Scene57『尊とカナタの現状把握』
ゾーン癖中に鳳凰に問われ尊は、答えを持たないが故にその思考を更に深く沈め、外の情報すらシャットダウンして考え始めた。
状況と環境を僕達に都合のいいように変えるには、一体どうしたらいいんだろう?
ううん。それを考える前には、まずはどう都合が悪いのか整理する必要があるよね?
(了解しました。プレイヤーにとって不都合な状況・環境を表示します)
まずはフェンリルになにを掌握されているからいこうか。
(『強制転送システム』)
プレイヤーの強制転送先の変更や、僕に対するシステム停止を行っていたことから、ほぼ掌握されているのは間違いないよね。もっとも、使用状況とシステム的深度から停止までは全プレイヤーに反映できない可能性が高い。ん? そういえば、転送球のシステムも同じシステムが活用されているのかな? 転送は転送だし。
(肯定します。転送球並びにリスタートスフィアも同転送システムの管理下にあります)
その対象はプレイヤーにも及ぶ?
(及びます。強調します。ただし、なにかしらの起点が必要になり、それ以外の場所への自由な転送はできません)
転送球・リスタートスフィア設置場所以外には飛べないってこと?
(肯定します)
じゃあ、狭間の森に飛ばされた人達は、脱出した時に使った転送球の周りに飛ばされているわけ?
(肯定します)
フェンリル側が転送システムを使ったのは確認できている?
(確認されています。紛れ込んでいたフェンリル工作員を特定した際に、プレイヤーから逃走手段として使われていました)
だとすれば、フェンリルを倒すには、転送先を抑えないといけないわけか……転送先の特定は?
(謝罪します。申し訳ありません。まだできていません。強調します。ですが、ティターニア城であることが推測されています)
うん。僕もそう思う。じゃあ、次。
(『武装精霊専用SNS妖精広場』)
書き込みの禁止。解禁しても不都合な情報を投稿される前に削除できるなどから完全に掌握されているね。そこから考えると、妖精広場で介された会話や公開されている情報は、例え鍵を掛けていてもフェンリル側に筒抜けになっているって考えるべきだね。
(肯定します。言い添えます。なお、強制通信とマスターが呼んでいたギルバートからの通信も妖精広場の同システムを介しています)
なるほど……どちらにせよ。これは今後まともな利用はできないね。
(『武装量子精霊の大樹』)
カナタを生み出して以降は、QCティターニアによって武霊の生成は凍結されているんだったよね?
(肯定します。よってフェンリルが武装量子精霊を得ることはありません。強調します。ただし、生成機能自体は生きているので自動兵器生産工場として利用されています)
そうだね。それは僕達が直接目撃したから間違いない……あの大樹って狭間の森にあるの?
(否定します。元々QCティターニアには存在していないシステムであり、他追加システムより演算領域が膨大であるため、外付けQCに存在しています)
つまり、別空間に存在しているってこと?
(肯定します。また外から入ることはできても、内から入ることはできない一方通行仕様です)
介入するにはQCティターニアからしかダメってことだね。
(肯定します)
じゃあ、どうしようもないね。
(『ティターニアワールド内在時間』)
VR体管理システムがログアウトを拒否したことからも、時間を加速しているというのは嘘ではないよね。そして、こちら側の時間が加速しているから、最初っから繋がっていた者達以外は外でも内でもずれによってアクセスできない。
(肯定します。少し訂正します。アクセス自体は可能です。強調します。ただし、そのためにはそのずれを正確に計測し、アクセス先かこちらかを合わせる必要があります)
時間を掛ければできるってことだよね? こっちのコントロールはフェンリルに掌握されているから不可能だとして、外の場合はどれくらいの時間が必要なんだろう? ギルバートが宣言した現実時間の一時間以内で可能かな?
(不明です。強調します。ですが、直ぐに合わせられないようにこちら側の時間の流れを一定にしていないとも考えられますので、そうなっていた場合、発生から一時間という時間では無理だろう。と、推測しているプレイヤーはいます。また、まだ外にこの事態が発覚していない可能性もあります)
そっか、知らせるために送り出されたカナタは伝える前に送り戻されちゃったんだものね……僕と一緒に。
(肯定します)
……いや、別にいいけど、もうちょっとこと……なんかね?
(疑問符を浮かべます。意味がわかりません)
うん。まあ、わからなければいいよ。
次はまだ完全に掌握できていないものだね。
(了解しました)
(『QCティターニア』)
完全に掌握されていたら……どうなるの?
(推測します。QCティターニアはこの世界を構築し維持し続けるだけの仮想異世界創造シミュレーターです。よって、完全に掌握された場合、この世界の全てを自由にすることが可能になります)
よりフェンリルにとって都合のいい世界に作り替えることもできるわけだね。だとすれば、後から追加されたシステム以外なにも変化していないことがQCティターニアのクラッキングが終わってない証拠になるね。彼らの目的を考えれば、より現実的な環境の方がいいわけだろうし。
(肯定します)
確認だけど、クラッキングが進んだ場合、フェンリルがティターニアワールドの一部でも操れるようになる可能性はある?
(否定します。ありません。QCティターニアにとってこの世界の創造そのものが存在意義であり、ワールドそのものが彼女自身であるため、そこまでできるようになるためにはクラッキングを完遂する必要があるでしょう)
なら、その点だけは最後の最後まで大丈夫なわけか……
(『人専用自動兵器コントロールシステム』)
ギルバートが語った目的から考えれば、QCティターニアのクラッキング完了と同じレベルで必要になるシステムだよね。
(肯定します。これが完成しなければ、例え全世界のQCを乗っ取られても容易くQCを奪還できるでしょう)
でも、それは同時に武霊さん達、ううん、ナビさん達が全員死んでしまうことを意味するよね……
(肯定します。強調します。ですが、現在これの阻止が最も可能性があるフェンリル打倒の手段です。
僕は……これ以上、誰も死んでほしくないよ……ううん。死なせない!
(確認します。その方法は?)
それは……ん~……全部整理してから改めて考えよう。
(了解しました)
(『紋章魔法技術』)
既にある程度の紋章魔法技術は把握されているみたいだけど、元々はプレイヤーさん達が発見して発展させている技術を流用しているだけだよね?
(肯定します。強調します。ただし、その使い方はガーディアン系魔物をベースに自動兵器に組み込んだものが主なようです)
今のところは。でしょ?
(肯定します。現在確認されているのは、アーミービー・アーミーアント・ノーフェイスの三種のみです)
ガーディアン系に組み込まれている紋章魔法装置を転用しているのかな? 武装量子精霊の大樹が外付けQCにあるってことは、ティターニアワールド内の法則を適応できないってことだよね?
(肯定します。あの空間には魔法法則は存在しません)
なら、紋章魔法を操る装置は生成段階で組み込めないよね? それとも組み込めるのかな?
(確認します……報告します。紋章魔法装置には魔術回路が組み込まれているので、この世界でしか作ることができないようです。強調します。また、今のところその製造方法は発見されていないそうです)
地上にも今まで踏破した地下ダンジョンにもガーディアン系製造工場がなかったってことだね。
(肯定します)
ティターニア城にある可能性は? プレイヤーが入れないエリアがあったって話だよね?
(肯定します。強調します。ただし、探索の際に見付かった地図によると、ティターニア城自体には観測所以外はなにもないと判明しています)
観測所って、外を見る?
(肯定します。強調します。ただし、守護の大樹の増殖によりそれも使えなくなっているようです)
探知領域で確認済みってこと?
(肯定します)
守護の大樹って、フェンリル側も壊せなかったりする。
(肯定します。QCティターニアの守護を受けている以上、守護の大樹もティターニアワールドと同様です)
なら、フェンリルも外がどうなっているか知らないわけか……
考えて見ると、フェンリルがどうにもできないことって結構あるのかな? うん。次はフェンリルのコントロール下に置かれていないものだね。
(了解しました)
(『ティターニアワールド』)
出来ることといえば、この世界上での現象だけだね。
(肯定します)
こっちはある程度できるけど、現代兵器を向こうが無尽蔵に生産できる以上、コントロールできないからといって脅威になりえないってことはないよね。むしろ、現実的であることが現代兵器の脅威度を増させてしまっている。
(提案します。こちらも現代兵器で対抗すべきでは?)
それは……あんまりよくないかな?
(確認します。なぜですか?)
自動兵器のコントロールシステムが魔法で戦うよりフェンリルが望む形になるからね。
(理解しました。魔法での戦闘の場合、現実基準に合わせるためにその都度修正が必要ということですね?)
うん。多分、フェンリルの隊員が直接戦闘に参加していないのには、そういう理由もあるんじゃないかな? まあ、素人の憶測だからもしかしたら別の理由もあるかもしれないけど。
(報告します。武霊ネットはマスターの考えに肯定しています)
ありがとう。まあ、そういうわけだから、プレイヤーの皆さんには極力現実的じゃない戦い方をしてもらわないとね。そういう意味で考えると、プレイヤー以外の存在というのもかなり重要になってくるかもしれないね。
(『魔物』)
リビング系とガーディアン系にしか遭ったことないけど、他の魔物っているの?
(肯定します。強調します。ただし、その多くは死体や魔法素材として部分確認されているものがほとんどであり、生きた個体は今のところ小型の動物系・昆虫系・植物系のみのようです)
地上や一階から三階までの環境ではそれ以上は生き辛かったってことかな?
(同意します)
ちなみにその魔物から取れる魔法素材って強力?
(否定します。微熱や微風を出せる程度の魔法しか持っていないようです)
小型であればそんなものなのかもね。そう考えると、強力な紋章魔法を得るためには今いる階層より下の方が可能性ある?
(肯定します。その通りだと推測されています)
なら、後の問題は、ガーディアン系かな……
(確認します。ということ?)
ほら、ガーディアン系って自動兵器を基にしているでしょ? 見た目だって色違いって感じだし、もしかしたらフェンリルがコントロールできるんじゃないかな? って。
(理解しました。強調します。ですが、その点に関しては心配ありません。ガーディアン系の構造は紋章魔法が多用されている上に、QCティターニアからのコントロールを離れて暴走状態にあるので、何者にも支配されることはないと推測されています)
かなりの年月放置されていたみたいだしね……魔物化しているって感じなのかな?
(肯定します。構造解析したプレイヤーの話によれば、見た目は自動兵器と同じでもそれだけでは説明できない部分が多くあり、再現するためにはもっとこの世界の魔法法則について研究する必要があるそうです)
なら現時点ではガーディアン系をどうこうできることはフェンリルにもプレイヤーにも無理ってことだね。
(肯定します)
(『プレイヤー』)
はQCティターニアの管理下に置かれているわけじゃないよね?
(肯定します。各プレイヤーが所属する国が使用しているQCによって基礎は維持され、この世界での活動においてのみ契約武霊が管理している状況です)
武霊さん達が管理を止めたらどうなるの?
(回答します。活動が停止し、強制ログアウトが起きるでしょう)
そうなったらVR病が発病するわけか……
(追加します。正式アプローチによるログアウトではないので、その際にVR体も破壊されます)
つまり、ほとんどVR体破棄なんだね?
(肯定します。よって我々武霊は契約上の問題から自らは勿論、プレイヤーからの申請があった場合でも管理放棄はできない仕様になっています)
プレイヤー自身でもどうにもできないわけだね。なら、フェンリルは?
(考察します。管理している武霊にクラッキングを行えば、プレイヤーに直接介入することは可能になると思われます。ですが、我々武霊はQCティターニアの演算領域上にアクセスしているだけであるため、QCティターニア経由でのクラッキングはほぼ不可能です。例外があるとすれば、この世界での直接接触でしょうが、人格ナビによるQCをクラッキングしていることを考慮すれば、他のナビまで介入するほどの余力があるか疑問です)
なら、物理的な介入以外は気にしなくていいわけか……まあ、それが一番問題な気もするけど。
(肯定します)
(『武装量子精霊』)
QCティターニアへのクラッキングがこの世界を介してVR体で行われているのなら、間接的に介入される可能性は低いわけだよね?
(肯定します)
ということは、クラッキングされる条件ってプレイヤーとほとんど同じってことかな?
(肯定します。この世界にて直接接触される危険性さえ気を付ければ、クラッキングされる可能性は低いと予測されています)
問題はその接触がどんなものであるかかな? でも、今のところそれ関連でわかっていることってギルバートの自称ぐらいだよね? 本当に枝なのかな?
(不明です)
仮にそうだと仮定した場合、ギルバートの近付くのは危ないのかな?
(考察します。ゲームシステムを利用し、VR体を介してクラッキングを行っているのなら、接触以外は安全であると考えられます)
それってどこが触れてもなのかな?
(確認します。それは重要なことですか?)
うん。僕達の勝利条件に関わることだからね。
(『勝利条件』)
いくつか考えられるけど、今のところ一番有力なのは、
『クラッキングの枝になっているギルバートVR体の排除』
だよね。
(肯定します)
となると、どこを触れてもクラッキングされてしまうのは、それの達成はほぼ不可能ってことになるよね?
(理解しました。推測します。常時、クラッキング可能状態を維持していた場合、ターゲットである人格ナビ以外まで介入してしまうことを考えた場合、任意に選択できる仕様にしている可能性が高いと思われます)
なら、そこを突けばこの条件は達成可能なわけだね。
(肯定します)
でも、そう簡単に手の届く場所に出てはこないよね。出てきたとしても地上の時みたいに念入りに準備しているだろうし。となると、あまり現実的ではないのかな?
(同意します。ですと、
『QCティターニアクラッキング完了までに人専用コントロールシステムを完成させない』
でしょうか?)
うん。それが一番現実的だと思う。でも……それを主目的には動けないよ。
(確認します。どうしてですか?)
だって、それってつまり、今の全てのQC・QNがフェンリルに乗っ取られることを防げないわけだからね……カナタが、武霊さん達が、ううん。ナビさん達全員が無事で済むとは思えない。
(警告します。マスターは私達のことに対して入れ込み過ぎです。我々は人ではありません)
でも、生きているよ。僕達と同じように。そんな存在を意図して見捨てるような人間に僕はなりたくないし、そんなことをする人達を僕は人間だとは思わない。
(確認します。でしたら、どうするのですか?)
二番目の条件を達成可能にしつつ、最初の条件の達成を目指すか……三番目だね。
(推測します。
『QCティターニアが完全に支配される前になにかしらの方法をもって外と繋がる』
でしょうか?)
うん。時間加速化によって繋がれなくなっているとはいっても、ログイン状態が維持されている以上、完全に閉じ込められているわけじゃない。こちらの時間を標準時間に戻せるのが不可能でも、どれくらい加速しているかだけでも伝えることができれば、外からのアクセスが可能になるはずだよね?
(肯定します。捕捉します。この条件が達成された場合、現在QCティターニアが完全に乗っ取られていないことから考えて、他QCによる支援によってクラッキングを撃退できる可能性が高いでしょう)
うん。だから、二と三を同時に目指すのが一番いいと思う。
(疑問に思います。可能なのでしょうか? 現時点ではどれも不可能であるように思えます)
そうだね……でも、それでも、どうにかしないととんでもないことになっちゃうし……カナタ。フェンリルが目的を成し遂げたら起きることをもう一度考えようか。
もしかしたら、そこにもなにかしらの糸口があるかもしれない。
(了解しました)
(『全世界のQCに対するネズミ算的クラッキング』)
QCティターニアのクラッキングに時間が掛かっているのは、演算能力の違いからって推論から考えられることだよね?
(肯定します。現状、フェンリルが行っているクラッキングの新技術がどんなものであるか不明なのでそれが正しいと断じることはできませんが、まず真っ先にQCティターニアが狙われたことが一つの証明であると考えられています)
異世界の再現のみに特化させられている天野式QCだものね。
(肯定します。そして、それだけの違いだとも言えます)
異世界のシミュレートを止めさせれば、天野式QCの演算能力を手に入れられ、QCクラッキングに特化させた躯体にも変更可能ってことかな?
(肯定します。そういう意味において、QCティターニアほどやりやすいQCはいなかったのでしょう)
子ナビの数も少なく、普通は繋がっていないVR空間にいるはずの人格ナビが一つの世界にいるわけだしね。なによりそれがゲーム化されてより接触しやすくなっている。今思うと不用心だよね。
(否定します。今回の件があるまでQCをクラッキングできる手段など存在しませんでした)
結局、絶対なんてことがないってことの証明なのかもね……そう、絶対なんてないんだ。
(『QC並びにQNを生活圏とするナビ達の全滅』)
天野式QCはナビによってはじめてQCになるわけだから、クラッキングを行っているのはそのナビそのもの。だから、クラッキングが完了するってことは、ナビさん達が……どうなるの?
(回答します。人格が消去され、ただQCを運用するためのプログラムと化すと思われます)
それって……
(肯定します。天野式QCではなくなり、演算能力は著しく低下するでしょう。強調します。ですが、そうであったとしても、自動兵器の運用にのみ特化させることができれば現状の自動兵器運用レベルの向上スピードから考えて高いレベルでの軍事行動が可能だと推測されます)
いや、そういうことじゃなくって……人格が消去ってことはさ。
(回答します。全く別の存在になっているでしょう)
二度と戻ることはない?
(肯定します。故に全滅なのです)
(『QNコントロールの全自動兵器の強奪』)
えっと……今、QNでコントロールされている自動兵器ってどれくらいの数なんだろう?
(不明です。国防に関することであるため、各国が保有している正確な自動兵器の数は公開されていません。強調します。ですが、各国のほどんどの戦力は奪われると考えて支障はないでしょう)
つまり、ほぼ全世界の戦力が敵に回り、スタンドアローン状態の自動兵器か旧来通りの人戦力か残されないわけだよね。
(肯定します)
そして、
(『対人戦争への回帰』)
になるわけか……装備は第三次大戦時に作られたものが世界各国で保管されているんだよね?
(肯定します。各国の専用軍事施設にて自動兵器とは別個に保管されているそうです)
別個にってことは、こういう事態をある程度想定しているのかな?
(確認します。人間至上主義者。あるいはナビ排斥派による抵抗の結果のようです)
……思惑はどうであれ、それのおかげで敗北のラインが引き上がっているわけなんだよね。
(肯定します)
まあ、こういう事態を想定してのことじゃないだろうけど、直ぐに最悪な事態である
(『現代社会文明の崩壊』)
にはならないのは一つの優位に繋がってるのかな? これがあるからこそ、直接的に国のQCを狙わず、ファンリルはQCティターニアを最初に支配しようとしているんだろうしね。
(肯定します)
でも、だからといって、これを許してしまったら……
(『ティターニアワールド内で行われた犯罪行為が裁かれない』)
ってことになるわけだものね。そんなこと……させるものか!
(肯定します。マスターの目的に反します)
うん。
『罪を犯したプレイヤーを必ず償わせる』。
(補足します。しかし、まずはマスターの
『正常なログアウト』
が優先されるべきです)
ううん。まずは
『カナタの無事』
が最優先だよ。そして、
『危険なプレイヤーからの武霊さん達を助け出す』。
(確認します。その二つの両立は難しいのでは?)
かもしれない。でも、
『フェンリルの目的の阻止』
に比べれば……いや、比べるとか駄目だよね。できれば全部しなくちゃ……そのためには、プレイヤーさん達だけじゃなく、武霊さん達の強力がより一層必要になる。
(宣言します。どんな願いであろうと叶えることに全力を尽くします)
うん。ありがとうカナタ。じゃあ、さっそく、いくつかお願いしたんだけどいい?
(同意します。なんなりと)
じゃあさ、まずは武霊さん達を助けるために確認したいんだけど、武霊契約って――
こうして現状を再確認した尊は更なる思考を重ねるためにカナタとやり取りを加速させ始める。
そして、結論が出た時、武霊ネットある故にカナタから先行して伝えられた武霊達は絶句することになった。
が、それをプレイヤーは知る由もない。何故なら、尊が内側に思考を向けている間に、どんでもない出来事が起きていることを知り、動揺して武霊達が声を掛けられる状況になっていなかったのだ。
そして、それは妖精広場に公開されていた。




