第13話 修行 その1
今回の話は長いので二つに分けてみました!
キンジの修行が開始された。まず、技術面の前に知識を詰め込まなきゃいけない。
とりあえず固有魔法の本を読んでいる。エイジが言っていたとおり得意魔法と固有魔法が存在した。あのクソ老人の話しとはまったく違っていた。いらない知識は勇者たちにはいらないということだろう。
ステータスを見る指輪についてはそこし細工されていたらしい。なのでキンジが持っていた指輪は既にポイッっとしてやった。
この部屋には宝箱があって、その中にはエイジが使っていたものが入っているらしく、指輪もあるそうだ。修行が終わったらくれるらしい。
なにはともあれ、とりあえず本を読むことに専念した。『混合魔法』についても読んだがなかなか興味深かった。二種類の魔力もつキンジには混合魔法は強力な武器になると考えていた。
もとは2人で対極する魔力を行使して発動する魔法。簡単にいえば合体魔法だ。キンジには魔力が2つ宿っているので修行を積み重ねれば、混合魔法は使用できる。
『魔力制御』のついての本。これは混合魔法にも関わることだが、基本的に魔力制御ができなければ魔法は行使できない。制御ができるできないは魔法の才も関係がある。
そして、もっともこの魔力制御を必須とするのはキンジみたいに二種類の魔力を持った人だ。まぁごくまれにしか二種類持ちは生まれない。
魔力が偏ると人によって様々だが、気分が悪くなったり、頭が痛くなったりする。魔力切れと同じような症状がでる。
そして、あまりにも偏ると気を失ってそのまま帰らぬ人となった人もいるらしい。そうならないためのこの『魔力制御』の本だ。
この他にもたくさん役に立ちそうな本をとって読みふけって1日がすぎた。
次の日にはもう技術面の修行にも手を出していた。
今は、あぐらを組み、目を閉じて、心を落ち着かせていた。これは『空間把握』の取得に繋がっている。
この日本でいう座禅は、体の中の魔力を感じることができるようになる。これにより魔力制御にも繋がるのだ。たまに、エイジからも助言を頂いたりしている。
「二種類の魔力を持つ人間なんて珍しいが、一つを100%をするように、2つを100%にする必要がある。片方に偏るのは絶対だめだ!」
ということだった。実にありがたい。
魔力の流れをつかみ、コントロールできるようになれば混合魔法なんて朝飯前。容易に出せるようになる。
次に、拳法みたいなのを習っていた。エイジ曰く。
「剣と魔法だけが武器じゃない。魔力のオーラは自分が望むところにだせるようになる。殺さないで敵を無力化する場合、剣がない場合など便利なものだよ」だ。
その教え従い、地球にある何とか拳法と同じような気がしたので、自分の型にアレンジして、基礎を固めていった。
ちなみにこれは『武圧』の取得を兼ねている。『武圧』はオーラを使い圧力をかけて敵を動けなくさせたり、オーラを纏うことのできる固有魔法だ。
次に、気配や息を殺して、忍び寄る『気配遮断』を取得する修行。
この修行はダンジョンに行き練習する。気配に気づかれたらそいつを殺して、の繰り返し。
「この『気配遮断』はものすごく便利。極めれば、めんどくさいと思った時、憎い相手と戦う時に暗殺として、などなど色々な場面で使えるからチョー便利」
とも言ってたし、300年の先輩の言うことだ、信じてもいいだろう。
この修行を一週間かけてやった。多分だが習得出来ているだろう。
「それじゃ、いったんテストとしてあいつと戦ってもらう」
今いるのはダンジョンの最奥のところ。ぴょんぴょんとはねている魔物を見た。あいつの名前はカンフーカンガルー。その名のとおり、カンフーの攻撃をしてくるカンガルーだ。オーラを纏うこともできる、今のキンジの相手に充分なモンスターだ。
剣などの武器は無しで拳だけで、ボクシング状態だ。一週間で修行した内容を活用すれば勝てるということだろう。
カンフーカンガルーもこちらの気配に気づいたらしく構え始めた。キンジも構えて、沈黙が舞い降りる。
先に動き出したのはキンジだ。一気に距離を詰め右ストレート!一週間だけだがある程度の型は出来ているし、この世界でのキンジ達のステータスはチート並だ。カンフーカンガルーはキンジの拳の速さに対応できずに、くらってしまった。
よろめくがすぐに立て直し、蹴りを放ってきた。それを腕をクロスして受けをとるが、衝撃を吸収できずに後ろに下がってしまった。
追撃しようとしてくるが、それをいなすように横に払い次はキンジが攻撃を仕掛けた。蹴りを頭にお見舞いすると3メートルぐらい吹っ飛んだ。
それでやめるほどキンジは甘くない。まだ空中に浮いているカンフーカンガルーを追っていき、もう一蹴り追加しておく。
さらに吹っ飛んだカンフーカンガルーは岩に激突し土煙がたってなにも見えなくなった。
「勝った...のか?」
頭にクリーンヒットさせたので倒したと思い込んでしまい少し油断してしまっていた。
土煙が晴れると緑色のオーラを纏ったカンフーカンガルーがいた。緑色のオーラは風魔法。今は相手との距離がある。完全にこっちが不利な状況。
ブォン
岩が真っ二つに割る。鎌鼬(カマイタチ)のような技が飛んできた。しかも、拳をふるごとに飛んでくるため、距離があいているキンジには辛いのである。
鎌鼬を避けつつ近寄ろうとするが、的確に攻撃してくるので避けてはいるが、かすったりしているので傷だらけになってしまう。
なのでこちらも黒魔法のオーラを纏うことにする。黒魔法は『無散』。なので鎌鼬にぶつければ打ち消せるはず。
キンジも両手両足にオーラを纏い、走り出した。当然カンフーカンガルーも近寄らせまいと鎌鼬を飛ばしてくる。鎌鼬をパリンパリン消しながら距離を詰めていく。もう既に拳の間合いに入った。
「はぁぁぁ!」
右手にオーラを集中させる。カンフーカンガルーも同じように片方の拳にオーラを集中させている。
バアァァン
オーラのぶつかり合い。周りの岩などが衝撃によって割れたり崩れたりしている。衝撃波で風のようなものが発生している。
多分このオーラのぶつかり合いで競り勝った方が勝ちだろう。オーラの密度が濃くなっていき、その限界がきた瞬間、爆発した。たがいに吹っ飛ばされ、先にたったのはキンジだった。
「これが、オーラのぶつかり合いか...はぁはぁ...」
今回はキンジの勝ちだった。カンフーカンガルーは倒れたままだが、意識がないだけだろう。
オーラのぶつかり合いはけっこう消耗が激しいので、これからも修行が必要だと反省して、エイジの書斎部屋に戻った。
「やぁ、キンジ君お疲れ!どうやら勝ったみたいだね」
「なんとか、勝った。オーラのぶつかり合いってのはしんどいな」
「そうだね。それと、疲れてるところ悪いんだけど、夕食どうせなにか狩ってくるんだろ?」
「あぁ」
「じゃーレッドアイラビットを捕まえてきてくれ」
レッドアイラビットとは、目が赤色でそれはもう綺麗なもの。地上では高値で売れる宝石の1種だ。その他にもその肉はA5ランクの肉とも言えるほど最高の肉である。目が赤く体は白で一目入ればすぐにわかるのだが。
そのレッドアイラビットは生息地が未だ特定されておらず、めったに見れない動物だ。めったに見れないのは訳があるのだが、それは性格にある。レッドアイラビットはものすごく臆病な性格なので、自分よりも強い気配を感じたら一目散に逃げてしまうため目に入る前に逃げてしまうのだ。
だがしかし、気配を感じ取られなければいいので『気配遮断』を使うのにうってつけってわけだ。
「1匹捕まえてくるまで、帰って来ちゃだめだよ!」
「めんどっ」
こうして、キンジのレッドアイラビットの捕獲(『気配遮断』の修行)が始まった。
エイジの話しだと、前にいた洞窟にいるっぽいので戻って、できるだけ魔物がいなそうなところを探す。
移動中もできるだけ気配を消しているので、遠くから視認できるぐらいは近づける。しかし、だんだん近づいていくにつれてバレてしまう可能性は高くなっていく。
今はレッドアイラビットはのんびりと自分の毛を毛ずくろいしている。
キンジは気づかれないように気配を消すのに集中する。残り5メートル程になって、このまま順調に行けるか!っと思ったがそんなに甘くないようだった。
いきなりビクンっと跳ねて一目散に逃げられてしまった。当然ここの洞窟は魔物がでる。キンジの気配に気付かれないように気をつけても、魔物の気配で逃げてしまう。これでその理由で逃げられて3匹目だ。
さすがに頭にきたので周りの魔物を片っ端から消していった。これでもう邪魔するものはいない。ついでに、岩を削って尖らせて小さな杭を作っといた。
そして再びレッドアイラビットを探し出し、さっきと同じように近づいていく。もう邪魔するものはいない。残り3メートルになってからさっき作った岩の杭を取り出す。
それに白魔法の『無』を静かに纏わせる。そしてそれを首もとらへんを狙って投げる。
「キュピッ!!」
可哀想だが可愛いらしい悲鳴をあげて倒れた。『無』のオーラを魔力付与させているので、あの岩の杭を抜けば傷は無くなる。
気を失っているレッドアイラビットを持ってエイジの書斎部屋に戻っていった。
ちなみに4匹目で確保できた。
「狩ってきた...って!!」
キンジが戻ってきたエイジの書斎部屋には見知らぬ人...いや幽霊が増えていた!
すこし投稿が遅くなる時があります。すみません。なので次話はでき次第投稿しますね。4日以内は目標です!




