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私の中の私  作者: 胡蝶蘭
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振り向くと、小さい花束と手提げ袋を持った大きい人が優しい微笑みで私を見下ろしていた。

その人は私が泣いている事なんか目に止まらないかのように、私の隣にしゃがみお地蔵さまの頭に付いている汚れを落とす。

花を新しいものに変え、御供え物も新しいものへ変える。


「・・・ねぇ、この地蔵さ、なんでここにあるか気にならない?」


お互いに見つめ合う。改めてしっかり見るととても綺麗なお姉さんだった。目は大きく、鼻筋は通ってて、笑うとさらに綺麗な顔をしていた。モデルになっていても可笑しくない程、全身が全て綺麗に思える。


「・・・なんでか知ってる?」

ふと覗きこまれながら笑うお姉さん。

その綺麗さに顔が火照ってしまう。

「・・・・な、なんでかわかりません。」

顔をそらしながら言う。目が泳いでしまう。

「・・・この地蔵はね、追いやられたんだよ。」

追いやられた?ばっとお姉さんの方を向く。

「お地蔵さまって追いやられてしまうものなんですか?」

驚きながら言う私を見て、お姉さんは悲しそうな表情をしながら言う。

「だって可笑しいと思わない?地蔵ってさ、人を見守る為にあるんだよ?それなのに、こんな人も通らない所にいてさ・・・。

なんだか、私にはこの地蔵がいつも笑ってるから、辛いことも苦しいときもいつも笑ってるから。それを見た人が嫌になって追いやったんじゃないかと思って仕方ないんだよ。」

いつも笑ってるから・・・。

そんな理由でお地蔵さまを追いやっていいものだろうか。

塞ぎ混むようにして考える私を、お姉さんはじっと見つめ、お地蔵さまに目をやりながら話続ける。

「・・・でもさ、地蔵はそんなこと屁でもないような顔をして笑ってるじゃない?例えそれが作り笑いだっとしても、私はすごく助かったんだよ。」

辛そうな表情しながらお地蔵さまを撫でる。

今にも泣いてしまうんじゃないかと思う程、とても辛そうに見えた。

「お姉さんでも、辛いことあるんですか?」

ゆっくりをこっちを向き、悲しそうに笑いながら、それでも、辛い涙を我慢しているかのように震えた声で一言言った。

「・・たくさん・・・たくさん・・あったんだよ・・・」

そういって、またお地蔵さまを撫でる。

その横顔はお地蔵さまが、どれ程お姉さんを救ったのかわかるくらい、愛しい表情で見つめていた。私もお姉さんにつられてお地蔵さまを見つめる。その顔はやはり穏やかな表情で笑うお地蔵さまだった。しばらくお姉さんの横で時間も忘れ見つめていた。すると遠くの方でチャイムが聞こえ始める。


「・・・・あ!学校!!」

そうだ!学校!

今の今まで忘れてた!なんで忘れてたんだろう!今まで無欠席、無遅刻できてたのに!早く行かないと遅刻しちゃう!急いで荷物を持ち立ち去ろうとする私にお姉さんが引き留める。


「あ、まって!学校?どこの学校に通ってるの?」早くしないといけないのに、呑気に話すお姉さんに苛立ちを覚えながらいう。

「えっ?こ、この大通りを真っ直ぐいたところにある・・・「あぁ!その学校?今からいくところだったんだよね!案内してよ!その制服ってやっぱりそうだったんだね!見覚えあるはずなのにわかんなかったけど、今わかった!そっかーそこの学生さんかぁ!」

「・・・はい?」

何をいってるんだろうこのお姉さんは。

拍子抜けている私にお姉さんは微笑む。

「今日から赴任することになった、大原優美子っていうの。宜しくね!道案内よろしくね!お嬢さん!」

「ええ!・・・あっそういえば、今日から先生が1人見えるて言ってたような・・・」

この前の全校集会で紹介があった。その先生かな?でも、確か女性とはいってなかったような気がするけど、どうみても今のお姉さんは女性の格好ぽいけど・・・名前も女性だし・・・。

と、悶々としている私を見つめ、微笑むお姉さん。

「お嬢さん大丈夫?道案内いいかな?」

ふと顔を覗きこまれ聞いてくる。

「お嬢さんではないです!私の名前は如月果夏です!」

「そう!果夏ちゃんっていうの!かわいい名前だね。」

神々しい笑顔を向けられなにもいえない私をよそに、裏道を引き返して先に進む。

「あ、待ってくださいよ!」

後に続いて急いで着いていった。

急いでいこうとする私を制止させながら、お姉さんもとい、先生と話す。こうやって話していても辛いことがあったなんて思いもしないほど幸せそうに見えた。


先生を案内しながら、ふと考える。

先生が言っていた辛いこととはいったいどういこう事なのだろうか。

想像を絶する辛さだったのだろうか。

それはどんな辛さだったのだろうか。

と。想像をする。

私にはまだ分からない辛さなのだろうけど、それを経験した先生はどうやって乗り越えたんだろうか?やはりあのお地蔵さまが関係あるのだろうか。


ふと気がつくといつの間にか涙は止まっていた。

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