【第2話】魅惑の塔
本部にて__
「ごめん待った?」
ジェットの前に現れたのは身体に立派な尾がついて、
顔がトカゲの男だった。種族「リザードマン」だ。
これが友人アイオスだ。
GENESISでは容姿を好きなように選べる。髪型だって、性別だって自由に可能だ。
ただ、変えられないものは声だけだ。
だから、男性が女性のアバターを作ったとしても声で直ぐにバレてしまう。これは、なりすまし防止の為の対策として導入された。
ちなみにジェットの容姿は「ヒューマン」だ。
「待たされましたよ。もぅ何時間待ったことか...。」
「嘘つけ。行くって言ってから15分位しか経ってないじゃん。」
「そうだっけ?まぁ、そんなことよりもTreasureの成果はどうだったん?」
「んー...」
アイオスは自身のスクリーンを何度かフリックした。
「お!見つけてんじゃん!へー。これがシザーハンドなんだ」
「へへ。これで見つけたレアアイテムは3つ目!なかなか居なくない?3つも持ってるやつ。」
ニヤケながらそう自慢するアイオスの顔は憎たらしかった。
「いいよな。俺なんて1つしか持ってねーよ。しかも、まぐれで手に入れたヤツ。」
「いいじゃん。まぐれでも手に入ったんだから。」
まぁな。とジェットは返し、本題へと切り出した。
「なぁ。そろそろ【魅惑の塔】に向かうか。」
【魅惑の塔】それは、
GENESISが一般的に使用可能になってから数年後。
とあるダンジョンにて未知の塔が発見された。
それは、最初から用意されていたものなのか突如現れたものなのかも詳細が分かっていない謎の塔。
運営に問い合わせても記憶にない。と言われ、
GENESISのプレイヤー達の間では一時話題となった。
塔を攻略したものには唯一無二のユニークアイテムが手に入るとも噂されていた。
プレイヤー間で「魅惑の塔」と呼ばれるようになったこのダンジョン。
だが、攻略難易度が高いため、塔が発見されてから数年経った今でも誰一人として攻略したものはいなかった。
塔に入った者は二度と出てこられない。つまり、攻略するか死亡し新しくアカウントを作り直すか。この2択に迫られる。
GENESISはリアルタイムで進行し、セーブ機能が無いため、途中で放置(現実に戻る)すれば、モンスターに殺されるって訳だ。
死ねば、アカウントの削除。つまり持っているアイテムや称号も全てパーになる。そんなリスクを背負って塔に挑むヤツは変わったモノ好きくらいしか居ないだろう。
いつしか、塔には誰も近寄らなくなり
攻略を目指すものは世界でも数少なくなった。
ジェットとアイオスはその塔。「魅惑の塔」に挑むというのだ。
「行くかー。意外と噂されてるよりも簡単だったりして?」
「でも、噂通りかもしれないな。現に攻略者0。まぁ、その為に経験を積んだんだろ。」
GENESISにステータスは存在しない。
必要なのは経験によるプレイヤースキルのみとなっている。
ジェットは「HUNTER」で鍛え上げた自身の戦闘スキルを。
アイオスは「Treasure」で鍛え上げた自身の直感とサバイバル能力を。
それぞれの個性を生かし、「魅惑の塔」へと挑戦しようとしていた。
「じゃぁ行きますか!」
「はいよー」
「「GENESIS。塔まで移動してくれ。」」