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83 強襲、ワームネスト

 ワームネストのために、GMで三つの強襲PTが作られた。

 他のGMは、ワームネストの魔物からゲートを守るのと、旧ゴブリンネストに侵入し、魔石を持ち去ろうとするプレデターを倒しながら魔石を回収する仕事を任されている。


 三つの強襲PTのうちの一つが、カナエのPTである。

 カナエの他にメンバーは四人――中学生くらいの少女でボウガン使いポム。〈鉄壁の守護者〉セットを装備するアーマーソルジャーのイージス。フランベルジェの使い手、女剣士リナルド。そして、褐色の肌をした男ベルセルクのファーザ。


 今回、強襲PTに選ばれたGMは、GMの中でも戦闘能力に優れた者で、一騎当千以上の実力者であると。カナエは説明を受けていた。イージスは海兵隊のような雰囲気の、危険に挑んでゆくようなタイプの男で、リナルドは自信に満ちた悪戯っぽい笑顔を振る舞う陽気な女性。ファーザは、やせ型の男だが、その目の奥に好戦的な闘志を覗かせている。


 イージス、リナルド、ファーザは、確かに強者のオーラをまとっていた。

 しかしポムという少女は、常にうつむきがちで、言葉を発しない。表情もほとんど変えない。この女の子で大丈夫か、と思ってしまうようなGMである。


 ワームネスト攻略のワールドクエストが出されてから二時間が経ち、カナエを含めた5人のメンバーは、転移ゲート近くの料理屋で顔を合わせていた。強襲PTが行動を開始するのは、クエスト開始から二時間から三時間が経過した後である。


 その席で、カナエがポムに対して思っていたことを、他のメンバーはカナエに対して思っていたと、カナエは思い知ったのだった。


「貴方がガンナーのカナエ? 大丈夫なの?」


「え?」


 リナルドは、カナエのとぼけた表情を見てからからと笑った。続けてファーザが質問した。


「君が若すぎるんだ。一体いくつだい?」


「ええと――」


 突然訊かれたのでカナエがのろのろしていると、代わりにリナルドか、ファーザに言った。


「年齢の詮索はマナー違反だけどね」


「いや、それは君の世界のマナーだろう?」


「ここのマナーよ」


 リナルドとファーザ、互いに挨拶程度の言い合いが始まる。

 日本人同士ではあまりないが、ここでは、初対面で喧嘩などは、日常茶飯事である。

 カナエとしては、若さを言うならまずポムだろうと思うのだった。


「貴方の事は噂で聞いてるわ。凄腕のガンナーがいるってね。期待していいのかしら?」


「そこそこには……ただ、今ちょっと、ショットガンしか使えないんだ」


「見せてくれよ」


 ファーザのリクエストに応えて、カナエはショットガンを現出させ、テーブルの上に置いた。ピンク色の可愛らしいその銃を見て、皆、噴き出した。


「あははは、何、可愛い! なんて可愛らしいの!」


「冗談はやめてくれ、君は、女か?」


「これは……」


 寡黙そうな男、イージスさえ「これは……」と言って固まってしまった。

 唯一ポムだけが、目を輝かせて、ショットガンの細部の装飾までを鑑賞するのだった。カナエはもういいだろうとばかりにショットガンを引っ張り上げ、再びアイテムスロットにしまった。


『強襲部隊、出番だ』


 ロッシュからVCが届いた。

 皆、立ち上がり、息を吐いた。

 ――戦いだ。



 カナエたち5人は、転移ゲートからワームネストへと移動した。

 転移したゲートはB-3という所で、ちょっとした崖の上である。ワームネストの中心部は、崖を降りた先の、森の中である。ゲートの周辺は、角ばったロボット型のボットとGM、そしてゲートを守るためのクエストを受けたプレイヤーが待機していた。


 ゲートの先には下り坂の洞窟があり、その洞窟を抜けると、ワームネストのメインエリアの森である。


 洞窟の入り口には、早速大型の魔物がいて、ゲート守護のクエストを受けたプレイヤーの一群が戦っていた。巨大なムカデの魔物である。虫嫌いなら、見ただけで戦意を喪失してしまうような代物である。


「〈エンペラーピッド〉――普通なら、奥のエリアにいる奴だ」


 ファーザが言った。

 エンペラーピッドは、口から緑の液体を撒き散らしている。劇毒の液体で、頭からかぶれば、即死必死である。その身体は固い外骨格に包まれていて、アーマー・スキンなしでも鉄壁の防御力を誇る。口には鋭い牙を持っていて、挟まれれば、これもまた、一撃必殺の破壊力がある。


「怖がることないわ。所詮虫よ」


 リナルドは楽勝というように、肩を竦めて見せた。


「同感だ、あんなの、デカいだけの虫さ」


 ファーザもやる気である。

 ポムは何も言わず、ただ状況を見つめている。


「戦う必要はない。先を急ぐ」


 岩のような寡黙な男、イージスが言った。

 ファーザとリナルドは条件反射の様に反対したが、今回のPTリーダーはイージスである。二人は、ぶーたれながらも、イージスに従うことになった。


 エンペラーピッドとプレイヤーとの戦いを横目に素通りして、カナエたち強襲PTは、洞窟の中に入った。洞窟の中にも魔物はいて、それと戦っているプレイヤーのPTがあった。


 ワームネストというだけあって、魔物はどれもこれも、虫である。

 顎の発達したイモムシ、巨大な毒蛾、巨大ナメクジ――ネストの中でワームネストが最も不人気な理由がすぐに理解できるラインナップである。


 洞窟を抜け、一行は森に入った。

 早速、カマキリの魔物がカナエたちを出迎えた。アルティメット・マンティスである。

 一般的には、非常に強力な魔物で、普通はPTでの攻略になる。普段は群れで現れることはないが、洞窟を抜けた先で現れたアルティメット・マンティスは、3匹の群れだった


 リナルドとファーザは、早速剣を抜いた。

 イージスも、鎧姿の戦闘モードに変身する。


「こんな虫けら、一人で充分だ!」


 ファーザが、先陣を切って攻撃を仕掛けた。

 負けじと、リナルドがそれに続く。


「焦るな!」


 イージスは、二人に遅れて飛び出した。

 ポムはボウガンを構え、一番遠くにいるアルティメット・マンティスに矢を放った。カナエはというと、すぐに勝負がつきそうなのを感じて、戦闘は3人に任せることにした。今回は、それに文句を言うようなPTではないのも、承知の上である。


 カナエの読み通り、戦いはものの1分ほどで終わった。

 戦闘が得意なGMのPTというだけあって、アルティメット・マンティスクラスでは、びくともしない。一般のプレイヤーとは次元の違う戦闘能力を持ったメンバーである。


 PTは、そのままネストの中心部に向かって撃侵した。

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