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第9話 『無』の能力

こまめに保存って大切ですよね...一回保存せずに書いてたらネットワークエラーで白紙に戻り絶望しましたよ。でもがんばって復元しました。少し短くなってしまいましたがどうぞ。

体をボロボロになりながらも火竜に勝利したキンジ。あの状況下どうやって勝利したのか何が何だか分からずにいた。気づいたら火竜が光の粒子となって消えていった。とりあえず安全な聖堂まで移動して休むことにした。


聖堂のなかの祭壇にもたれかかるように座る。キンジが通った道には血がぽつぽつとたれた跡が残っていた。


胴部には爪でひっかかれた3本の線、左腕はかまれた跡があり、力が入らずぷらんっとなってしまっていた。


「いっつぅ、生きてたのはいいけど、このままだと死ぬよな確実に」


この出血量だと失血死になるまで時間の問題だった。


「なんで勝てたんだろう...」


自分の能力値ではあきらか勝てない相手だった。ステータスを開いて見ると。


金次 Lv.35

攻撃力 3200

防御力 3500

俊敏性 3600

魔力 3500

得意魔法 『無属性』

・『無』あらゆる出来事を無かったことにする魔法。直接触っていて発動可能。代償が必要な時がある。

・『無散』ものを消すことができる魔法。魔力付与で間接でも可能。


ステータスの得意魔法に新しく項目がでていた。


あらゆる出来事を無かったことにする魔法。これは使いようによってはまさにチート級の魔法だ。代償が必要な時もあるとあったが、使ってみなければなにも分からないので火竜戦でものすごく刃こぼれした剣に使用してみる。刃こぼれする前のもとの形をイメージする。すると、白い光が剣を包み込み消えた時にはもとどおりになっていた。


(剣が戻るなら、この傷も...)


剣の刃こぼれが無かったことになった。ならキンジが受けた傷も、無かったことになるはず。キンジは胴部の傷に触れイメージする。


「うぐっ...」


白い光が傷を包み込もうとした瞬間痛みが走った。


「うがぁぁぁ...あ゛ぁぁぁぁ」


痛みに耐え胴部を見てみると、傷は無くなっていた。次に左腕に触れてイメージする。また痛みが走る。


「あ゛ぁぁぁぁ」


左腕の傷もふさがった。キンジは2度による激痛で気を失いそうになったが、なんとか意識をたもち息を荒らげていた。


「はぁはぁ、これが代償ってことか」


傷を治すにはその代償として、受けた時の痛みをもう1度味わうということだろう。そしたらさっき直した剣はどうだろうか、と知りたいことが山ほどあるので確かめようと立ち上がるが、ふらりと体がよろめいてしまう。


傷はがふさがって治っても、血は戻らないようだった。床に落ちている固まった血に魔法を使ってもなにも起こらなかった。破れた服に使っても同様だった。ある程度時間がたってしまったものは無かったことにはできないようだった。


アイテムボックスの中身をあさってみると、ケルベロス戦の前に配布された栄養補助食品と水が1食分だけ残っていたのでそれを食べてひとまず眠ることにした。


一眠りから目が覚める。もう1度ステータスを開き、得意魔法の欄を見る。『無散』ものを無かったことにする魔法。直接さわっていなければ発動しないがこれもあきらかにチートだ。これのおかげであの火竜も倒せたのだろう。剣を突き刺し、たまたま当たった魔石に『無散』が発動し魔石を消して、源が消えた火竜は絶命した、ということだろう。


剣での攻撃なので間接的だったが、偶然なのか魔力付与をしてたらしい。ある程度は感覚を覚えているので、練習すればすぐにでも使えるはずだ。


得意魔法に項目が追加されていたのでそっちにばかり目がいってしまってたが、レベルと能力値も跳ね上がっていた。火竜一体で15もレベルがあがった。48層の魔物を2体倒して1上がるか上がらないかだったが。一気に15となると、自分より高いレベルのやつを倒すとレベルが一気に上がる、というゲーム的なあれだ。


「いや、まさかね...」


火竜一体で15上がる、あまり考えたくはなかった。


食料も尽きてしまっているので、食料調達もかねて探索することにした。


1回来たことのある湖。ヌーもどきがちらほら見える。それぞれの距離はあるので一体でいるのと同じだった。失敗の経験から忍び寄って剣を抜いて攻撃じゃなく、剣を抜いてから近寄ることにする。今思えば馬鹿だなと笑えてくる。こちらに気がつき振り向いた瞬間を狙い、ズドッ、首を一突きして声を上げさせずに、傷を拡張させるように引き抜く。ヌーもどきは声をあげずに絶命する。まわりの奴らは気づいていない。


(なんか、暗殺っぽくて燃える...)


持ってはいけないイケナイ感情を持ちながらヌーもどきを次々に狩っていく。


かれこれ20体ぐらい狩っただろうか、さすがに気づいたらしく、逃げて行くヌーもどきたち。そしてアイテムボックスにいれるたびにステータスが目に入ってしまう。


キンジ Lv.42

攻撃力 4000

防御力 4300

俊敏性 4400

魔力 4500

得意魔法 『無属性』

・『無』あらゆる出来事を無かったことにする魔法。直接触っていて発動可能。代償が必要な時がある。

・『無散』ものを消すことができる魔法。魔力付与で間接でも可能。


レベルが7上がっていた。ヌーもどきを20体狩ると7上がる。


(まじで...ここは何階層だよ)


キンジは目を閉じて静かにステータスを閉じたのであった。


探索していると小部屋らしきスペースがあった。中央には金色に光っているスケルトンがいた。


ゴールデンスケルトンキング。骨全部が金色で普通のスケルトンキングではあきらかに違う。


キンジが魔法を試す相手にはちょうどよかった。剣を抜き小部屋にはいる。あちらもこちらに気づきカタカタ言いながら、走ってこっちに突っ込んできた。その速さは異常だった、いっきに距離を詰められる。サイドステップでよけ、攻撃するも弾かれる。ゴールデンスケルトンキングはいきなり地面を殴った。するとキンジの下から魔法陣があらわれ、そこから尖った岩が飛び出してきた。危うくくらいそうになったがかろうじて避けた。


「こいつ、変種だったのか」


さっきのは多分魔法による攻撃だ。あの尖った岩に当たれば、無数の岩に刺されて串刺しになる。離れていても勝てない。相手はスケルトンなので魔石は丸見えだ。『無散』を使えば攻撃を弾かれることはない。剣に手をかざす。


「『魔力付与』!!」


剣が闇のような紫色のオーラを纏う。ゴールデンスケルトンキングに向けて走り出す、踏み込んだところには少しクレーターができていた。キンジもそれなりにレベルが上がっている。一気に距離が縮まった。それにあせったゴールデンスケルトンキングはさっきの魔法を使ってきた。キンジの目の前に岩が飛び出てくる、それを剣で斬ると光の粒子となって消えた。邪魔するようにたくさんでてきたが無駄だった。そして、距離がゼロになり。


「チェックメイトだ」


魔石を真っ二つにぶった切った。光の粒子となってゴールデンスケルトンキングは消えていった。


「あっ。もしかしたら金になったかもしれないのに、全部消しちゃった」


金色の骨を売れば高く値がつくんじゃね。っとあとから後悔するが、ステータスを開いて見るとどうでも良くなってしまった。


キンジ Lv.48

攻撃力 4500

防御力 4850

俊敏性 4700

魔力 4700

得意魔法 『無属性』

    ・『無』あらゆる出来事を無かったことにする魔法。直接触っていて発動可能。代償が必要な時がある。

    ・『無散』ものを消すことができる魔法。魔力付与で間接でも可能。


レベルが6上がっていた。


「まぁーいっか」


ゴールデンスケルトンキングとの戦いを終えて見渡すと、そこの小部屋には階段があった。


「階段か、しかも上りかいな」


上へと続く階段。しかし、上に行っても危険が増えるだけなので上らない。だったら下り階段もあるはずとおもい探し始めた。が。


「ない...下り階段が...どこにもない」


下り階段がどこにもなかった。どこを探してもなかった。探し回っているうちにこの階層のマップ構成を頭で覚えてしまうぐらい探した。隠し扉の可能性もあるかもとおもってそこらじゅうの怪しそうな壁を探ってみたがなにも起こらなかった。


湖で汲んできた水を飲みながら、聖堂の祭壇にもたれかかっていた。


「積みだ...積みゲーだ」


もうなにもできず放心状態のキンジ。祭壇の上にある、苔がところどころに生えている丸い石の玉をぺしぺししながら、酔っ払いのように愚痴っていた。


「ふざけんなよなぁーひっぐ、どこにもないってどういうことだよなぁーひっぐ」


湖の水でこんな酔っ払いのようにはならないが。石に向かって愚痴をこぼしまくっていた。


水がなくなり、湖まで行って帰ってくる最中に気がついた。


「ってかそもそも、洞窟の中に聖堂っておかしくね?」


今更気づく、ずっと探し回っていたが聖堂だけは休憩所としか思っていなくて調べていなかった。


祭壇の上の丸い石を少しひねってみる。するとズズズっと音を立てながら回った。目をジト目にしながら、ひたすら回してみる。


「これをこうして、こうやって」


回しきるとガコンと音が聞こえてきて祭壇が移動し始めた。祭壇があった場所からは下へと続く階段が現れてきた。キンジはビンゴっといわんばかりに指でパチンと音を鳴らした。


奥へ奥へと導くように光が2列に並びここを通れと誘っている気がした。

キンジ君が得意魔法を開花させました。やったね。次はボス戦?の予感...

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