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消えた風の後継者

作者: 高坂幸緒

以前にサクッと書いた現在連載してる作品のバックボーンみたいな代物。

女魔術師とその夫となる青年のお話、ダイジェスト。


昔々、水の国の王女様と風の国の王子様がお互いに

恋に落ちました。

しかし古くから神様との契約の証である聖痕を持つ者同士は

結婚してはならないという戒めがあるせいで二人は

引き裂かれることとなりました。

お互いに愛し合っていたのに周囲の人間は結婚を許してくれません。

二人はそれぞれ自国の貴族から、婚約者を宛がわれて…

定められた婚約者と結婚しなければいけなくなりました。

けれどどうしても諦めることが出来なかった風の王子は、王女様の結婚式の前夜…その寝所に忍び込みました。


「どうしても貴方を忘れることは出来ない。私と共に逃げてくれ」


その言葉に王女様は内心、とても喜びました。

自らの身に神が定めた契約の証がないのならば…愛する人と

一緒に手を取って、駆け落ちしたいのが彼女の本心でした。


「ラキニス様…貴方のお言葉、とても嬉しく思います。けれど…私も貴方も、聖王族であり…果たさなければならぬ務めがある身。自国の民や臣下を捨ててまで…責務を捨ててまでは貴方の手を取れません…」


本心では、愛する人の手を取りたかった王女。

しかし最後に勝ったのは王家の者としての誇りでした。


「リーザロア…どうしても、ダメなのか…」


「ただの女であったなら…私は貴方と、共に生きたかった…けれど、ダメなのです。家族も臣下も、民を…私を愛してくれた全ての者を

捨ててまでは…貴方と共に行くことはどうしてもダメなのです…」


ハラハラ、と涙を流しながら王女は…愛する人の申し出を断りました。


「…そうだな、私も…風の国の家族や、臣下…民を捨ててまで…君一人を選ぶことに迷いはあった。けれど…どうしても、諦めきれなくて…今夜、来た。君を忘れることはどうしても出来なかったから…」


「私も同じ想いです…ラキニス様。けれどどうか一度だけ…思い出を下さい。一度だけでも貴方と愛し合った思い出があれば…私はこの先、それを頼りに生きていけるから…」


「…判った。今夜だけは…貴方を愛することを許してくれ…。明日からは、貴方は他の人間の妻になろうとも…今夜だけは、私の妻であってくれ…」


「はい…」


泣きながら王子と王女は、一夜の思い出として抱き合いました。

明日には彼女は、別の男の妻となる。

その残酷な事実が、二人の胸に…強い痛みをもたらします。

お互いに王族としての責務を果たすことを選び、他の人間を

伴侶にして離別することを選んだ二人。


―けれど運命の皮肉が、それから十カ月後…結晶となって襲いかかります。


結婚後すぐ、王女は懐妊しました。

周囲の人間は祝福し、喜びましたが…王女はどこか浮かない顔をしてました。

そして双子の王子が生まれた時、その祝福は…嘆きと、怨嗟に変わりました。


―王女が生んだ二人の王子。片方には水の国の王位継承者の証である水の聖痕が。そしてもう一人の王子には、風の聖痕が刻まれていました。


同じ母、同じ日に生まれながら…その双子は異なる父を持って生を受けました。

水の国の王子として生まれながら、風の国の王位継承者の証である聖痕を持って生まれた王子は、シャルダンと名付けられて。

―苦難に満ちた人生をその後、歩むことになりました


シャルダンは、水の国内では忌むべき者として扱われて育ちました。

周囲の人間は、彼が風の国の王位継承者である事実を

明るみにするのを決して許そうとはしませんでした。

冷たい視線を受けながら、同じ日に生まれたもう一人の王子、

シャルグと比較されて彼は育ちました。

シャルグはシャルダンが、実権を握ることを何より恐れました。

追放の意味を持って、遠くの国の魔術学園に入学させられたシャルダン。

其処で彼は…封印された魔術師、カシア=リフェンの存在を知ります。


大地の女神を複製して生を受けた女性と、炎の神グラフェイルとの

間に生まれた黒い髪に赤い瞳を持った、絶世の美女でした。

一つの国を滅ぼした罪状で、雁字搦めに封印を施されていて。

魔術学院の奥深くに、閉じ込められていました。

―強大な魔力を持つと言われる魔術師を従えれば、大きな力を得る事になる…

抑圧された環境で育ったシャルダンは、力を得る為に魔術学園の奥深くに封印されていたカシア=リフェンと接触し、彼女を自らの配下にしようとします。

最初の目的は、自分を蔑んだ周囲の人間達への復讐の想いからでした。

―僕は、母と自分を蔑んだ人間に復讐をしたい。その力を貸してくれ…


―バカバカしい、そんな事をして何になる。そんな下らない事を果たすために私の封印を解いたというのか…この若造が…!


―下らない事とはなんだ! 僕は真剣だ!


―はははは、復讐何ぞしたって何にもならんぞ。それよりも私と一緒に、この学園から逃げることを考えた方が良いぞ。私の封印を解いたことで、そなたも恐らく…タダでは済まないだろうからな…


―元より承知の上だ。力を求めるという事はリスクと隣り合わせだからな…


彼女をどうにか目覚めさせて、説得をしようとしますが…笑い飛ばされます。

それより、彼女は周りの人間になぞ縛られなくて良いように、遠くに逃げようと提案します。最初は抵抗したシャルダンでしたが、彼女が言い放ったこの言葉に動かれました。


―自分を否定する人間に囲まれて、そいつらを認めさせようとして何になる。そんな奴らに囲まれたって息苦しいだけだ。それなら自由になった方が良い


長年封印されて閉じ込められながら、なおも平然とそう言い放って外に出ようとする彼女の強さにシャルダンは惹かれました。


「君は、強いんだね…。僕には、そんな風にあっさり言える君の強さが羨ましい。判ったよ、君と行こう…」


承諾し、彼女の手を取って…学園を後にして、二人は旅に出ます。

そして長年、一緒に旅をして過ごすうちに二人の間に愛が

芽生えていきました。


数年が経過した後、二人は結婚することとなり…シャルダンは一通だけ、自分が結婚したことを母であるリーザロアに報告する手紙を書きます。

母はそれを祝福し、喜びましたが…その母の手紙を覗き見た、シャルグは…その結婚相手がカシア=リフェンであることに恐れを抱き、お忍びで二人の元に訪れます。


―そしてシャルグは、カシア=リフェンに一目惚れをしてしまいます


彼女をどうしても欲しいと思ったシャルグは、他の聖王族の協力を仰ぎ…二人を捕獲して、引き離す計画を実行に移しました。

多くの追手に追われるようになったシャルダンとカシア。

カシア=リフェン本人と、その魔力がどうしても欲しいシャルグは、執拗に二人に追手を出し続けました。

二人は休む間もなく襲撃され続ける日々に疲れ果ててしまいます。

そしてついに、カシアは…自らの体力が限界だと自覚した時、最後の手段に出ます。


異界の扉を開き、追手が追う事が出来ない遠くに逃げることを選んだのです。


―二人は異界の扉を開き、別の世界に旅立ちます。

そしてその日から、風の王家では…決して、風の聖痕を宿した者は生まれなくなってしまったのです。

風の国では、系譜に風の聖痕を持って生まれた最後の王子の名前はラキニスと刻まれていて。

ありとあらゆる手を使って、その後継者を生み出そうと試みましたが…その宿願は果たされることなく徒労に終わりました。

風の神、ガラフェイアの魂のカケラを用いて、神の分身たる翠の髪の乙女を生み出しても…その少女にすら、風の聖痕は宿ることはありませんでした。

長い年月が過ぎた頃。消えた王子、シャルダンは後世の、詩人達にこう呼ばれることになりました。


―最後の風の後継者、碧の疾風…と。


作者が設定忘れない為に書いた感じです。

タイトルは、昔好きだったアドベンチャーゲームにちなんだ感じ。

ファミコン探偵倶楽部、大好きだったんで。


以前友人に見せたものを若干、加筆修正して掲載しました。


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