【第1話】討伐依頼
ジェットの視界が一瞬暗闇に包まれ、次に目に入ったのはそこら中で火山が噴火し、ドロドロとマグマが流れる火山地帯だった。
一瞬で望んだ場所に移動できる。これもGENESISならではの可能な事だ。
「確か、ヴァニッシャーの好物は生肉だったな。」
ジェットの目の前に半透明のスクリーンが映し出されると
それを何度か指でフリックする。アイテムボックスと書かれた欄でフリックを止め、「ビビゼラの生肉」と書かれているものを押した。するとスクリーンに生肉が映し出され、ジェットはスクリーンに向かって手を伸ばした。
そして、スクリーンに映し出されている生肉を掴むとそのまま伸ばした手を元に戻す。その手には先程映し出されていた生肉が握れており、それをジェットは地面に向かってポンッと投げ捨てた。
手で握れるサイズだった生肉は地面に着くと同時に1メートルくらいにまで膨れ上がった。
「よし。準備完了っと。後はエサにおびき出されてくれれば...。」
ドバッ
置いた生肉の真下の地面が勢いよく盛り上がった。
「早いな!かかってくれた!」
地面から勢いよく飛び出したそれは大きく口をあけ、鋭い歯で生肉に勢いよくかぶりついた。大きな魚のような生物だ。
コイツがヴァニッシャー。
マグマの中を泳ぎ回り、その性格は凶暴。ゆえに生態系を破壊しかねないとの事でよく討伐依頼が来る。
ジェットは慣れた手つきで先程と同じようにスクリーンをタッチすると
右手に西洋の剣【ロングソード】が出現した。
剣を握りしめ、ヴァニッシャー目掛け横一線。
ザクッという音と共にヴァニッシャーは半分に割れ、粒子となって消えた。
「よし。これで依頼は達成っと。」
これで何度目のヴァニッシャー討伐だろう。
でも、意外と高く付くんだよな。この依頼。そんな事を考えながら
ジェットはスクリーンを確認する。
ヴァニッシャー1体の討伐依頼達成の文字が確認できた。
達成報酬1050gem(GENESIS内通貨)が所持金に追加された。
これだから、【HUNTER】は辞められない。
ジェットによって軽々しく倒されたヴァニッシャーだが、危険度MAX10の内、ヴァニッシャーは危険度5に値する。これは、手馴れたHUNTERでなければ苦戦もしくは敗北してしまうレベルだ。
「GENESIS。本部に戻してくれ。」
『かしこまりました。ジェット様の転送を開始します。』
本部。それはGENESIS内での街のようなもの。
そこを拠点として世界中の人々が集まる。
GENESISは自動和訳ツールを導入している為、世界中のどんな人とでも気軽に会話出来るようになっている。
「GENESIS。アイオスは今、どこにいる?」
『検索結果。アイオス様は現在「死海の果て」にいらっしゃいます。』
「はぁ...。あいつ何やってんだよ。アイオスに繋いでくれ。」
『かしこまりました。アイオス様にお繋ぎ致します。』
「あー。もしもし?」
「もしもーし!ジェット。今取り込んででさ!」
野太い声がジェットの通話に答えた。
「またTreasure行ってるんだろ」
【Treasure】これもGENESISでの職業の1つだ。
簡単に言うと宝探し。数あるダンジョンを巡り、隠されたレアアイテムを見つける事を生業としてる。
「だって、"シザーハンド"があるって噂されてたからー」
「そんなの別にいいからさ!今日こそクリア目指すんだろ?」
「あ、そうだった!忘れてたよ。今帰る!」
「早くしろよー?」