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第11話 錆びた剣の記憶

また少し遅れてしまい申し訳ございません。後書きにて重要なお知らせがあるので最後まで見てくださいね。

ふと日が覚める。いまだ体が重い感じが残っている。見えない真っ暗な天井をみながら、ヌーもどきの肉を食べていた。


ロックマンの残骸はなく、キンジは取り残されている。多分ボスだと思われるロックマンを倒したが、多分なので他の魔物が出てくる可能性があるかもしれない。


ヌーもどきの肉を噛み締めながら、いまだ重い体を動かす。少しでも気を抜けば転んでしまうぐらいに重い。


傷は寝てしまう前に治した。前はあの受けた時の痛みがくるのをためらってしまったりしていたが、今ではすんなり直そうとしてしまう。治したあとに自分でも怖いと思うことがある。でも気にしないことにするのだ。


片足を引きずるような歩き方で奥へと進む。青い炎を灯らせていた松明が普通の赤い炎を灯らせている松明に変化していた。


奥に見えてきたのは、ここに入る時にあった大きな扉と同じような扉があった。ただ違うとすればその扉は黄金の扉だった。


ゴゴゴゴゴ...


黄金の扉に紫色の線が入り、開きだした。


中には金や財宝ザックザクかと思ったのだが、予想を裏切り違っていた。


中にあったのは、階段とその上にある祭壇。その祭壇に突き刺さった剣。その床には魔法陣が刻まれていた。


その突き刺さった剣は錆びていた。使い物にならないぐらいに。切れそうにもないし、叩いたら割れてしまうぐらいボロそうだった。


「あれが?財宝ってか??...。帰り道さがすか...」


錆びた剣以外になにもなさそうなので、帰り道を探すことにした。ここが最終層ということは分かったので一様安心なはずだ。


結果。


なにもなかった。帰り道もなかった。残るは錆びた剣だけ。


「はぁー、結果的にこいつか」


錆びた剣の前に立ちつぶやく。なにもないならこいつだけでも引っこ抜いて見るかと、柄を握りおもいっきり引っ張る。


抜けない。


「ふんぬっ」


やっぱり抜けない。


期待はずれにもほどがあった。あきらめて手をはなそうとした時、魔法陣がいきなり紫色に光だした。錆びた剣から手を離そうとしたが離せなかった。


「うぐぐぐ」


全身の力が抜けた感覚。魔力が錆びた剣に吸われている感覚。立っていられず膝から崩れる。


魔法陣から紫色の光が溢れ出し視界をうめつくしてしまった。



~~~~~~~~~~~~~~



ある時一振りの剣が天から落ちてきた。聖堂に落下しその聖堂は使い物にならなくなったが、まわりには被害が出なかった。


剣からはものすごい強い魔力が出ていた。それを好む魔物たちが集まってきてそこの区域は隔離された。


数年がたち、誰も来なくなった聖堂はコケや植物のつるなどが張り巡らされていた。魔物が溢れ、地形も変わってしまった。その後ここは、『テヌミ洞窟』と呼ばれることになる。


とある日1人男が森をさまよっていた。


「ふざけるなよ......」


憎しみのこもった重い声を出していた。その男の名はエイジ。黒髪で黒色の瞳でここでは珍しい髪の色。勇者と呼ばれていたものだった。なぜこの男が憎しみを覚えたか、ことの発端は少し前に戻る。


「そこまでだ、魔王!もう逃げ場はない」


エイジは魔界軍と戦っていた勇者。もう少しで魔王を倒せるところまで来た。じりじりと空気が張り詰めている。


「なぜだ。私は平和を望んでいる」


「魔王、貴様は人間に危険を及ぼしている。人間の人々が危機に瀕しているんだ。倒す理由はそれでつとまる」


そしてエイジが1歩踏み出して、魔王を斬ろうと振りかぶった瞬間。うしろにいた勇者の仲間が悲鳴を上げた。


「ぐあぁぁぁ」

「あぁぁぁぁ」


「どうした、お前ら!!」


エイジ以外の勇者は吹っ飛ばされ残っているのはエイジだけになってしまった。


「ご苦労であったぞ、エイジよ」


老いた声が聞こえてきた。エイジには聞き覚えがある声だった。


「お前は...大臣」


エイジたち勇者は帝都に召喚された。その老人は帝都の大臣にあたる人物だった。


「あぁ...がぁぁぁぁぁ」


次は魔王の方から絶叫の声が聞こえてくる。魔王の下には魔法陣があった。魔王の魔力が少なくなってきているのがわかる。


「どうして他の勇者たちを!?」

「簡単じゃ、邪魔だからじゃよ」

「邪魔だと??」

「そうじゃ邪魔じゃ。そしてエイジ。君もそうなる」

「なっ」


魔王の魔力がすべて無くなった。魔王が力なく倒れる。そして老人の方に同じような魔法陣が展開され、老人の魔力が急激に増加した。そしてなぜか老いぼれた体が若々しさを取り戻した。


「もう既に用済みなのだエイジよ。消えてしまえ」

「ふざけるなぁぁー」


激戦だったが、すでに魔力を消耗しているエイジと、魔力を回復しなぜか若返った大臣とでは結果は見え見えだった。


エイジは守りたい人がいた。そのために逃げることになった。逃げたさきには森があった。不幸にもその日は大雨。森の中の地面はぐちょぐちょだ。当然滑りやすくなっているので、


ズルッ


「しまった!」


足を滑らせ転倒し、たまたまそこにあった大穴に落ちてしまった。


ピチョンピチョン


水の雫が落ちる音が聞こえてくる。その音に反応して目が覚める。


「ここは...」


目を開くと目の前には鎖で繋がれた剣が突き刺さってた。


『力が欲しいか?』


「だれだ!?」


頭の中に直接響いてくる声。そこには誰もいない。あるのは剣のみ。


『力が欲しくないのか?復讐できる力が』


「欲しい...復讐できる力が...欲しい!!」


『ならば剣を抜け!そして力を得ろ!!復讐の力を!!!』


鎖に繋がれている剣を引き抜く。莫大な魔力が解放され、鎖が砕ける。


「殺す、殺す、殺してやるぅぅ!!」


彼の心は復讐心で満たされてしまい、ただただあの大臣に復讐することしか考えなくなってしまった。強い魔力は闇の力へと改変していった。


帝都から少し離れた大臣の別荘。


「ひっ...やめてくれ..」

「答えろ、やつはどこにいる?大臣はどこにいる!!」


入り口から1番遠くに位置する部屋。バンッと扉を強引に開ける。


「貴様、何者だ?ん?貴様エイジだな」

「あぁ、そうだよ。俺はエイジだよ。だが前の俺とは違う!」


前のステータスより剣の効果で強制的にあげられている。前のエイジと違うというのはいろんな意味で違うという意味だ。


「ふっ、若返ったこの私に勝てr」

「おしゃべりが好きだな?もうすでに斬ってるぞ」

「なっ!?」


大臣の胴部から血が大量に吹き出る。するとみるみる老いていく。血と一緒に魔力が体外に放出されもとの姿に戻っていった。


「や...やめてくれ...なんでもする...これから危害を加えない...」

「なんでもすると言ったな?」

「あぁ」


すると大臣の口が少しだけつり上がったのをエイジは見逃さなかった。


「じゃぁ、死んでくれ」

「なにを...ぎゃぁぁぁ」


エイジの復讐は果たされた。しかし、復讐に成功した時、剣に体を乗っ取られてしまう。


「まだだ...まだ...足りない


帝都で暗躍するもの、エイジの邪魔をしようとするもの、みんな皆殺しされていった。そこまではよかったが、ついになんの罪もない人にも刃を向けるようになってしまった。


帝都の周辺の町や村を襲ったり、していくうちに自分の家がある町まで来てしまった。町の住民が殺されそうになったが、1人の女性によって止められた。その女性はエイジの妻にあたる人だった。


「もう...やめて...こんなひどいこと...」

「どけ」


抱きつかれて行動が出来なくなる。


「私も一緒に罪を背負うから...だから...こんなことはもうやめて...エイジ」

「っ!?」


復讐で真っ黒だった心に光が差し込む。黒から白へと浄化されていく気がした。目から自然と涙が出てくる。


「ごめん...ごめんよ...」


これでエイジは剣から解放された。罪を犯したのは変わりないので、罰として一生その剣の封印と管理をすることになった。


人の復讐や憎しみの心の塊となったその剣は《災悪の魔剣》と呼ばれるようになった。


この出来事は現在からおよそ300年前のお話。



~~~~~~~~~~~~~~~



錆びた剣から出ていた光は元に戻っていった。


「《災悪の魔剣》...。これがそうなのか?」


目の前に突き刺さっている錆びた剣を見る。


「いかにも、それが《災悪の魔剣》だよ」

「だれだ!?」


声が聞こえるほうに向く。うしろに立っていたのはさっきみていた光景に出てきた男だった。


「ようこそ、世界の理を破壊する者よ」

「あんた生きてたのか?」

「そんなばかな。既に死んだ身だよ。その魔法陣にちょっとした細工をしといたのさ。次にこの魔剣を手にした者のためにね」

「さっきこの剣は危ないと教わったばかりだが?」

「見えたのかい?俺とこの魔剣の記憶を」

「あぁ、見えたよ。魔王を倒し損ねたとこからな」

「そうかそうか。やはり君は才があるね」

「才がある?」

「そうだよ。君にはもともと闇属性の才があるみたいだね。この魔剣とも相性が良さそうだ」

「おいおい、やめろよ?」

「ガチめな話なんだがね。俺は光よりだったけど、君は...2つ?だと」

「ん?」

「いやそもそも...」


エイジが言うにはこの世界では属性によってオーラの色があると同時に魔力にだって色がある。ふつうなら1人の体のなかの魔力は1つしかない。2つあったりすると体調を崩したり、ひどい時には死だってありえる。しかしキンジには2つあった。しかも対をなすもの、光と闇。


「そうか、君の得意としている魔法は『無』なんだね。『無』なんて1000年に1人ぐらいの割合だと聞いたことがあるよ」

「そんなに珍しかったのか」

「もともと『無属性』ってね。相対する属性が五分五分の時にでる属性名なんだよ」


もともと無属性は対をなす魔力を持った人がもつ属性。火と水、風と土、光と闇、というような相対する魔力を同時にもつことで無属性になってしまう。五分五分でないと体に悪いので、どっちかに限定してのばすか、針治療などで片方だけ消すようにすることができるらしい。


五分五分もそれなりに危険だ。片方に偏ると結果は同じになる。しかし、五分五分に直すのも可能で2つとコントロールできえるようになれば、偏ることはなくなり中途半端な魔法ではなく、100%の力を2つ持てるという。2つコントロールできるやつはほとんどいないらしいが、キンジはその才を持っているならば可能かもしれない。


「君の持っている『無』と『無散』って、ようするに光と闇だよね」

「どういうことだ?あんま関係ないかと思ったぜ」

「あらゆる出来事を消す魔法って書いてあるけど、厳密にはあらゆるものの形をもとに戻す魔法なんだよ。これはなんでも治せるということから神の聖魔法と呼ばれているんだ」

「まぁーそれにしては、激痛とタイムリミットがあるけどね」

「あはは。それで『無散』はなんでも消してしまうその人間とか生物とかにこれを使うと跡形もなく消える。まぁそりゃこんな鬼畜魔法は悪魔の魔法だよね」

「神の魔法と悪魔の魔法。それで光と闇か」

「そうだね。君には話すことがたくさんあるんだ。これからのこととか、君が欲している情報とかのことについてね...」

「俺が欲している...」


キンジが欲している情報。それは地球への帰還の情報である。そしてエイジは再び語りだしたのであった。


第11話お楽しみいただけたでしょうか?キンジの独り言から解放されました。会話文があったほうが書く方も楽しいですね。そして、次話は4日以内...といきたいところですが、次話「嘘と真実」は2月21日にさせてもらいます。すみません。大事な時期なんです。

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