《11》下校路で起きた修羅場は簡単には収集がつかないんだが?!
皆さんこんにちは!
当作品を開いていただきありがとうございます!
当作品もこれを持ちまして第11話となります。二桁台になってもなお、前に進めないのは己の未熟さだと思っておりますが、どうぞこの新参作家にお付き合いください。
「チェックメイト。」
「負けた…。」
激戦を極めた戦争が王の死をもってその幕を下ろした。勝ったのは京極咲響だった。ゲームは終始高速戦。まさに姫宮夏希が予測した通りの展開を見せ、藤堂照史は得意戦術のスキュアなどを発動出来ず展開力で押し負けてしまった。
「これで7戦4勝3敗で俺の勝ち越しだね。」
「またやってくださいね。」
「そう遠くないうちに来るよ。」
その時、鐘がなった。最終下校時間30分前告げる鐘だ。外の部活も打ち切るように練習をやめて片付けを始める。白熱した戦い余韻を残し、祭りの後のような雰囲気のこの部活もそれぞれの駒を片付けをして、今日のミーティング、連絡事項と締めの挨拶をする。外はもう街灯なしではほとんど見えないほど、夜は間近に迫っていた。
「帰ろうか。暗いし、今週も一緒でいいよな?」
「うん。」
とりあえずスマホを点けて時間をみる。18:15。たしかにこんな時間ではもう暗いわけだ。同時にRINEの通知が10件ほど来ていたので開く。正直、昼間のこと以来、開きたくはなかったのだが、重要な連絡が来ていれば無視はできない。相手は相澤杏果と新島真美だった。
なんでお前らなん…。もうすでに嫌な予感しかしない。
億劫になりながらもまずは杏果の方から開く。
《ドコニイルノ?》17:00
《部室だよね?》17:30
《部活まだ終わらないの?》18:00
《人が集まっているってことは終わったよね?》18:00
《終わっているんでしょ?二人で一緒に帰ろ?》18:05
《終ワッタンデショ?カエルヨ?》18:10
怖っ。見てるの?見てるよね?えぇ…すげー監視されているんですけど?まぁいいとりあえず真美はと…。
《あたし、部活終わって正門にいるんだけどアキがいつも一人で帰ってるんだったら久しぶりに一緒に帰ってもいいのよ?》17:45
《ねぇ、さっきからアキのクラスの委員長がいるんだけど昼間の人ってコノヒト?》18:00
《ハヤクキテ、聞カナキャイケナイコトガアルノ》18:05
だめだこれ…。なんでこのタイミングでブッキングしてくれてんの?マジでどうしろってんだい…。今正門に行ったら間違いなく収集つかないことになる……。裏門から行こう。そうしよう。そうだ!とりあえず状況把握しとこ。靴も持ち出すことも考えないと。
部室から出て窓の下側の壁に張り付き、ソッと正門の方を伺がう。光を失った四つの宝石が、もとい、目のハイライトをなくした二人がこっちを見ていた。さらに言うとバッチリ目があった。すっと二人が下を向いたかと思うとすぐにスマホが振動した。
《《ハヤクコイ》》18:15
あはは〜…わーい、仲良し〜…。きっと二人は気があうなぁ……。あって欲しくないなぁ……。はぁ……。絶望。
「どうしたの〜?」
「んー?ちょっと人生の絶望を感じてね……。………一緒に帰ろって言った手前悪いんだけど、女子二人ほど増えそうなんだけど構わん?」
「いいよ〜。多い方が楽しそうだし〜。」
ごめん。ごめんなさい。楽しくはないと思います。なんなら地獄旅行に巻き込んだ挙句、利用しようとしています。許してくださいなんでもしますから。
これから起こりうる自体を想像するだけで自分の下衆さに失望し、土下座したい気持ちになった。階段がまるで地獄へ降りる通路に思えた。下に行くに従って電気も消されており本格的に地獄の体をなしていた。昇降口で靴を履き替え、当番で鍵を返しに行っていた姫宮を待つ。靴を履き替えるのを見届けてから一緒に正門へ。二人は正に寺院にある仁王のように左右に立っていた。
「藤堂くん!!」
「アキ!」
二人が同時に左右の腕に飛びついてきた。
「「ん!?」」
お互いの動きにお互いに驚いていた。それはそうだわな。少なからず真美の方はやっぱりと言う意味が込められてそうだけど…。
「「ねぇ?この人は?!」」
本当に仲がいいなぁ〜…。この後が怖いなぁ。何故だろうこの後のことを想像していると胃がキリキリと痛む。
「あー、なんだ。相…んんっ、杏果、こっちが幼馴染の新島真美だ。逆にこの人はうちの委員長、相澤杏果だ。その、仲良くしてくれ?」
「ふーん、どーもはじめまして新島です。アキの『幼馴染』です。」
「これはこれはー、はじめましてぇ、相澤杏果と申しますぅ。彼のクラスの委員長で随分よくしていただいてますぅ。」
幼馴染を強調しつつ、つっけんどんと突き放すような真美に対して媚を売るような外行きの猫を被る杏果。二人とも笑顔ではあるんだが、何故か後ろに龍と虎がいる。しかも臨戦態勢。身を盾にして二人がぶつからないようにする。
「「で?この人とどう言う関係なの?!」」
もうほんっと仲良い…。泣きたい…泣きたいよ。
「どう言う関係って言われても杏果はクラスメイトだ、しっ?!…真美は幼馴染ってだけだか、らっ?!」
杏果に脇腹を思いっきりつねりあげられ、真美には右手を握りつぶされかける。昼間ほどじゃないにしても痛いものは痛い。ところで姫宮?そろそろなんか言って欲しいんだが?そう思ってちょっと後ろにいる秘策に目配せをする。二人が姫宮に気づいたようだ。
「えーっと、藤堂くん大変そ〜だね〜。うん。仲のいい人がいるっていいと思うよ〜…。」
二人の圧に押されてか、どことなく顔が引きつって、語尾が消えそうになってはいるが、とりあえず口を開かせることはできた。彼女のポワポワの声は女子にも効果あるはずだ。これで状況は打開できるのは間違いない。ひとまずの余裕があるから後は考えながら帰ろう。
「さて、帰るよ。ほら、二人とも歩きにくいから離してくれない?」
がくんと引っ張られた。What’s?
「「ねぇ、この人説明して貰ってないんだけど?」」
やだぁ、状況が悪化したぁ…。さらに力くわえてきたぁ…。
多分杏果は同じクラスだから「なんでここにいるのか?」という意味で真美の方は「この人が誰でどんな人か?」という意味だろう。
「はじめまして〜といっても相澤さんは違うよね〜。姫宮夏希です〜。同じ部活で月曜日はいつも一緒に帰ってます〜。」
本人に説明させてしまった。申し訳ない。
とりあえず、帰路につく。こんなにも歩きにくいとどうして人間が歩くときに腕を振るのかわかる気がする。周りから見れば両手に華、ルックスだけでみたら少し劣る姫宮が控えめについてきているようにしか見えないだろう。蛇に睨まれた蛙というよりも、どちらかというと二匹の蛇に巻かれている蛙のような気分で学校前の道を歩く。周りの生徒、主に男子からの目線がヘッドショットをかましてくる。今日だけでどれぐらいこの視線をぶつけられたのだろう。
ギャルゲーにしろラノベの主人公にしろ、とんでもなく鈍感だったり難聴だったりすることが多く、大半の読者諸君をモヤモヤさせることが多いと思うがそれは間違いで、正しくはその逆だ。鈍くねぇと身がもたないってやつだ。俺がこの身をもって証明する。
それでも、なおも続く羨望と怒り、嫉み、妬み、憎しみ、ありとあらゆる弾丸に撃ち抜かれ、羞恥心に耐えきれなくなって今すぐに走って逃げ出したい衝動に体は動けずとも、心はすでに音速よりも速く走り出し、国境を越えていった。無感情の境地にたどり着いた気分でもうなにも考えたくなくなっていた。
「ねぇ藤堂くん?いつも一緒に帰っているってどういうこと?」
「いやー、そのままの意味ですよー。」
「そういう意味じゃないに決まってんじゃん!どうして帰ってるかってことよ!バカ!」
「まぁこの時間じゃもう暗いしな。そんな中を女の子を一人で歩かせるのって危ないし、俺もいつも一人だったから駅まで送っていたんだ。」
「ふーん。あたしはいつも一人だったから今度からアキに送ってもらうわ。」
「嘘つくなよ。月曜は普通に部活らしいし、いつも誰かと歩いているの見ていだだだだだ!」
「何か文句あんの?私はいつも一人なの?わかるでしょ?」
「はい…。」
絶対嘘だ。むしろ中心的存在であるのことも間違いない。でもそんなことは絶対言わない。言ったら間違いなく右腕をスクラップされる。左側では今日なぜか部活が休みなはずで、本来いるはずがなかった手芸部の杏果がむくれたような表情でこっちをみていた。
「そーいえば〜、手芸部は今日ないよね〜。相澤さんはどうしているの〜?」
いい質問だ。俺が切り出していたらどうなるかは分からなかったので彼女が代弁してくれたことはとてもありがたい。
「そう。今日は確かにないんだけど……その…藤堂くんと…一緒に…いたかったから……。」
「…そうか……。」
乙女かよ。可愛いなぁ。しかし真実もすこし黙ってしまって、微妙な空気になった。しまった。ここは偉大な偉人たちに倣って「え?なんて?」と返しておけば「なんでもない!」って怒られて笑い話に出来たのに…失敗したな。
「それと、ゴールデンウィークのお泊りお出かけ予定を決めたかったから…」
「ネェ?ドウイウコト?アキ?」
爆弾おとしてくれたな!おい!やっぱり先人に倣わなくてよかったわ!無駄なことは言わんでくれ!!せっかく大人しくなってた真実が再燃してきたよ!なに?狙ってるの?あーもう!せっかくうまく行きそうだったのに!また真実が壊れた!
「いや、この間会った時に成り行きで…。」
「フーン、ネェアキ?アナタ、少シ流サレスギジャン?今マデモ、コレカラモ、アナタノ隣ハアタシダケナノヨ?自覚ハアルノ?」
右から全てを焼き尽くすような火の手が上がる。
「いや、その…これは!」
「藤堂クン?私ヲ好キニシテイイノハ藤堂クンダケナンダヨ?ナラ貴方ヲ好キニシテイイノハ私ダケッテ決ッテイルノ?ドウシテコノ人が隣ニイヨウトスルノカナ?」
左からはありとあらゆるものを凍てつかせる吹雪が吹き荒れる。
あーぁ、始まったよ…。最も恐れていたことが…。
「アラ?ナカナカナ事ヲイッテクレルジャン?大シタ時間一緒ニ居タ訳ジャナイノニ…」
「貴女モネ?何年モイテ振リ向イテモラエナカッタンダカラ、大人シク私ニ譲ッテクレナイカシラ?」
「二人とも、落ち着くんだ!」
「「ダマッテテ!!」」
思った以上に簡単には止められそうにない事態になってしまった。二人ともこっちの声が聞こえていない!
「新島サン?別ニ貴女ニハ他イイ人ガイルデショウ?ドウシテ彼ニ執着スルノ?ソノ胸デ別ノ男モ誘惑シテイルンデショウ?」
「アラ委員長サン?化ケノ皮ガ剥ガレソウヨ?私ガ誰ニデモコンナ事スル筈ナイジャナイ。アキダケヨ?コンナコトスルノ。ネェ?アキ」
「ドウダカ?口デハナントデモ言エルワ。」
「頼む!やめてくれ!」
いたたまれなくなって叫ぶように二人を止める。
「「アナタハドッチノ味方?」」
「どちらでもない!」
「ドウシテ私ト言ワナイノ?!」
「ドウシテアタシト言ワナイノ?!」
ぐっ、本格的に収集がつかなくなってきた。どうしたものか。
その時ボドゲ部の天使が戦場に躍り出た。ふと見えたその横顔は目を見開き奥歯が見えるような不敵な笑みを見せ、とても天使とは言えない表情をしていた。しかし振り向きこちらを向いた時にはいつもの表情に戻っていた。今の表情の意味は?そのことが一瞬よぎった。天使の笑顔の奥の目が強く紫にギラッと一閃した。
「二人とも、藤堂くんが困ってるじゃない。そこまでにしておいたら?後々のために、ね?」
重く、裏の意味を孕むような言葉だった。しかし効果はあったようで腑に落ちない表情をしながらも二人はゴスゴスと引き下がった。彼女の方を見て「助かったありがとう。姫宮。」と目で告げた。彼女も理解したようでにこりっと笑って手をヒラヒラ〜と振ってくれた。予想外な形ではあったけど彼女を連れてきて正解だった。
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