合い頂き、本当にありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
[一言] 完結、お疲れ様でした。ついに二人でお風呂に入れましたね。
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