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第16話 別れと旅立ち

今回は少し短いです。

キンジの右手には錆びた剣ではなく、全体濃い紫色の剣があった。


それを試すように軽く横に振ってみる。すると、キンジの体を覆っていたどす黒いオーラが空中に消えていった。


魔剣デュランダルと同調したことによって、身体に影響があった。能力値全般が伸び、髪の毛が白くなっていた。


「今の俺は、お前には負けない」


一気に駆け出し、距離を詰めていく。身体が強化されているのか、速さがさっきまでのキンジとは違う。


黒いキンジがその攻撃に対応しようとするが、その速さについていけない。


後ろに吹っ飛ばされる、キンジは容赦はしない。空中にいまだ浮いている黒いキンジに向かって再び攻撃を繰り出した。


地面に叩きつけられ苦しもがいている。


「俺は前に進むために、自分を超える!!」


一閃。


縦切りをし、黒いキンジは真っ二つにされ消えていった。


「しかと見た、貴様に委ねよう...」


黒い巨体がそうつぶやくとキンジの視界が再び真っ暗になった。


目を開けると見たことのある天井があった。この天井を見て、帰ってきたんだなと思う。


「無事に戻ってきたようだね」

「いきなり紫色に光ったと思ったら、印象変わってるんだもん」


鏡を見たら確かに変わっていた。髪は白くなり、目も少し鋭くなった、気のせいかもしれないが少し身長伸びた?でも、1番変わっているのは髪が白くなったことだろう。


なんで髪の色が白くなったかはわからない。魔剣の力に左右されたのかもしれない。


「まぁなんとかなったか...な...」


キンジから言葉が消えていく。


「エイジ、それにみんなも。足が...」


エイジ達の足が消えかかっていることにキンジは気づいた。


「もう時間がないみたいだ」


少し悲しそうな声で言ってくるエイジ。


「なんで...なんで、言ってくれなかったんだよ...」


キンジの目に少しずつ涙が溜まっていく。


「もっと話しを聞かせてくれよ...」

「そうだったね。君が望んでいる情報を教えなきゃね」

「地球に...帰る方法...だろ...」

「まぁそんな悲しそうな顔をするなって、君の戦いはこれからだよ」

「そう...だな...」


腕で目に溜まっていた涙を拭い、シャンとした顔に戻す。


「それで、地球に帰る方法は?どうすればいい」

「君は、魔剣の中で鎖に繋がれた黒い者に合わなかったか?」

「ん!?会った。会ったよ。分かる」

「そいつは、闇の精霊王だ」

「...。は?」

「この世界には、属性を司る王。精霊王がいる」


精霊王。それは、この世界において属性六元素である、『火』『水』『風』『雷』『光』『闇』にはそれぞれ精霊王がいる。


キンジがさっきまで会っていたのは、闇の精霊王だったらしい。


「その精霊王がどう関係してるんだ?」

「その精霊王のいる遺跡には、青色の大きな石版がある。その石版にはある島の関する座標が書かれていて、6個の座標の交わっているところに転移ポータルがあるんだ」

「それで、帰れると...。でも、そしたら俺たちはどうやってこの世界にきたんだ?」

「それはそのポータルに使われている石、転移石を使ったんだろうけど...。あれって、魔力の消費量が多くて人がたくさん必要なはずだからまず無理だろう」

「ってことは転移ポータルにいけば問題ないと?」

「そうだ。転移ポータルは場所を指定して少し魔力を注げば起動するから問題はないはずだ。探すのが難しいだけだよ」

「そうか。いろいろとありがとな」


その言葉は心から思っていることを素直に率直に出した言葉だった。


「僕達は、大臣たちの思惑さえ止めてもらえば満足だよ」

「そろそろ僕達は消えてしまう。最後にプレゼントさせてくれ」


取ってきたのはキンジが気になっていた宝箱だ。少しエイジが詠唱すると、パカッっと開き中には緑色の『転移の羽』とステータスなどを呼び出すための指輪が入っていた。


「これは一生消えないものだよ。物は何回か使っていると壊れてしまうが、この『転移の羽』と指輪はなにがあっても壊れない代物だ。大事に使ってくれ。それとあとは...」


エイジたち四人がキンジに向けて魔法陣を展開した。普通なら警戒するだろうが、キンジにはわかっていてなにも身構える必要はなかった。


「君には、いくつか修行してもらったけど。たった1ヶ月ほどしかしていないから熟練度がまだまだ足りないので、師匠方からのプレゼントだ」


魔法陣から飛び出してきた小さな光がキンジの中に入っていく。


「これで君の技量は師匠たちとあまり変わらなくなった。これぐらいはさせてくれ」


エイジたちの体はもう半分うっすらとしか残っていない。さっきの魔法を使用したことによりまた一層薄くなった。


「残りの魔力がそろそろ尽きる。尽きれば僕達は消える。少しの間だったが楽しかったよ」

「えぇ、そうね。先生って呼ばれるのは案外良かったかも」

「弟子が旅立つのってこんな感じなのかのぉー」

「どちらともいい経験になったってことですかね」


「俺は約束を果たすよ。エイジ、リリー先生、ボル、ソウジ、みんな世話になったな。俺、頑張るよ」


「あぁ、期待している」


もう消えかかっている姿を見て涙をこらえるキンジ。そして別れの時がきてしまったようだ。


「もう時間だ。みんないくぞ」


そうエイジが言うとみんなが口を揃えて...


「「「「ご武運を!!」」」」


と言って白い光の粒子となって消えていってしまった。残るのは静寂。その静寂が心に響く。


「かっこいいこといってくれるじゃねぇか...」


そのあと、キンジから出る涙は数分止まらなかった。



~~~~~~~~~~~~~~~



別れを惜しみつつも、この部屋から出なくてはならない。はやく行動に移すとしよう。


転移の羽を使用し、『テヌミ洞窟』の入れ口に転移する。転移した後に目の前に勇者一行がいたらどうしようかと思ったが、地上に出るための転移できるところがそこぐらいしかないためやむを得ない。


転移の羽を使用して、恐る恐る目を開けると時間帯は夜だった。幸いに周りには誰もおらず、静かなものだった。


まず、目指すはアルカディア王国。でも、時間帯が夜なため怪しまれそうだったので次の朝方に行くことにした。


洞窟の入口から少し離れたところに森がある。そこで、野宿をすることにした。

次は閑話を挟みたいと思います。

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