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81 討伐、そして……

「あーあ、ダメになっちゃったな……」


 妖精メイドの二丁拳銃は、ボスゴブリンに致命傷を与えた一撃の出力に負けて、銃口が吹き飛んでいた。


 他方、倒されたボスゴブリンのドロップアイテムをめぐって、プレイヤー間で大規模なPK合戦が繰り広げられていた。アイテムを拾ったプレイヤーは、攻撃を受けないうちに、急いでその場を離れ、安全に町へ転移できる場所へと逃げ込んでゆく。


「カナエ、やったぜ!」


 ガリバーが戻ってきた。

 アイテムでも拾ったのかと見れば、ガリバーは、何もアイテムらしきものを持っていない。ただ満足げな笑顔を作るのみである。


「どうしたんだよ」


「まぁ、こういうことだ」


 ガリバーはそう言うと、大剣を現出させた。

 白刃金の刀身に文字が刻まれ、それが、金色に光っている。

 金の文字は、今までになかったものである。


「まさか、エンチャント!?」


「あぁ、野郎の首を落とした時に、な」


「え、じゃあ……LAはガリバーなのか!?」


「あぁ、俺が仕留めた。で、この結果だ」


 ガリバーはぶんぶんと剣を振った。

 エンチャントした大剣は、穏やな青い光を纏っている。


『GM各位、ボスが討伐された。ネストコアも先ほど回収された。作戦は成功だ。繰り返す。作戦は、成功だ』


 ロッシュからVCが届く。

 カナエは、ほっと息を漏らした。

 PKはまだ続いているが、それはもう、GMの介入する問題ではない。少なくとも、UC課のGMは。プレイヤーの行動管理を任されているPL課のGMは、このPKを収束させる大仕事が、これから始まる。ともあれ、カナエにとっては、関係のない話だった。


「さて……戻ろうか」


 カナエは立ち上がった。

 その時、自分たちの周りに「何か」がいることに気付いた。

 ショットガンを現出させ、その「何か」に向けた。


「うあっ……!」


 リアムが倒れた。

 リアムの身体は地面に転がり、風化していった。


「リアム!」


 ロッテが叫んだ。

 直後――。


「なっ、くそっ……やられ、た……」


 ガリバーが倒れた。

 何かに斬られたのだ。


「何かいるよ!」


 ロッテがそう言って、杖を構えた。

 アオイは一角兎を召喚し、周囲を警戒する。アオイも、うっすらとその何かの気配を感じ取っていた。


「カナエ様、一体何が……?」


 エトワは、カナエに質問した。

 ロッテやアオイには見えかけているその「何か」は、エトワには全く見えていなかった。そしてカナエは、その「何か」の輪郭を、把握することができていた。


「プレデターだ」


 カナエは答えた。

 しかしそれは、おかしなことだった。ボスが倒され、ネストコアも回収され、ネストが崩壊したのだから、それによって力を得ていたネスト内の魔物は、力を失うはずである。瘴気の残滓が残っていて、それに力を辛うじて得ている魔物もいるだろうが、プレデターのような強力な魔物は、それだけで残存できるとは考えずらい。


 アオイの召喚獣、一角兎が、プレデターに攻撃を開始した。

 一角兎の角レーザーの一撃は、プレデターに避ける間を与えず、その胴体を貫いて絶命させた。


『カナエさん、無事ですか!?』


 ケイからのVCだった。

 カナエは、襲い掛かってきた半透明のプレデターをショットガンで倒し、VCに答えた。


「プレデターに襲われています。これ、どういうことですか」


『こっちも今情報が跳び散らかってて……』


「ネストの魔物は、その所属するネストの力に依存して魔物たりえる、でしたっけ」


『まぁ、一応基本はそうですね』


「ということは、ネストコアがなくなっても活動している魔物について、考えられることは一つですよね。要するに――プレデターは、他のネストに所属している」


『でもそれはありえません。自分の所属するネストの範囲を超えて、魔物は活動できないんですよ。しかも、他のネストまで足を伸ばすなんてことは――』


「……いや、ケイさん、最近その事例があったはずですよ」


『え? そうなんですか!?』


「ワームネストの――最近ロッシュ班長が相手にした、ギガマンティスの変異種の件、聞いてませんか?」


『ちょ、ちょっと待って――あ、ありました。これって……』


 カナエは、ケイとのやり取りの間にも、襲い掛かってくるプレデターを倒していた。ロッテとアオイ(の一角兎)も、戦っている。フォレストゴブリンという名前ながら、その戦闘能力は、他のゴブリンとは比較にならないほど、高い。その動きは忍者のようである。


 プレデターたちは、ボスゴブリンの倒れたあたりで、何かを拾っているようだった。それを持って、クレーターの外へと走ってゆく。そのうちの一匹を、カナエは撃ち殺して、その持っていたものを確認した。


 それは、魔石だった。

 ボスゴブリンの心臓はネストコアで、これはすでに回収されたが、ネストコアから発せられた邪気は、他にも無数の魔石を、ボスゴブリンの死と同時に発生させた。その魔石を、プレデターは持ち去っているのだった。


「(魔物が魔石を集める理由は何だ?)」


 カナエは、疑問と同時に、一つの答えが、直観的に閃いた。

 ――魔石を使って、自分たちを強化しようとしているのではないか? しかも、「個」として強くなろうとしているのではない。プレデターは、「集団」として何かをしようとしている。


「(まさか……自分たちのネストを作る気か……)」


 運営の知っているこの世界の「仕様」には合わないが、運営もこの世界のルールを知り尽くしているわけではない。カナエは、自分の直観に、妙な確信があった。


『ギガマンティスの目撃情報だ! クレーターの外で、ギガマンティスが発見された!』


『おいおい、どうなってやがる! ギガマンティスがこんな所にいるわけねぇだろ!』


 ロッシュのVCに、レクスが反応する。

 他のGMも、レクスと同じような反応を示す。

 しかしカナエは、妙に納得する部分があった。「当然」そうなるだろうと、そんな風に考えていた。


「皆、プレデターを追おう! 急げ!」


 カナエは、待たせていたオオカカポのもとに駆けた。

 皆も、その後を追った。


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