40 銃使いは公式クラスになりえない
「オーバーキルだぜ、ルシア」
レクスは、半分ホッとしたように、へらへら笑った。
炎ソサ最大の攻撃スキル、〈ドラゴンブレス・フレイム〉。ルシアは、それの使い手だった。本来対人の、しかも1対1で使うようなスキルではない。
竜巻が消え、〈メテオストーム〉の火球も、火柱もなくなった。
ルシアは〈ファイヤーアロー・ラッシュ〉の魔法陣を消した。
巻き上がる砂。
高熱のために揺らめく空間。
蜃気楼ができている。
「ま、善戦したほうさ。見直したぜ、カナエとか言ったか? 確かに、新人にしちゃあ――」
言いかけたところで、レクスは言葉を失った。
蜃気楼の中から、その、スーツの男が出てきたのである。右手にはショットガンを持ち、だらんと腕を下げている。
カナエは、ルシア目がけて駆けだした。
ルシアは〈ファイヤーアロー・ラッシュ〉と、〈メテオストーム〉の単発スキル、〈メテオ〉で応戦する。
カナエは飛んでくる炎の矢を人間離れした宙返りやら側転やらで躱し、〈メテオ〉はショットガンで相殺した。
一気にルシアとの距離を詰めたカナエは、ルシアに銃口を向けた。
ルシアは、後ろに下がりながら〈エクスプロージョン〉を放つ。カナエもろとも、ルシアの前方の空間が爆発する。
――が、カナエはそれを空中に跳び上がって躱していた。
ルシアの頭上で半ひねりを入れて、着地する。
ルシアは、振り向きざまに、後方へ〈エクスプロージョン〉を放つ。
カナエは、ルシアの足元に転がり、さらにその背後に回り込む。
ルシアがカナエを見失った瞬間、その立派なヒップ上、腰椎にショットガンの銃口があてがわれた。
ルシアは動きを止めた。
次の瞬間、一発の銃声が闘技場に響いた。
勝負は一瞬、カナエの勝利で幕を閉じた。
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「――面白れぇ」
レクスの目が、ギラリと怪しく光る。
映像が終わり、モニターはショットガンを持って立ち尽くしているスーツのカナエと、その足元で倒れているルシアの絵を映し続けている。
そこへ、白髪を短く切り揃えた男――GM部統括のライデカーがやってきた。
「ケイ、カナエに伝えろ」
「はい! ええと、何をですか?」
「モンスターハウスは禁止だ」
「え! 何でですか!?」
「銃使いは公式クラスになりえない」
「え、でも、アプデ後の話だと、〈レンジャー〉系のクラスを追加するって言ってませんでしたっけ?」
「銃使いではない。モデルをどうするかは、まだ議論の最中だ」
「ポムじゃダメなんですか?」
「我々の決めることではない」
ライデカーはそう言うと、行ってしまった。
「〈レンジャー〉のビルドモデルにポムか。ふんっ、無理に作る必要があるのかねぇ」
レクスが言った。
「強ければいいじゃないですか」
「強ければ、だろ? 英霊を立てて、聖印を受け取ったところで、ベルセやソサや、アマほど強くなるとは思えねぇな」
「でもレクスさん、ポムみたいに、聖印なしで〈レンジャー〉プレイしてる人も、ごく少数ながらいるじゃないですか。そういう人たちが聖印を得たら、もっすごいと思いません?」
「どんな聖印になるかによるだろ。タイプに合わない聖印だったら、むしろ動きづらくなる」
「誰をビルドモデルにするかですね、結局」
「誰がいるんだよ」
「これ、リストです」
ケイが、モニターの一つに「〈レンジャー〉プレイ系のプレイヤー」のリストを表示させた。100ほどの名前が記載されている。〈アーチャー〉、〈ムンク〉、〈ニンジャ〉等々……愛すべき、ロマンの探究者たちである。
「お前、良く調べたな、こんなの……」
「オペレーターやってると、情報は集まってきますからね」
「〈ガンナー〉はいないのかよ」
「カナ君意外だと、いるにはいますけど、たぶんそろそろ、心が折れる時期だと思います。実質、〈ガンナー〉で戦えるのは、カナ君だけです」
「そりゃあ、クラスにならないのも納得だな」
「僕の予想ですけど、たぶん、〈アーチャー〉が来るんじゃないですかね」
「いるのか、いいのが」
「ポムも、広義で言えばアーチャーですし、他にも数人いますよ。皆、結構強いです。そのうち一人は、局がスカウトを考えてるみたいです」
「ほぉ――ところで、ルシアのやつは、今何してるんだ」
「アリーナに籠ってるんじゃないですか」
「あいつらしいな。――にしても、カナエか……」
「興味出てきました?」
「まぁ、ちょっとな」
そう言って、レクスはオペレーションルームを後にした。
モニターに映されたままのリストに、ケイは目をやった。仮に付けたクラス名、その中の一つ〈スリングシューター〉――ケイは、その名前を見ていた。一月前に現れて、すでに15人のプレイヤーが、そのスタイルでプレイするに至った。
ケイは首を振り、リストを消すと、カナエにVCを繋いだ。
『何かありました?』
「ちょっと、統括から命令が出ちゃいました」
『命令ですか』
「モンスターハウスにチャレンジするのが、禁止になりました」
『え!? それは、GMだからですか!?』
「ううん、カナエさんだけ」
『な、なんでですか!? それでこれから荒稼ぎしようと思ってたのに!』
「まぁまぁ、カナエさんならきっと、他の手段でも金策できるから」
『マジですかぁ……』
カナエの落胆に、ケイは思わず笑ってしまった。




