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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

男の思いは呪いのように

作者: えるむ

 今日私は人生で初体験をする。

 処女だが、人と交わるとかそういう恋愛や、愛のある類のものではない。


 目の前で人が殺される行為を見る事が出来るのだ。


 ひと月前、国中が一週間ほど警戒態勢になった事があった。


 『夜中に出歩いてはいけない、もし出歩く者が居た場合は射殺する』


 と、非常に緊迫感のあるお触れが出たのだ。


 この国は強国に囲まれる小さな国であり、国軍もお世辞にも強いとは言えない。

 立地的に高い山々に囲まれていた事もあり、天然の要塞であったため今も国が存命していると言われてみれば納得してしまう。

 だが、今回発生した警戒態勢というものは

 【他国が攻め入ってきたから】というもっともらしい理由ではない。


 殺人鬼――。


 夜中に人を次々と殺す。そういう事件が多発したからである。

 人が殺され始めたのは三ヶ月ほど前から、最初は一週間にひとり程度の頻度だったが、日数を重ねるにつれ、三日にひとり、二日にひとり……ついには毎日、人が殺されるようになったのである。

 この事実を重く見た王は、夜中に国民が外に出る事を禁じた。


 普段は人々が酒場で騒ぎ出す時間帯だが、街を歩いている者など一人もいない。

 当然、店も閉店している。国に入ってくる為の唯一の石門も硬く閉ざされている。

 歩き回っているのは警備の兵くらいなものだった。


 その警戒態勢が敷かれてから三日目、殺人鬼はあっさりと捕まった。


 話を聞くと、警備の兵士に向かって歩いて来て――。


 「俺が殺した。捕まえてくれ……もう、飽きた」


 と言ったそうだ。


 その男が目の前で、殺された遺族に今まさに刺されようとしている。

 涙を流しながら夫の名前を叫ぶ女性。

 無言で殺人鬼を睨みつけながら槍を構える男性。


「やれ」


 冷たい言葉と共に多くの槍が殺人鬼に突き立てられる。

 

 その時、殺人鬼は笑っていた。

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