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31 ゴブリンネスト①

 クランでネストに行こう、ということになった。

 行くのは、最初期のネストである、〈ゴブリンネスト〉。初期のネストだからと言って、難易度が低い、ということはない。どのネストも難易度は同程度で、中心である〈ネストコア〉に近づくに従って、出現するモブの強さや密度などが上がってゆく。


 ゴブリンネストの転移ゲートは6つあり、いずれのゲートも、草原の中にある。

 草原には、動きの遅いスライム系のモブ、小さなゴブリン、獰猛な兎型のモブ、そしてヘビ型のモブが出現する。腕に覚えのあるプレイヤーは、草原を突っ切って森までやってくる。森に入ると、草原のモブよりも手強いモブが頻出するようになる。


〈ラブ・ネスト〉の三人は、草原を抜けて、森を歩いていた。

 カナエが先頭、後ろにはロッテとエトワが並んで歩き、その後ろから、オオカカポとペガサスが、これもまた並んで歩いている。


 なぜ、カナエが、こんな企画を用意したのか。


 GMは、時にプレイヤーの力を借りて任務にあたる。ケイがカナエに、クランに所属するよう言ったのは、そのためだった。力を貸してくれるプレイヤーを作る――それは、UC課のGMが必ずしておかなければならない事であった。


 クランを作り、メンバーが入ったからには、カナエは有事に備えて、そのメンバーの実力を、しっかり見定めなければならなかった。


 森ゴブリンの群れと遭遇した。

 草原のゴブリンよりも一回り大きく、肌も木の幹のようにごつごつしている。手には小さな斧を持ち、人間を見ると、一斉に襲い掛かって来る。


「ロッテ先生、出番です」


「え、私がやるの!?」


「よろしく」


 カナエは下がり、ロッテの背中を押した。

 もはや、躊躇っている時間はなかった。


「メタモルフォーゼ!」


 ロッテが、魔法少女に変身する。

 虹色のひらひら衣装、星のついたレインボーステッキ。

 ロッテがステッキを振ると、シャボン玉のようなものが噴出した。しゃぼん玉は、森ゴブリンにぶつかると、爆発の連鎖を起こした。

 メルヘンチックなのに、エグいスキルである。


 カナエは、先日購入したソーサラースキル辞典にそのスキルを見つけた。〈バブルボム〉という、無属性魔法である。取得難易度は、☆3つ。ちなみに、〈レビテーション〉は、☆5つの最高難度のスキルである。


 少し歩くと、再び魔物が現れた。

 今度は、切り株小僧という、一本足に一つ目の、妖怪のようなモブである。その手や舌は蔓のように伸び、獲物を巻き取って殺すのだという。


「ロッテ!」


「また私!?」


「お願いします」


 背中を押され、再びロッテは、否応なく戦うことになった。


 切り株小僧は数匹の集団でいた。幾本もの舌や腕が、ロッテに伸びる。ロッテはそれを、〈レビテーション〉で躱しながら、黄色い光のブーメランを放った。ブーメランは宙を旋回しながら切り株小僧の身体を切り裂いていった。


 スキル名〈カイリーラッシュ〉、☆4つ。1つだけのものは〈ライトカイリー〉で、難易度は☆2つのスキルである。


 モブを倒しながら、森の奥に、ずんずん進んでゆく。

 奥に行けば行くほど、モブは強力になり、数も増える。



 木の上、弓を構えた小さな体。

 ゴブリンアーチャーが現れた。


「ロッテ――」


「なんでさっきから私だけなの!? マスターも戦ってよ!」


「後方支援してるから」


「な、なんでぇ!」


 矢が飛んできた。

 ロッテは木々の隙間を縫うように飛翔し、〈カイリーラッシュ〉を放った。何匹かは倒したが、ゴブリンアーチャーはすばしこく、数が多かった。ひゅん、ひゅんと、矢が絶え間なく放たれる。


「マスター、早く戦って! 私一人じゃ無理ぃ!」


「頑張って!」


「頑張ってじゃないよぉ!」


 ロッテの〈レビテーション〉は、天才的としか形容できないほど、洗練されていた。上昇、下降、旋回、まるで人間はもともと飛べるんだという錯覚を起こしそうなほど、動きにストレスがない。その完成度のせいなのか、ロッテの背中からは、青と紫の光が、カラスアゲハの翅のような形で放出されている。


 しかし、ゴブリンアーチャーの数と、飛んでくる矢とに、ロッテは落ち着きを失っていた。サクッ、サクッと、ロッテは幾本かの矢を受けた。致命傷ではないが、無視できないダメージである。


 見かねて、エトワが墜落し始めたロッテに駆け寄った。

 矢傷を負ったロッテに、ヒールをかける。矢はその間も二人に降り注いだが、そこはエトワである。〈セイントカーテン〉という白い防御壁によって、ことごとく弾き返した。


「数が、多すぎるよ……」


 エトワの防御壁の内側、ロッテは頭上を見渡した。

 飛んでくる矢と、幾体とも知れないゴブリンアーチャーの群れ。


「ロッテ、敵の数はどれくらいだ?」


「わからないよ!」


「どれくらいだと思う?」


「50匹くらい!?」


「10匹前後だよ」


「え!?」


「こいつらすばしっこいから、木から木に移動する。それをロッテは、別の一体だと思い込んでるんだ。落ち着いて、一匹ずつ倒してごらん」


「でも、矢がっ……!」


「反応する必要のない矢まで避けようとするから、余計に大変になるんだよ。当たったところで大したことないんだから、もうちょっと余裕を持った方がいい」


 カナエの言葉を聞いて、ロッテは努めて力を抜いた。


「ロッテ様、ご武運を」


 エトワに応援され、ロッテはその気になった。

 再び飛翔し、防御壁の外に飛び出す。

 矢が飛んでくるのを、避けずに、近くにいた一匹に光線のような一撃――〈フォトンレイ〉を放つ。矢は、避けなくても勝手に外れ、〈フォトンレイ〉はゴブリンアーチャーを一発で仕留めた。


 形勢逆転。

 冷静になったロッテは、1分程度で、ゴブリンアーチャーの一群を倒したのであった。


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