旅立ち
空は生憎の曇り空
俺たちが歩いてる道は剥き出しの地面で風が吹くたびに砂埃が舞う
俺が操っている馬車はどちらかと言うと荷車って見た目だが俺たちの旅が始まったばかりだと考えれば焦る必要はない
俺のいた村では18で独り立ちするらしく〈思考〉のスキルを貰った俺は商人を目指すことにした
今馬車には村を出るときに餞別として貰った数日分の食料と2年前に産まれた馬車を牽引するための馬がセットされている
初めに俺たちと言ったとおり今道を歩いてるのは俺だけじゃない
馬車に腰掛けて座っているのは俺と一緒に独り立ちすることになったギルで俺が商人になると決めたときに便乗して旅立つ事にしたらしい
ギルの両親は鍛冶屋らしく村を出るときには餞別として金属で補強された木盾と片手で扱うにしては少し大きい片手剣を貰っていた
ここで言っておきたいのは俺が使うにしては少し大きいってだけで、体格のいいギルにはお似合いの武器だ
それとこの旅に同行している者がもう一人いて名前はレド
レドは身寄りがなくて歳は15で俺たちの中じゃ最年少だ
今までは村の善意と自給自足で生活を賄ってきたがそれももう限界らしく、旅に同行する事を頼み込まれたので了承したのだ
旅立ちの送迎も俺とギルは家族が見送りに来てくれたがレドを見送りに来たのは小柄な女の子1人だけだった
荷物もそのとき来てくれた女の子が餞別にくれた木彫りのお守りと自前の保存食、親の形見らしい短刀だけだ
レドは女の子のくれたお守りが嬉しいのか首から下げた飾り羽の映える木像をしきりに触れている
俺はレドと女の子の関係を話の種にレドに話しかける
「ご機嫌だな、送迎に来てくれた女の子とは仲がいいのかい?」
「そう言うわけじゃ、ただの幼馴染ですよ」
レドはからかわれたと思ったのか少しムキになって訂正してくる
「その割にはそいつが気になってしょうがないみたいじゃないか」
俺はレドがさっきからいじっているお守りの事を指摘するとレド自身も気づいてなかったのか慌てて服の中にしまった
「別に、これは、そんなんじゃ」
たじたじなレドにあんまりいじめるのも可哀想かとも思い俺は話を変える事にした
「レドは街に着いたらどうするんだ?」
「とりあえず飯代だけでも稼がないといけないんで紹介して貰った薬師の所を訪ねようかと」
「へぇ、レドにそんなつてがあるとはね。」
「いえ、この前きた行商人にもうすぐ旅立つ事を言ったら教えてくれたんです 。人手が足りないみたいで」
出発前に自力で仕事先まで決めていたのか、すごいな
ついでにギルにも街に着いたらどうするのか聞いてみるか
「ギルは何かあてがあるのか?」
馬車に腰掛けながらも何気なくこちらの会話を聞いていたギルに問いかける
「あぁ俺か?山の狩小屋に盗賊が住み着いたときがあったろ、そんときに村長が雇った傭兵と知り合ってな。そいつらに会いに行こうと思う」
「へぇ、その傭兵の居場所はわかるのかい?」
「さぁな」
ギルは随分行き当たりばったりだな、まぁ手さぐり状態の俺が言えることじゃあないか
こうしてみると最年少のレドが1番しっかりしてそうだな