● 051 継戦Ⅵ/勇者Ⅱ
軍団を為す、数百体の騎士級。地下に蠢く数十体の楽士級。
――エディ君が加速魔術『タイムアクセル』を発動させ、リリアさん印の指輪型時間加速装置『アクセルリング』を同時使用、さらには光の加護がもたらす時間加速効果とも重なり合い、三種の時間加速が累積。約6.14倍まで加速された彼だけの時間世界で、3.5主観秒間で聖剣を極限まで研ぎ澄ませ、0.9主観秒間で『一閃』を9度振るう。それは『煌閃』と名付けられたエディ君独自の聖剣技。4.4主観秒で放たれた9連続疑似空間切断攻撃。
結果、俯瞰視点では0.72客観秒で放たれた9つの赤い軌跡が砂漠を切り刻み、楽士級18体を撃破。
黄昏の空を数十の暗黒線が貫いていく。百数十の黒い三角錐が高速で飛来し、黒ずんだ紫色の爆炎を咲かせる。
――適宜、僕もタイムアクセルとアクセルリングを同時使用し、2.90倍に圧縮された時間内で損壊した結界を修復し、魔力供給と魔力回復に努める。時間が加速されている分、エディ君への供給速度もマナ結晶による回復速度も2.90倍に達し、従来にはない高速戦闘が可能となっている。
聖剣が烈火の輝きを灯す。彼の闘気は眩く、力強い。騎士霊は黒爪の獣を道連れに白光と共に消え、残された勇者がその遺志を受け継ぎ、闇をひたすら砕いていく。時に直線的に、時に曲線的に。波打つように、切り刻むように。
――再び煌閃を放つ。それでも、楽士級が展開する増強効果は途切れず、騎士級大隊の圧力は極めて強い。大隊との会戦から僅か一分で、致命傷を避ける内に予定の針路が右奥へと流されていく。
突如、立体絵図の光球から激しい電子音が鳴り響き、その0.3秒後、光が闇に切り裂かれた。長大な黒剣が超音速で飛来し、金属音のような衝撃を轟かせ、瑠璃色の光の結界を――
――黒剣が飛来した瞬間、タイムアクセルとアクセルリングを同時発動。時間加速2.90倍。0.3秒が0.87秒まで引き延ばされる。光の結界は破損するものの、間一髪で肉体への直撃を回避。損傷なし。
八本脚の脚部に真っ黒な球体を載せた異形が巨大な砂丘頂上に現れる。脚部と黒球に挟まれた比較的小さな胴体部分に白く光る縄が巻き付いている。その縄は円柱と繋がり、怪物をその地点に縛り付けている。
――神官級黒剣体。最優先討伐目標――ではない。可能な限り遠ざかり、射線を避ける。
神官級。呪詛体。巨大なウイルスを彷彿させるようなフォルム。右側面から一回り大きな2体目が現れた直後、砂漠自体が蠢動し、光を閉ざす砂嵐が激しく巻き起こった。うねる砂の触手が正八面体の楽士級を連ねて閉じ込め、保護し、空中を自在に泳ぎ回る。まるでカエルの卵管のよう。そて、砂嵐の向こう側から黒剣が飛来し――
――再度、黒剣体の超遠距離攻撃を加速魔術で回避。神官級流砂体も討伐目標ではなく、すぐさま離脱を開始する。
何もかもが敵の都合のいいように造り変えられていく。逃げ場は少ない。流れる砂丘は大波のよう。2人きりの孤軍。それでも、と絶望に抗う。砂嵐の向こう側から照射された数十のレーザーが結界に直撃――
――加速時間内で身を捻る。薄皮一枚。この程度、傷には含まれない。砂嵐から抜け出し、神官級蛇心体を目視。
あの個体こそが、今日の最優先目標。命に替えても討ち取らなければならない。
数千の兵士級、戦士級が寄り集まり、多頭の大蛇のように流動する。八つの頭部に数多の騎士級。そして、心臓部に黒真珠の如き球体が君臨した。陰魔集合体。一体の巨大な怪物のように咆え、暗色のエネルギーをもって破壊の限りを尽くす存在。大蛇が緩やかに鎌首をもたげ――
――飽和攻撃を受ける前に加速し、最大戦速で大蛇へと接近する。師が凝縮したかのような懐へと。
飽和攻撃。黒い銃弾と光線と爆炎が空間を埋め尽くす。不退転。前進だけが意味を成すだろう。
――故に、死中に活を求める。悪夢と闇に抗う。
決死の覚悟で手繰り寄せた好機。エディ君が刻んだ一閃は大蛇に届かず、真っ赤な火花を散らしながら停止した。。砂漠を切り裂く光の刃も、強固な魔力障壁は突破できない。
――しかし、二閃、三閃。四閃、五閃、六閃、七閃、八閃、九閃――僅か0.72秒で錬成され、解き放たれていく九つの赤き閃光。幾度も閃き、一瞬で黄昏を刻み続けた。聖なる刃は決して砕けない。致命傷は背後から一直線に飛来する黒剣のことごとくを回避し、ネクタル水を飲み干し、最後のマナ結晶を解かし、魔力を絞り出す。最大出力を維持。
――再び、九閃。
――三度、九閃。
そして障壁の半数を失った大蛇が鬱陶しそうに僅かに身を引いた直後、彼は瞬時に命の半分を燃やし、光と言葉を発した。確かに、レーヴァテイン、と。光は一瞬で極大の刃となり、天地を穿つ一撃によって大蛇の胴体を首元から真中まで破断。遂に神官級蛇心体を露出させた。
その瞬間、背後で闇の魔力が破裂した。黒剣ではない。加速した時間の中、背後から黒い雷が迫ってくる。ランダムなギザギサの暗黒。四体目の神官級。蛇心体の更に左方向2.7キロメートル先に封印されている個体。失念していた訳ではない。しかし、速過ぎる。少なくとも音速の数倍。6倍の加速をもってしても回避困難。エディ君を庇い、下半身が粉微塵に砕けた。僕の。死。エディ君が――、悲鳴を抑える。うん、えらい。
行って!!!
僕もまた、命を燃やす。死にゆく命の全てを加護の光へと変換する。
呼応し、彼を巡る水色の花弁が新星のように光り輝いた。まるで、空想上の天使が背負う六枚翼のように。力を彼に。
墜落していく最中――翼を得たエディ君が命のもう半分を燃やし尽くし、限界を超えて加速された世界で天地を繋げる直線を引き――そのまま、大蛇を縦に断ち割る光景を僕は見た。
――やったね、エディ君。
◇◇◇
7月10日、カイア日(赤の日)。
第17回ウィバク黄昏領域解放戦。
消費魔力88152
・エディンデル13240、アキラ24912 小計38152
・マナ結晶 二等級1500×8、一等級7000×2 小計26000
・純白の宝珠 12000×1 小計12000
・聖者の守護印 6000×2 小計12000
撃破数663
・兵士級185
・戦士級176
・騎士級233
・楽士級68
・神官級(蛇心体)1
撃破累計53912/78000
・表層部26287 兵士級16669、戦士級 8338、騎士級1260、楽士級 20
・中層部26261 兵士級10412、戦士級13900、騎士級1181、楽士級768
・深層部 1364 兵士級 354、戦士級 351、騎士級 552、楽士級106、神官級1
・小計 53912 兵士級27435、戦士級22589、騎士級2993、楽士級894、神官級1
復活後キャパシティ
・エディンデル20765、アキラ39121
備考・分析
・各加速効果
○アクセルリング:リリアさんとフーヤ先生が共同開発した使い捨てのマジックアイテム。時間加速装置。完成品をエディ君と僕が4つずつ所持。
時間加速1.51倍、効果時間は少なくとも9.9主観秒。自壊するまで効果中断と再使用が可能。形状は指輪。時価。
○タイムアクセル:フーヤ先生から(往復ダッシュ地獄で)伝授された時空魔術。下級時間属性魔術。何らかの共鳴的現象によるものか、性能はエディンデル、アキラ共通。時間加速は1.92倍。持続可能時間は4.8主観秒。アクセルリングとの累積効果があり、同時使用で時間加速が2.90倍に達する。アキラが使用する場合、一時的な魔力供給、魔力回復速度の加速において特に有効。ただし、内包魔力枯渇による失効から再発動まで約6秒必要。
○光の加護(エディンデルに対してのみ有効):時間加速を強化機能の一つとして有している。通常出力で1.59倍、最大出力で2.12倍。アクセルリング、タイムアクセルと更に累積する。三種の加速を同時使用することで、エディンデルのみ4.8主観秒の間約4.61~6.14倍まで加速可能。
・聖剣技(会議にかけ、全て正式名称として採用済み)
○基本性能:最大出力(加護の最大出力込み)448エルネ、最大射程545メートル。
※最大出力を射程1メートルで圧縮し、魔力密度を最大限まで高めることも可能。
○一閃:剣の刃を極限まで薄く強靭にした一撃。鋭い扇型の疑似的な空間切断であり、内包魔力以上の破壊力を発揮する。同一平面上の物体を一度に切断できるため、2体以上の敵を同時に攻撃可能。砂漠地下の楽士級を撃破可能。
※非常に強力な技だが、発動可能な出力と射程の幅が狭く、魔力密度はあまり高めることができない。
精神統一約1.7秒~2.2秒(光の加護の1.59倍~2.12倍加速効果による。エディ君の視点では3.5主観秒必要)。
発動可能出力49~64エルネ、発動可能射程481~596メートル。
○煌閃:現時点で実現可能な最大加速、最大出力によって一閃を可能な限り連続で放つ技。
現在は最大で九閃。少なくとも楽士級18体を撃破可能。一度の発動で1000弱の魔力消費。
時間加速約6.14倍(1.51×1.92×2.12)。
3.5主観秒の精神統一の後、一閃につき0.1主観秒の疑似空間切断攻撃を行い、合計4.4主観秒。
俯瞰的には精神統一開始から0.72客観秒で9つの一閃が放たれる。
○極閃:生命力を対価に、出力限界を超えた一閃を放つ。同様に出力限界を超えた光の加護を併用した場合、一撃の最大出力は6000以上。射程約1キロメートル。神官級を撃破可能。
○レーヴァテイン:生命力を対価に、出力限界を超えた巨大な聖剣を放つ。極閃とは異なり刃厚が厚い。即時発動と広範囲殲滅攻撃が可能。一撃につき3000以上。射程約700メートル。先代勇者テルの技名を継承。
・二等級マナ結晶8個、二等級ネクタル水を4個購入。支出1200万レン。提供された一等級マナ結晶は残り1個。
・守護印20個分から、騎士霊48名、神官霊12名が召喚。
・騎士級1個大隊209体を消費魔力約20000で撃破。半数以上を騎士霊部隊が討滅。
騎士級一体につき約96エルネを消費。
・楽士級36体を2度の『煌閃』で撃破。消費魔力約1800。
・大蛇型陰魔集合体(神官級蛇心体):神官級蛇心体により、兵士級、戦士級それぞれ約2000体、騎士級約300体、楽士級約100が八本首の大蛇型集合体を形成。この内、兵士級185体、戦士級176体、騎士級24体、楽士級32体、神官級1体を撃破。
また、神官級黒剣体と流砂体、及び4体目の神官級(黒雷体と命名)が出現。多数の攻撃を受ける。
総計で消費魔力約65000。
・アキラが最大出力限界を突破。
死亡直前、光の加護の最大出力が4000を超える。エディンデルに対する限界突破、時間加速、魔力供給等の効果が著しく上昇。
・エディンデルが最大出力限界を突破。
一撃目の出力は3000超(→レーヴァテイン)。
二撃目は限界を突破した光の加護を受けた上で放たれた一閃であり、推定出力6000超(→極閃)。
その連続攻撃によって神官級蛇心体を打破。
――以上。
フーヤ先生が来てから、一週間。
やっと、倒せた。
7体の内の1体を。
ようやく。
9万近くの魔力を費やして、大赤字をして、ようやくだ。
加速魔術も新しいマジックアイテムも全部使って、巨大な集合体と化した大蛇を、エディ君が命を燃やして放った必殺技で。本当に厳しい戦いだった。
でも、勝った。
勝ったんだ…。
「勝ちましたね」
「はい。勝ちました」
「いつもいつも、エディ君本当によく頑張っていて、本当に偉いです。誰よりもカッコいいです」
「ありがとうございます。アキラさんがいてくれたから、ボクはここまで来られました」
心中でも口でも勝利を噛み締める。エディ君と二人一緒に。復活したばかりの体でなかったらエディ君の手を取ってくるくる小躍りしていたかもしれない。
「あと6、ですね」
「はい。あと、6…。あの、アキラさん」
「はい。なんですか?」
「その、あと6回で、ウィバクを開放することは可能でしょうか…?」
「そうですね…。はい、不可能ではないと思います。僕達が持ちうる全てと…、トムとリリアさん、リューダさん、フーヤ先生を頼れば。これからも一回一回全力で挑んで、神官級を一体ずつ倒すことを目標にすれば」
「全力で挑めば…」
「……」
「…あともう少しだけ頑張って、全力で戦って、終わらせたい…。そう思うのは、駄目でしょうか…?」
「いいえ。駄目なんかじゃありません。エディ君の気持ちは分かるつもりです。ここまで来たから、あともうちょっと、本気の本気で頑張りたいんですね」
「はい」
「でも、本当に辛い戦いになると思います。いくら体が元通りになるとはいえ、心が参ってしまったり、酷い悪夢を見たりするかもしれません。それでも?」
「…はい。アキラ様が許してくれるなら。できるだけ…、今の気持ちのまま、最後まで頑張ってみたいんです」
「分かりました。では、あと6回です。6回までなら、全力を出して、死ぬ気で頑張って戦うことを、天使の僕が勇者のあなたに許します。…エディンデル様」
「はい。アキラ様」
「これは、世界でただ一人の勇者に与えるミッションです。どうか、全ての陰魔を殲滅し、ウィバクを開放して下さい」
「はい。ボクの命に代えても」
「何度でも死ねますが、心が折れそうになったらすぐにストップをかけますからね」
「覚悟の上です。それに…」
「それに?」
「ミッションというのはとても相応しい言葉だと思います。天使様から直々に下された特別な使命…。あと6度の戦いでウィバクを解放せよ、と。そう思うと、いくらでも力が湧いてきます。アキラ様はボクの全てです。ボクの全てをアキラさんに捧げます…」
「エディ君?大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないかもしれません。本当に凄い戦いだったので…。夢心地で…」
「もう少し横になっていましょうか」
「はい…」
天使全肯定勇者になってしまって、妙なことを言い始めたエディ君をそっと抱き締める。
そのまま、復活の神殿で時を過ごす。裸のままの、とても神聖な場所と時間。絶対に侵害されることのない、二人だけの…。
「もしミッションを達成出来たら、ご褒美にたくさんサービスしますね」
「はい…」
よし。
言質取った。
◇◇◇
僕は考えなければならない。
それが僕の使命だから。
僕は勇者のエディ君を支えるために生まれ変わった。
かくあれ、と望まれて。
でも、それだけじゃきっと足りない。
戦い続けることがエディ君の使命なら、支え続け、考え続けることが僕の使命だ。
本当に支えるだけで済ませてしまうと、周りで何か良くないことが起きても何も分からないままで、いつか支えること自体ができなくなってしまうかもしれない。
だからエディ君を支え続けるためには、使命が果たされるまでずっと、彼を支えていけるよう考え続け、苦難や悪意に侵害されないようにしなければならない。
使命。
終末戦争が終結するまで。
それは決して陰魔の殲滅を意味しない。
魔王と魔神を殺し、陰魔を滅ぼしたとしても、戦争が終わらなければ何の意味もない。
例えば、魔神を殺したとしても世界のどこかですぐに復活するかもしれないし、新しい魔神が生まれるかもしれない。自分たちの都合のいいように考えてはいけない。現実では、ありとあらゆることが起こり得るのだから。
始まりは、5000年前。
5000年前、光の女神様は人類を滅びから救うために地上に介入した。
この世界の神様は陰魔の根絶よりも人類存続の方に主眼を置いている。
だから、もし魔神が目覚めなければ。陰魔が絶滅寸前まで人類を追い詰めなければ、きっと女神様は現れなかっただろう。
聖術がもたらされ、勇者が生まれたのも、恐らくは人類の絶滅を回避する為だ。それが最優先。天敵の殲滅ではなく。
多分、女神様は魔神や陰魔の存在を許せないからではなく、人間が陰魔に生存を脅かされたから力を与えた。
天使の僕を地上に遣わせたのも、その手段の一つでしかない。
勇者の力となるために。
勇者が戦わなければ絶滅してしまうから、仕方なく。
そう、仕方なく。
5000年前、光の女神様が介入しなければ、本当の本当にこの星の人類は絶滅していたのだろう。
言葉通り、完全に。人間が一人残らず殺されてしまっていた。
とても仕方のない話。
それが現実。
決して覆せない一つの過去。どうしようもない事実なのだと思う。
だからこそ、女神様がこの世に現れた。
この世界は神様が存在する世界だ。
それが前提。
神様が存在しなかった場合、この世界は滅びてしまっていた。もしかしたら、最後まで神様が現れずに、本当に人類が滅びてしまった歴史も存在しているのかもしれない。
そういうイフの世界を想像できる。
どうしようもなく、神様が存在しているからこそ、この世界が存在できている。
だから、ここで神様の実在について論じるのはナンセンスだ。
陰魔に対する戦略を含む、言葉通りの神政についての是非と、人間が本来持っている自由と権利についても。
きっと女神様に救われた時点で、人は何か大事なものを譲渡してしまったのだろう。
(※そもそも、あの歴史には欺瞞を感じる。魔力氾濫や魔性進化、天魔戦争、そして魔神復活の全てについて、人類側の関与や過失が一切記述されていない。何もかもが外的要因のせいで、私たちは何も悪くないと言わんばかりに。人間に全く非がないなんて、本当にそんなことがありえただろうか?)
(※もしこの星を救った神が悪神や邪神であれば、世界は現状とはかけ離れた地獄になっていただろう。しかし現状、そうなってはいない。僕から見て、光の女神様はとても善良な神様だ。その幸運を喜ぼう。心から)
前提。
その上で、ひたすら考えろ。
思い出せ。
光の女神様は、魔王や魔神を倒せと言っていたか?
言っていない。
それどころか『魔王』や『魔神』という言葉すら発していなかった。ルールで具体的なことが言えなかったとしても(※※そもそも、誰と決めたルールなのか――)。
ただ『天使の使命は終末戦争が終結するまで勇者を支え続けることです』と。
戦争の終結。
それの意味するところは何か。
――まさか、本当に?
だから、僕なのか?
女神様の代理である天使が地上に堕ちた魔神と対面し、なにがしかの結論に至る…。
まるで何かの神話のように…。
駄目だ、早とちりをして決めつけるな。
あらゆる未来を想定しろ。あらゆる事態を。
考えろ。考え続けるんだ。
魔族や龍族といった他の天敵、魔法という奇跡のような力、魔神の真実。ありとあらゆる要素を考慮に入れ、現実的な終着点を探らなければならない。
きっと、それが僕の隠された使命だから。
そして、それはきっと、エディ君とハッピーエンドを迎える為の絶対条件だ。
――でも。それでも。今だけは、ずっと未来のハッピーエンドより大事なものがある。
それはきっと2度と手に入らない、かけがえのない宝物になる。
1年と9ヵ月。
喜んでくれたらいいな。




