第20話 運命の再開
大変長らくお待たせしました。現実は忙しくて小説からを一旦手を離し、勉強に集中させてもらいました。久しぶりですが、どうぞ!!
「さぁ、出てきてもらおうか。」
男の声に従うように馬車から1人の女性が出てきた。
銀髪の長い髪に、誰もが顔を見ればその顔を見れば美しいと言うほどの美人。
そうアルカデア王国のアリス姫だ。
「おまえたちは何者だ?だれの命令で動いている?」
「へっ、誰が言うかよ!だがこっちの要件には従ってもらうぜ?くくっ、やはり上玉だなひーめーさーまー。」
「既にここに増援を呼びました。すぐにここに来るでしょう。この短い時間でなにをするというのですか?」
「いやーまいったねーここでは何も出来ないやー」
男はふざけたように棒読みで言ってくる。そして不敵に笑った。
「でもここでなければ、じーっくりできるんだなぁ。」
複数の男たちが出てきてアリスを囲み、捕縛しようと近づいてくる。
(くっ、こんなヒラヒラな服では動きづらい、しかも剣もない。剣さえあれば...。)
剣さえあれば抵抗し、増援が来るまで時間を稼げる。
が、いま武装は何一つない。
倒れている騎士たちの剣を拾おうとしても、怪しい動きをすれば捕まってそこで終わり。
いまの時点で有効な時間稼ぎははただ何もしないことだった。
「さぁさぁ、大人しく捕まって下さい。」
男がアリスに手を伸ばし、体に触れようとする。
しかし、男の手はアリスの体には触れられなかった。
そして静止の声が空間に響いた。
「まて。」
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男たちの動きを観察していたキンジ。
アリスが大きな声を出して話しをしてくれたおかげで全部聞こえた。そしてだいたいの事情を理解した。
相手との会話を聞く限り、盗賊の類いではない。
何者かの差金で動いているような感じだ。
「大臣の差金なのか?」
その可能性はあるかもしれない。アリスを守ると同時情報を聞き出すため、集団に走っていく。
一様『気配遮断』を使い悟られないようにして近づく。
アリスが男に捕まれそうになった瞬間、静止の声を上げる。
「まて。」
「ん?だれだおめぇ。どこから湧いて出た。」
「複数の男が女の子を取り囲むのは好まないな。」
「ほざけ!お前みたいな小僧が首を突っ込むんじゃねぇよっ!!」
急に殴りかかってきた。
不意打ちすぎる一手。キンジの顔にめがけて放たれた一撃。
不意打ちだったが、キンジは反応できた。地下生活をおくってきたキンジにとって生ぬるい攻撃だった。
顔を横にずらし、がら空きになった横腹を殴る。
「ぐっ!ってめぇ。がはっ!」
地面に膝をつけた相手の顔面に蹴りを入れる。そして、倒れ意識が飛んだようだ。
「リーダーはだれだ?」
問いかけるだが返事が返ってこない。
「ってことはこいつがリーダーか。」
そばに倒れている男を見る。
「まぁ誰でもいい。答えろ。誰の命令で動いているんだ?」
やはり返ってくるのは静寂だった。
「ならいい。こいつと同じようにしてやる。」
この発言とともに男達は襲ってきた。
「姫様、うしろに。」
「なぜ?私が姫と?」
その返事をする前に敵を掃討しなければならない。
刃物を取り出し、襲いかかってくる。
『鑑定』で見る限り敵の能力値はそこまで高くはない。
「ならあれを試してみるか。」
ただ突っ立っているキンジに向かってナイフを構え走ってくる。
「もらったぁ!」
「あ、危ない!!」
アリスがキンジをかばうように立つ。
だが、不幸にもナイフの軌道は致命傷を与えるところにのびていってしまっている。
(このままだとまずい...。致命傷になってしまう。)
強引にアリスを後ろに下げ、逆にかばう。
ナイフはキンジの頬をかすめる。傷口から血がたらりと流れる。
「そっちが刃物を出すのならこっちだって使わせてもらうぞ。」
キンジは腰に下がっている鉄の剣を引き抜く。
あくまで攻撃用の剣ではない。防御の役として使う。
攻撃は殴るか蹴るかすれば相手は気絶するので問題はなかった。
一対数十人の劣勢な戦いだったが、決して負けてはいなかった。
だが、激しい攻防の末に鉄の剣にヒビが入り次の瞬間砕け散った。
「ははっ、そんななまくらを選んだ自分を恨むんだな!!」
ナイフがすぐそこまで来ている。
しかし、焦ることもなく、冷静に、軌道を読み、合気道のように相手からナイフを奪い無力化した。
ほんの一瞬の出来事だった。
無力化はしたもののまだまだ敵はたくさんいる。鉄の剣は失ってしまった。
どうしたものかと考えていると、遠くから馬の走っている音と鎧のすれる音が聞こえてくる。
「ちっ、来ちまったか。もういい。倒れているヤツらは置いていく。撤退だ!!」
増援が来る音を聞いて撤退をし始めようとする。
何らかの小細工で騎士たちを倒したが、増援に対しては量も質もどちらとも無力。
アリスはほっとしている顔だ。
だが、1人だけ甘くない人間がいた。
「逃げられるとでも、思うのか?」
撤退しようとした先にキンジが既に立っていた。
「お前、どうやってそこに...。さっきまで後ろに、いや今はそんなことはどうでもいい。そこをどけ!!どかないのなら力ずくでだ!!」
「力ずく...か...。」
キンジは静かに折られた剣ではなくもう一本のほうの剣を引き抜いた。
紫色のオーラを纏っている剣。魔剣デュランダル。
体の中の魔力を解放する。
「な、なんだその剣は...。ぐっ!!体が...重い...。」
撤退しようとした奴らはあっという間に一人たりとも動けなくなっていた。
全員膝を折り地面につけ、武器を握っていた手も地面についている。
今起きている現象は体の中から魔力を放出し、特定の相手の周辺の魔力濃度を高くして体を重くさせているのだ。
広範囲でも使える便利な技だが、魔力の消費も結構あるのであまり使わない。
今回は試しにとして使っている。
「さぁ、もう一度聞くぞ?お前たちの上にいるのは誰だ?」
「はっ、誰が話すかよ!!ここにいる全員ある呪いがかけられている。発動条件は簡単だよ、話したら死ぬ。」
「そうか、ならば楽に死なせてやろう。」
魔剣を向ける。心臓に向けて突き刺そうとする。
だが凛とした声が静止にかかった。
「待ってください!!殺すのは待ってください。身柄はこちらで拘束させていただきます。」
キンジが動きを止め魔剣をひいた。
「ご協力感謝します。」
「いえ、ですが私がかけた束縛ももうじき切れるでしょう。増援がくるまでは持つと思います。ついたらすぐに縄でしばるなりなんなりしてください。」
「本当にありがとうございます。それと、大丈夫でしたか?頬から血が...。」
ハンカチを取り出し傷口に当ててくれる。
「私でもわかります。この傷は私のせいでついた傷。あの...それで、一緒に王城まで...」
アリスの言葉がそこで切れてしまった。なぜなら空気を読めない増援が到着したからだ。
「貴様!!なにもしている。姫様から離れろ!!」
一人の騎士がアリスとキンジの間に割って入ろうとする。
キンジも頃合だと、思い。
「さっき言ったこと、気をつけてくださいね。もうすぐ切れてしまいます。では。」
「えっ?ちょっと待ってください!」
アリスが必死に止めようとしたが騎士によって阻まれてしまった。
キンジが離脱した後、あの暗殺集団は縄で拘束され連れて行かれたのであった。
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アリスは王城に戻ったあとに、あの出来事について考えていた。
「よく考えて見れば、あの髪の色と目。夢に出てきた...。」
予知夢によって見させられたあの夢の中に出てきた人は今日命を救ってくれた人と同じだった。
「なぜ気づかなかったのでしょう。また会えるでしょうか...。いえ、なにごとにも行動です。」
そう言ってアリスは魔法を展開した。




