第6話 ある出来事
ちょっとはやめに投稿ですね。現実は忙しいもので...第6話お楽しみください。
今日は50層に行くために中ボスを倒しに行くことになった勇者一行は洞窟を進んでいた。昨日組んだ班で固まり前衛の班、中衛の班、後衛の班と役割を決めて1個の集団を作っていた。
そして現在キンジが昨日見た吊り橋のところまできた。
「よぉしでは作戦の再確認だ」
今回の中ボス戦でどう攻略するか作戦会議が行われた。今回の作戦は至ってシンプルなものだ。
その作戦はこうだ、まず最初は班で固まって散開し攻撃を避けつつパターンを覚える。次に個々の班が集まり前と後ろに2個の集団を作る。前衛のものが攻撃を引きつけ中衛が攻撃する。後衛のものが周りの魔物の排除と支援を行い前衛のサポートをする。1個の集団に中ボスの攻撃が集まっていたら、後ろの集団が猛攻撃をする。という強い魔物と戦った時と同じ戦法だ。
「昨日話したこの作戦でいこうと思う。でも、1番有線すべき命令がひとつある。それは《命を大事に》だ!」
大和が目をカッ!!と開き言い放つ。そして数人気がついたように思う。
(((((どっかで聞いたことある命令だな...いや、ぜったいあれだろっ)))))
確かに聞いたことがある命令だが。1番はたしかにそれだった。
「自分が危ないと思ったら一旦引くんだ。焦って突っ込むんじゃないぞ。勝てないと思ったらみんなでひくことにする。僕の指示に従ってくれ」
「了解!!」
大和の作戦に同意する。キンジも昨日ギルに「やれることはあるだろう」と言われてしまったので頑張ることにした。
この時気づいていなかった、一部の人間が怪しい笑みをしていることに...
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勇者一行が吊り橋を渡り大きく開けた空間に出た。目の前には大きな扉があった。多分この奥に50層に行く階段があるのだろう。
ワァォーーーン
と犬のような鳴き声がその空間に響いた。
「戦闘準備ーーーーー!!!」
大和が怒鳴る。そして、目の前にズドォォンと降ってきたのは黒い毛で覆われていて目を赤く光らせている体長5メートルある大きな狼だった。
「!!」
「ダーク・ウルフ...」
ギルがその魔物の名前を言う。ずっと図書室で本を読み漁っていたキンジはそいつを知っていた。
ダーク・ウルフ。体長約1メートルぐらい。基本は洞窟の中に住んでいてめったに地上には出てこない。集団で狩りをし獲物をみんなで食う、集団で活動する魔物だ。狙った獲物は逃がさない系の魔物である。
しかし、このダーク・ウルフは少し違っていた。体長は5メートルぐらいで大きい。集団のなかでの長みたいな気配を感じとれた。普通なら集団でも協力するタイプの魔物なのでリーダー的存在はいないはずだ。
そしてその疑問はすぐに解けた。
ワァォーーーンワァォーーーン
と再び遠吠えすると、周りからダーク・ウルフが出てきた。その他にもゴブリンやスケルトンなどここにくるまでに倒してきた魔物が出てきた。
(そうか、そういうことか)
通常ダーク・ウルフ1匹が遠吠えすると他のダーク・ウルフが集まってきてみんなで狩りをする。しかし、他の魔物が出てきたとすると違う。つまりこの中ボス魔物はダーク・ウルフではない違う種類の狼という結論に至る。
でも別にダーク・ウルフではないと分かったとしても、作戦はそのままでいくのだろう。他の魔物を従えてる時点で分かることはこのテヌミ洞窟の中で2番目に強い魔物ということだけだった。
「作戦開始!」
大和が叫ぶと散開し始めた。他の魔物を倒しながら散開してゆく。
「中ボスの攻撃を意識しつつ、まわりの魔物を排除しろ」
「了解!!」
大和の的確な指示が出される。他の魔物がいるだけで中ボスにあまり近づけなかった。なので中ボス1匹だけ残すように他の魔物を狩っていく。じょじょに数が減っていき中ボスだけが残る。
「周囲に散開しつつ、攻撃を避けろ!」
中ボスから繰り出される攻撃を避けつつパターンを見る。そして作戦は次に移行する。
前衛部隊が攻撃を受け流し、中衛部隊が前につめて攻撃する。中ボス狼は体は案外柔らかくて普通に鉄の剣で切れるが、毛が鋭く硬いもののため攻撃が弾かれることが多かった。
「くっ、これじゃ接近攻撃が届かないよ」
「そうだな、魔法で遠距離からの攻撃をしてみよう。魔法攻撃開始!」
「『火玉』
「『起風』
後衛部隊の魔法が中ボスに襲いかかる。『火玉』で火を出し『起風』で威力を上げる。風がうずまき、その中に『火玉』を打ち込むことでコンビネーション技『火炎旋風』が出来上がる。
その『火炎旋風』が中ボス狼に直撃する。
グガアァァァァ
中ボス狼の悲鳴が空間に響き渡る。どうやら魔法で攻撃するのが1番の特作だろう。バンバン次々に魔法が襲いかかる。
しかし、ずっと魔法で攻撃をしていると魔力がそこを尽きる。魔力を自動で回復するには時間がかかる。そこで特攻隊長の龍也の出番だ。
「うぉぉぉぉぉ」
ギンッ
1番力がある龍也でも攻撃が弾かれる。
「うおっ、ダメか。でもこれなら...『強化』!」
龍也の得意魔法『強化』を自分の大剣にかける。そして、再び中ボス狼に叩き込む。
グギャァァァ
龍也によって強化された大剣は中ボス狼の足に叩き込まれる。鋭い毛のせいで剣の攻撃が通らなかったが強化した大剣はすんなりとダメージが入る。斬るというより叩きつけるような攻撃だ。たとえ斬れなくとも鋭い毛の下の肉体にはダメージが入る。
物理的ダメージがくらうと龍也が証明したことにより、『強化』が使える者や物理攻撃の武器を持っている者が中ボス狼に叩き込んでいく。
それから追い打ちをかけるように回復した後衛部隊の魔法が襲い掛かる。中ボス狼の体からは血が吹き出しガクガクとした足で立っているのがやっとのように見えた。これはチャンスだと思い、みんなで一斉攻撃をしようと大和が命令を出す。
そこからはもう一方的でフルボッコ状態だった。中ボス狼がズドォォォォンと倒れる。周りの魔物たちがあわてるように逃げ出した。
「勝ったのか?」
「か...勝ったんだ俺たちは」
「やっほぉぉぉぉい」
みんなが喜んでいるなかキンジは違和感を感じていた。
(おかしい、なんで消えないんだ?)
そう中ボス狼は倒れたものの消えてはいなかった。体力が尽きた魔物は小さな粒子となって消えていき魔石だけが残る。しかし中ボス狼は消えておらず何か妙だった。残っていた魔物たちは勇者たちではなく倒れた中ボス狼から逃げるように消えていった。
キンジが違和感に気づいた直後、異変が起こった。倒れた中ボス狼からドス黒いオーラが噴出し体を包み込んでいった。
「ん?なんだなんだ」
「まだ終わってない、戦闘準備だ!」
突然の異変にきづき、ギルがさっきまで喜んでいた奴らの気を引き締めるように怒鳴る。
ドス黒いオーラは中ボス狼の体全体にまで広がりその姿は見えなくなってしまった。
グオォォォォォン
大きな咆哮とともにドス黒いオーラが霧散すると目を疑うような光景が広がっていた。
さっきまでの狼とは違い、より鋭くなった爪に体が大きくなって首から顔が三つになっていた。神話などにでてくる顔が三つある犬の怪物だった。
「ケルベロス...しかも変種だな、こりゃ」
変種。たまにまわりの魔物とは違う存在で数倍強いとされている魔物。ギルにはその正体がわかったらしい。今のままでは誰かが死ぬ、ここはいったん引くしかないと思い命令をだす。
「そいつは危険だ!今から撤退しろ。奴でも吊り橋はわたってこまい」
生徒たちはうなずき魔法で攻撃しながら下がっていく。しかし、ケルベロスは今までいたぶられたので簡単に帰らせようとはせず。
グワァン
大きな爪を空気を斬るようにふった。そしてそれは斬撃となりとんでいく。
「なっ!」
防御しても勢いは削れず腕がしびれ、斬撃が地面にあたるとその部分はえぐれ地形が変わるぐらいの威力があった。
「くっこれじゃ吊り橋にいくまでもたない。俺と大和、龍也、姫川、神崎で少し足止めをするついてこい」
「「「「了解!」」」」
ギルと天音グループがケルベロスのほうを見て立ち止まる。そして他の者たちを逃がすためにケルベロスに向かっていった。
ズドッズドッ
さっきと同じように龍也とギルが大剣で攻撃している。攻撃はとおっているはずだがケルベロスは効いている素振りを見せない。
「二人ともどいて!」
大和と神崎が魔法による攻撃を繰り出す。
「『光斬』!」
「『風斬』!」
武器に魔法をかけそれぞれの得意魔法の斬撃を飛ばす。すべての斬撃がケルベロスの体に命中し血が噴き出す。しかし、その傷口にドス黒いオーラが集まり次の瞬間なにもなかったかのように元に戻っていた。
ケルベロスが全身からオーラをだし咆哮を上げる。
グワォォォォォォン
ただの咆哮だけでギルと龍也が吹き飛ばされる。
「ぐわっ」
「ふたりとも大丈夫??『ヒール』」
天音が回復の魔法をかける。
「わりぃ、助かった」
「そろそろいいところまで引けただろう俺たちも急いで撤退だ」
ギルと天音グループも撤退し始める。いそいで走りケルベロスの攻撃を受け流しながらもみんなと合流する。
「よし、全員でいっきに駆け抜けるぞ!走れ!」
吊り橋に向かいみんなが全力で走る。キンジも必死に走っていたがなにかにつっかかり転んでしまった。
「うわっ、くそ。なんだよ木かよ」
そしてふつうならそこにはあるはずのない木を払いのけ吊り橋に向かう。何人かはもう向こう側についているようだった。ころんでしまったキンジはすっかり遅れて最後になってしまった。
もうそろそろキンジが吊り橋にたどり着こうとしたときにあの斬撃が飛んできた。幸いキンジには当たらなかったが、吊り橋を支えている紐にあってしまい、切れそうになってしまった。今にも落ちそうな吊り橋を渡るキンジにケルベロスが逃がすまいと斬撃をくりだしている。
「はぁはぁ、やった。助かる...っ!!」
安堵した声を出した途端、キンジの足元に魔法陣が広がった。するとキンジの体は動かなくなったように止まってしまった。
「くそっ、なんで。誰だよ、こんなことするやつは」
必死に動こうとするが動かない。だれかの魔法によって体を『拘束』されたかのように動かない。体が動いていればもうついているはずの陸を見てみると。天音が必死に声を上げて手を差し伸べていた。
(姫川さん...)
キンジも手を伸ばそうとしたその時、だれかの魔法によって切れかかっていた紐が切れてしまった。その吊り橋のうえにいたキンジは底の見えない暗闇に落ちていってしまった。
やっと話に進展です。やっと話が繋がって嬉しいです。次話は4日以内に頑張ります。