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21 白チョコの塔のバグ②

 ボス部屋――真っ白い絨毯が敷かれていた。

 20メートル以上ありそうな、高い天井。壁には、お洒落な燭台の蝋燭が掛けてある。

 扉が勝手に締まった。


 ――お客人だ、おもてなしをしなさい――


 ――はい!――


 そんな声がどこからともなく聞こえてきた。

 元気の良い返事の後、モブが壁から飛び出してきた。

 小学生くらいの身長の、雪ん子のようなモブである。


「ミニホワイトチョコマンです! チョコを投げてきます!」


 研究者が言った。

 本当に、チョコを投げてきた。チョコ自体に殺傷能力はないが、床に落ちたチョコはどろっと溶けだして、ホワイトチョコの沼を作った。

 チョコを投げ切ったミニホワイトチョコマンは、2本の小さなナイフを手に、カナエに襲い掛かかってくる。小さく、すばしこく、そして、数が多い。


 カナエはちびっ子の突進を跳んで躱しつつ、ショットガンを撃つ。二発の銃声――ヘッドショットを受けた二匹が砕け散る。


 着地と同時に三匹目、四匹目。

 突っ込んできたのの頭に銃口を当て――五匹目。

 先は長い。


「カナエさん! 助けて、助けてくださいっ!」


 逃げまどうスーツと白衣。


「ちょっと逃げててください」


 カナエは、包囲を突破して、二人を狙っていたチョコの小人の半分を倒した。しかしまだ五匹くらいは残っている。


「カナエさん、まだ、まだいます!」


「逃げててください」


「「ひえぇええ!」」


 自分たちの作ったモブに追われる二人。

 守りながら戦うのは、カナエにも難しかった。守るよりは攻める、それが、カナエ流のショットガン戦法である。


 第一フェーズ、100匹を倒しきった。

 カナエは、アップ完了というくらいだったが、追われ続けた二人は息を切らし、目を真っ赤にしていた。


 第二フェーズ、150匹。

 壁から出てくるのは――。


「ホワイトチョコマンです!」


 今度は、人間くらいの身長の、すこし肥えたチョコマンである。

 彼らはなんと、口からホワイトチョコソースのブレスを吐く。部屋が一気に、甘ったるくなった。


「カナエさん、お助けぇぇ!」


「頑張ってください」


 カナエは、集まってくるホワイトチョコマンを、片っ端から撃った。ミニホワイトチョコマンよりはずいぶん遅いが、それだけ攻撃力と、耐久力が高い。が――一撃で倒せるカナエにとっては、ホワイトチョコマンのほうが、ミニホワイトチョコマンよりもやりやすかった。


 150匹を倒しきり、満身創痍なのは、総務と研究者である。。

 二人は、体中ぶっかけられたホワイトチョコレートだらけで、泣きそうになっていた。


 ――面白い。では、私が直接お相手しよう!――


 声とともに、ボス――ホワイトチョコ伯爵が天井から降ってきた。

 髭を蓄えた老人で、チョコフォークの鉾を持っている。

 壁からは、ホワイトチョコマンよりも巨大な、ジャイアントホワイトチョコマンが現れた。彼らは、頭に色とりどりのボンボンカップを被っている。


 そしてもう一匹、天井から落っこちてきた。

 繰りぬいたカボチャの頭、カナエと同じような真っ黒いロングコート、手には三つ爪の刃物――ジャック・ランタンだ。


「トリック オア トリート!」


「「季節いつだよ!」」


 白衣とスーツが、へとへとになりながらも突っ込みを入れた。

 カナエは、そう言う二人に突っ込んでやりたかった。


「なんで間違えたんですか?」


 伯爵のチョコフォークを躱し、ジャイアントホワイトチョコマンを倒しながら、カナエは二人に訊ねた。二人は、ジャイアントホワイトチョコマンに追われながら、研究者の方が応えた。


「うっかりです!」


 どんなうっかりだよ、思いながら、ジャイアントホワイトチョコマンに弾丸を浴びせる。的が大きい分、カナエにとっては、やりやすい相手だった。腹や頭なら一撃で倒せ、腕や脚でも、二発で倒せる。


 2分ほどで、ジャイアントホワイチョコマンは全て倒しきった。

 総務と研究者は、部屋の隅っこの方で、壁にもたれかかり、ぐったりしている。


 伯爵は、老体ながら、そのチョコフォーク扱いはなかなかのものだった。体を回転させながら、相手に中心を取らせないような動き、誘い、そして、突きの連撃。

 ジャック・ランタンはもっと攻撃的だった。

 防御を考えずに、ひたすら、その両手の爪でカナエを引っ掻き回す。


 カナエもショットガンで応戦するが、さすがにボス、即死させることはできない。

 とはいえ、ショットガンの一撃が、二体のボスに大ダメージを与えていることは、誰の目にも明らかだった。


 カナエは、ジャック・ランタンに的を絞った。

 爪をかいくぐり、散弾の雨を降らせる。

 ジャック・ランタンも素早いが、カナエはそれを翻弄するトリッキーな動きで、ジャック・ランタンの四方八方から、攻撃を加えた。


 やがて――


 ズバアアアンッ!


 ジャック・ランタンが仰け反り、そのまま背中から倒れた。

 真正面から、胸にショットガンの一発を食らったのだった。


 カナエは倒れるジャック・ランタンの腹を踏み台にしてさらに飛び上がり、くるくると回転しながら、伯爵の頭の上を飛び越えた。


 ホワイトチョコ伯爵が振り向く。

 が、それよりも一瞬早く、カナエのショットガンが火を噴いた。

 伯爵の首筋にあてがった銃口から、火花を散らす。


 ズバアアアンッ!


 伯爵はよろめき、膝を付いた。


 ――溶けて消えるも 我が運命か――


 意味深な言葉を残して、伯爵は倒れた。

 砕け散ったホワイトチョコレートの中に、アイテムが出現した。白色の、ビー玉のような結晶と、小指くらいの小さな白い鍵、そして、白いチケットのような紙が10枚ほど。


「いや、すごい、本当に一人で倒してしまうとは」


「悔しいです……」


 総務と研究者は、そう言いながらやってきた、ビー玉のような結晶――魔石のもとにしゃがみ込んだ。研究者は懐から注射器のようなものを取り出し、針を魔石に刺すと、ピンク色の液体を注入した。


「これで大丈夫です……」


 研究者、ホッと一息ついた。


「あとはこれが消えるまで待つだけです」


 やがて、魔石はすうっと透過して消えてゆき、バグの修正処理は終わった。

 カナエは、ショットガンの修理費として不足していた15万Mを、この仕事の成功報酬として後日、受け取ったのだった。


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