第14話 修行 その2
修行の後編です。
キンジがレッドアイラビットを狩って戻って来たら、見知らぬ霊が増えていた。
「まぁ、食事を取りながらでも話そうか」
キンジ以外は幽霊みたいなものなので、食事をとるのはキンジだけだ。レッドアイラビットは肉がうまいうえに『気配遮断』の修行ができるので、別に苦ではないのだが。
ともあれレッドアイラビットを調理し始めた。まぁなんの調味料も持っていないので、ただ焼くだけなのだが、まぁ味はエイジが保証するとも言っていたので食べてみる。
口に入れた瞬間にとろける肉。噛めば噛むほど出てくる肉汁。甘味が素晴らしい、皮もパリパリでどこもかしこもうまい。
地球にいた時にこんなうまい肉は食ったことがあっただろうか。いや、ない。さすがA5ランク級の肉だ。地上出てる値段は相当高いらしい。赤く光っているルビーみたいな目は宝石と同じで値段が高い、地上に出たら速攻で売り飛ばす、と心に決める。
食事が終わったあと、見知らぬ霊3人の紹介がエイジによって始まった。
「この3人は、俺の仲間で今では歴史に名を残している、すごい奴らだ」
ん?なんだって?歴史にも名を残す?
「なぁ、エイジって今どんな扱いされてるんだ?」
「うん?そうだな、しいていえば賢者?かな?」
「あ、はい。」
キンジは黙って話を聞くことにした。
1人目は、ドワーフでボルという名前で、背は低いものの筋肉が分厚く、めっちゃゴリッゴリのマッチョだ。職業は鍛冶師で、ほとんど裏方の役なのだがエイジたちの装備を作っていたのはこのボルだったそうだ。今では、鍛冶師のランクもあり1番上のランクはボルランクと呼ばれている。ランクに名前がつくほどすごいドワーフなのだそうだ。
2人目は、リリーという女性。長身でやや長めに伸びた金髪、そしてかなりの美人。職業は、調合師で、こちらも裏方役なのだが、エイジたちへの貢献度は非常に高い。
調合師は、薬草や薬品を混ぜたりして医療品を作る職業だ。体力や魔力を回復するポーションを作るのが主な仕事なのだが、リリーはいろいろな薬品を発明した張本人。教科書に載っているような人だ。
3人目は、ソウジという男性で魔法師だ。トンガリ帽子を被っている、いかにも魔法師だっというような服装だ。エイジと一緒に魔王を倒しに行った勇者一行の1人だ。
それで、なんでこの3人が登場したのかというとエイジが呼んだらしい。仲間全員を呼び出したかったのだが、この3人が限界だったらしい。
「この3人が君の修行の手助けをしてくれる。ちゃんと学ぶんだぞー」
「ちっ、勝手に決めやがって」
「まぁまぁ、頑張れば結果はついてくるさ」
呆れつつも自分のために来てくれたのだから、利用させてもらおう。それでふと考えたが、呼んだってどういうこと?死んでるはず?と頭によぎったが深くは考えようにした。きっとこれも魔法でなんかしたのだろう。
これまでどおりの修行はこなしつつ、新たに3人の師匠による指導が始まった。
「まず、鉄を打ったことがあるか?」
「いや、ない。もともと鍛冶なんてする機会なんて滅多にないだろ?」
「まぁそうだな。とりあえずこの鉄の塊を伸ばして剣らしい形にしてみろ」
鉄の塊だが、これ相当重い。これを剣の形にするなんてど素人には無理がありそうだが、とりあえずやってみた。
カンッカンッ
鉄をハンマーで打つ音が響いて数時間。刀みたいな片方に刃があるやつではなく、西洋剣のように両方に刃がある剣が出来上がった。形がところどころ曲がったりしているが、最初にしてはいい出来だ、とボルに言われた。
剣や鎧を作るために、鍛冶師のところを訪れるのが当然。しかし、鍛冶師の最高ランクであるボルに教えてもらえばそこらの一般鍛冶師同等の物を作れる。
「そんな、甘い考えなのか小僧!!」
「え?」
いきなり怒鳴られ不意をつかれてポカーンとしている。
「わしが教えるのだから、妥協は許さん!!」
どうやらそこらへんの一般鍛冶師と同じではだめそうだった。
「作るのはSランク武器、いやSSランク武器をつるのじゃぁぁぁー」
ここから猛特訓が始まったのは言うまでもない。
「はははー」
「なんで笑うんだよ...」
キンジが休憩の時エイジが様子を見に来てくれていた。
「いやぁーボルは生きてた頃弟子を持たなかったっていうか、みんな恐れ多いと思って来なかったんだよね。君が第1の弟子ってわけだ、張り切っているのだろうよ」
「やっぱり、最高ランク様だけはある」
「それでほかの2人の内容はどうだい?」
「うぅ...」
キンジが行ってきた修行の数々を順に話して言った。
ボルからの鍛冶の修行の時間帯が終わり、次はリリーの下で調合術について学んでいた。
エイジの書斎部屋からリリーが本を選んでいき、とりあえず知識を詰め込めと言われれしまい。読書に没頭していった。
ソウジからは魔法の特訓を言い渡され。実技なので喜びたかったが魔法は魔力を消費すると同時に精神力も奪われて行くので、けっこう辛いのである。
この3人の修行と同時に今までやっていた修行をおろそかにするわけにはいかない。なんか学校で授業を受けている気分だ。ハードスケジュールで体はバキバキ、少しの休憩がありがたい。キンジの修行はこれからどんどん過酷さをましていった。
数日がたち、キンジもこのハードスケジュールに慣れて来ているようだった。
ボルの下で鍛冶の特訓させて貰っているが、鍛冶には鉄を打つ、形をある程度整えばがら打つ、刃を研ぐ、柄を作りはめる、この工程をすべて最上級技術と任命されるとボルランクに到達する。
今は刃を研ぐ工程だ、砥石と剣の擦れる音がずっと続いている。
「これでどうだ?」
キンジの第一作品目の鉄の剣が完成した。
普通なら次は柄を作り剣をはめるのだが、キンジはその工程を無視して、柄すらも鉄を伸ばして作った。この剣を見たボルは目を白黒させていた。
別に柄すら鉱物で作るのは珍しいわけではないらしいが、ここ数日の修行で剣の出来上がりが素晴らしく、しかもこれが1本目の剣となれば、これから経験を積めばSSランクの剣なんて作れるようになる。
「小僧、お前鍛冶師にならないか?」
「嫌だよ!!」
キンジは鍛冶師の才能を開花しようとしていた。
調合術の修行で本を読んでいたが、既に読み終わってある実験をしていた。
実験とは、薬草、薬品をいろいろまぜまぜしたりしている。何事も経験値だ、精神で頑張っている。
分量や混ぜ合わせが悪いと、爆発したり変なポーションとかが出来てしまう。爆発は失敗作とリリー先生は言っていたが、キンジはそう思わなかった。
爆発はいろいろところで使えるではないか!敵に投げて手榴弾がわりに使えるし、イタズラにも使える、今のキンジ顔は多分ゲス顔だろう。リリーが頬を引きつっているのが証拠だ。
「リリー先生ー。調合術って戦闘の時とかに使えるの?」
「先生はやめなさいっ、もう。うぅーん、そうだね。あんまり戦闘では使わないかな。私がやっていたのはポーションを作ったり、人のために薬を作ってたぐらいかな」
「まぁ、普通はそうだよな...」
「普通は、って...」
調合術にもいろいろな調合の術がある。一般的には薬物の調合だが、鉱物や他様々な物質を調合が出来ちゃったりする。
鉱物を調合して、鍛冶する。なんとなく修行の意味を見出てきた気がした。
魔法の修行ではソウジは厳しいが苦ではなかった。たまに、エイジと協力して混合魔法を見せてくれたりして、学ぶことがたくさんあった。
「魔力制御が全然だめだよ。集中するんだ」
「くっ、難しい」
今キンジの右手には白魔法の『無』、左手には黒魔法の『無散』が展開している。これを均等に保った状態で、魔力が均一になったときに発動すれば混合魔法成功だ。でも、それは難しことで普通2人でやるのを1人でやろうとしているので、難易度は上がるのが当然。
魔力が乱れ、両手の魔法が弾けた。失敗だ。10回やって1回成功するかどうかの確率。これを、失敗せずに10回中10回の成功、つまり100%発動させるのを最終目標として、頑張っていた。
それと、魔力付与の練習をしている。自分が作った剣に魔力付与し、自己流の剣技で素振りをしている。纏っているオーラが軌跡を描いているのを見て、エイジたちは満足そうにしていた。
それから1ヶ月ほどの月日が流れ、エイジに言われていた最終試験の錆びた剣を戻す、魔剣の復活させるのが試験だ。
「最終確認だけど、別に君にこの魔剣の復活をさせるのは強制じゃない...」
「今まで辛い修行やらせといてそんなこと言うのか?まったく酷いもんだな」
「そうか」
エイジは正直、キンジにこの魔剣を任せるか悩んでいた。この最終試験を通して魔剣を復活できなかったら平和な生活を過ごして欲しいと思っている。
だが、キンジは平和な生活を過ごすのもいいが、自分には平和な生活はいらないし、一番の優先事項は地球に帰ることだ。
魔剣に認められれば、魔剣の力を100%引き出せるし、自分の好きに使える。キンジは地球に戻るために必要な力が欲しい。そのためには危険な生活も悪くないと思っている。
「では、始めるぞ」
エイジたち4人に見守られながら、キンジはエイジが先に展開しておいた復活の儀の魔法陣の中にはいり、錆びた剣を地面に刺し、魔力を集中させた。
魔力の集中が高まるにつれて、錆びた剣に吸い込まれていき、キンジの意識が突然プツンッと切れて、その場で倒れてしまった。
そろそろ第1章を終わらせる、かも??




