第19話 遭遇戦
少し時間がかかる空いてしまいました。すみません。
キンジが銀色ランク、いわゆるシルバーランクに到達した日から数日。
今日も冒険者ランクをあげたいがために冒険者ギルドを訪れていた。
「あっ、キンジさん。今日も早いですね。また依頼消化ですか?」
いつも朝早くからギルドのカウンターにたっている女性、イリーナが声をかけてきた。
「おはよう、イリーナさん。今日もおすすめ依頼があったら教えてください。」
「はぁ、まったく。頑張ってくれるのはありがたいですけどたまには体休めたりとかしなきゃダメですよ!!」
「ははは、わかってますよ。」
「もう。こんな早くランク上げていく人なんて聞いたことありませんよ。まぁ、今日もキンジさんが受けられる最高難易度の依頼を用意しておきました。」
討伐依頼
ビックスライム 20体
完了条件
特定のアイテムを届ける。
「ビックスライム?またスライムか。」
「結構手こずる人多いらしいですよ、ビックスライム。なんか新米冒険者にはきつい認定されたからシルバーランクに上げられたとか聞いたことがあります。」
「ふむ。まぁやってみなきゃわからんな。」
「お気を付けて~。」
こうしてビックスライムの依頼を受けたキンジはやつらがいる沼地に移動した。
スライムは洞窟などに多く生息するが、ビックスライムは沼地の周辺にしかいないという。
まだなんの情報もないため適当に装備を整えてきた。
平野を歩いているとまわりの空気が少しずつ湿ってきているのを感じた。
「そろそろか...。」
湿った土、蒸し暑いような気候。沼地に到着した。
茶色く濁った池や水草がたくさんある。その中にぴょんぴょん飛んでいる大きい緑色した物体を見つけた。
それはスライムを5倍ぐらいに大きくしたスライム、ビックスライムだった。
「これを20体か。いろいろとめんどいな!!」
そこら中にビックスライムがぴょんぴょん飛んでいる。20体以上は確実にいるので問題はないと思ったが、ちょっと多すぎる気がした。
「まっ、とりあえずぶった切って行くか!!」
鉄の剣を抜きぴょんぴょん飛んでいるビックスライムへと走って向かって行った。
「はぁ、はぁ、はぁ。」
何分斬り続けただろうか、よく覚えていない。
ビックスライムの欠片が周辺に飛び散って悲惨なことになっていた。
「これで、終わったはず...え?」
そう言って自分が通ってきた道へと振り返ると、少し小さくなったスライムたちがいた。
「なんか...増えてるんですけど。」
そこからキンジの悲惨な戦いが始まった。切っても切っても増えていくスライムたち。
小さくなったスライムたちは時間がたつと合体し元に戻る。また、キンジの悲鳴があがった。
「新米冒険者は手こずるってこういうことか!!完全な初見殺しだろ、これっ」
増えたり合体して大きくなって元に戻ったりするビックスライム。
もうキンジもこの終わりがなさそうな戦いに飽きて、地上に出てようやく地下で学んできたことを活用した。
腰にぶら下げている魔剣を久々に鞘から抜いた。
「『魔眼』発動!!」
『魔眼』とは。魔剣デュランダルを手に入れた時にステータスに追加されていた魔法だ。千里眼のように少し離れた所を見たり、魔力の流れをみたりできる。
ここでなぜこの『魔眼』を使ったかと言うと、ビックスライムは増えたり合体して元に戻る。増えても合体して元に戻るということは、それは同じ個体ということだ。ビックスライムだって魔物の一員。それなら魔核を持っているはずだ。
「見えた!!」
透明のある緑色の体に動いている魔核があった。まわりにいる飛び散ったビックスライムの欠片で増えたスライムもその魔核に魔力線が伸びている。
原因がわかれば簡単だ。その魔核を消してしまえばいい。
動いている魔核にそっと狙いを定め一閃。そしてここで『無散』発動。
魔剣が魔核に触れた途端ガラスのようにバリンと割れた。
魔力線によって繋がれていたビックスライムは蒸発して消えて残ったのは魔核の欠片だった。
これをあと19体、『魔眼』がなかったら勝ち目がなかった。だが、今はわかるので魔核を一突きすれば分裂する前に仕留められる。
このあとキンジは最初よりも圧倒的な攻撃で魔核を一つずつ潰していった。
「28、29、30っと。20体のところを30体になってしまったが、問題ないよなっ!!」
ビックスライムの魔核を30個集めたキンジは完了の報告をするためにギルドへと戻ることにした。
鼻歌をしながら帰り道を歩いていると、なにやら騒がしくなっているところを見つけた。
一つの馬車に怪しい服装をした数十人が取り囲んでいた。
その馬車は金色のアルカデア王国の紋章が書かれている。よく見ればまわりに鎧を着た騎士たちだと思われる人たちが倒れていた。
「足掻いても無駄だ。さあ、はやく出てこい!!」
「出てきてはなりません!私たちをおいてお逃げください。」
「ふん。まだ喋れる奴がいたとはな。」
「くそっ、体がうごかねぇ。一体なにをしやがった!!」
体が動かないのは本当らしく顔や首を動かすので精一杯というのはわかった。
あの金色の紋章は普通の馬車や商人の扱う馬車にはない。アルカデア王国の紋章が書かれているのはたぶん王族の馬車。まだ中の人は顔を見せていない。もしかしたらアリスかもしれない。
キンジは隠れて観察するのをやめ、鉄の剣を抜き集団に1人で突っ込んでいった。




