Scene26『VSフォーマンセルノーフェイス』
一対一なら、カナタも言った通り、勝率は高いと尊は思っていた。
四対一でも、紋章魔法を駆使すればなんとかなるかも? と希望を抱いていた。
しかし、尊が一週間で強くなったのと同様に、自動兵器達もその運用プログラムが成長している可能性を考慮はしていても、実際に相対しているわけでもなかったので実感を得られず、結果、逃走という選択すら困難な状況に陥ってしまう。
油断という言葉だけで済むほど、相手に容赦などあるはずもなく、叩き込まれる散弾がシールドの内包魔力を削る。
一発一発がドアを吹き飛ばすほどの威力を持っているのだ。直撃すればどれだけ精霊力が削られるかわからない。
既に対物ライフルの一撃で、ゲージが半分を切ってしまっている以上、これ以上のダメージは好ましくない。のだが……
幾つかの散弾が当たるのを無視して、側転するように立ち上がると、間髪を入れずに刀持ちが接近し、一刀を放つ。
それを防ぎ、返す刀で反撃しようものなら、階段にいる対物ライフルが壁越しに射撃してくる。
ギリギリで避けることに成功するが、即座にショットガンを撃たれるので攻勢にも逃走にも移れない。
(駄目だ! このままじゃ、いずれ防げなくなる!)
近・中・遠の連携に隙はなく、あったとしても狙撃された時と同じように誘いである可能性もある。
攻めなければ活路を見いだせないとわかっていながら、吹き飛ばされた事実が恐怖に繋がってしまう。
(吹き飛ばされないで完全に精霊領域で防ぐことも可能だろうけど、多分、それをやると精霊力がほとんど失われちゃうんだ)
(肯定します)
(やっぱりぃいいい!?)
意識が僅かにカナタに向けられた隙に反応してか、刀持ちが深く踏み込んできた。
放たれた突きを黒姫黒刀改でそらすが、それが少し軽いことに気付いた瞬間、ノーフェイスの手が伸びてくる。
いつの間にか右手のみで刀を持っており、右側に逃げるように刺突が放たれ、開いた手で尊を掴もうとしていたのだ。
(今だ! レーザー!)
好機と見た尊は、柄に嵌めた攻撃用紋章魔法を発動させる。
精霊領域によって射出場所が、胸元に延びようとしている刀持ちの左手前に変更されて光線が放たれた。
ほぼ同時に刀持ちは身体を捻っていたため、レーザーによって撃ち抜けたのは左腕のみだったが、尊にはそれで十分だった。
(レーザー! レーザー! レーザー! レーザー!)
四連発でレーザーを放つが、その度にショットガンと対物ライフルを撃ち込まれたため、狙いがずれ、回避行動に移った刀持ちには当たらなかった。
(ああもう! 連携が厄介過ぎる! バインドネット!)
僅かでも攻撃を遅らせるために粘着網を刀持ちの間に具現化するが、上から降り抜く一刀もとに切り捨てられ、壁にむなしく固まって張り付くだけに終わる。
もっとも、それのおかげで狙った通り攻撃がほんの僅かだけ収まった。
しかも、
(対物ライフル弾数ゼロ)
好機は唐突に訪れた。
(最大五発!? なら、今が最大のチャンス! 走力補助最大!)
振り返り、全速力でその場から離れる尊。
背後からショットガンが撃ち込まれるが、散弾であるためある程度離れればシールドを薄く広げるだけで十分に防げる。
VRA地図に展開される逃走ルートに従って何度も曲がり、時には瓦礫の僅かな隙間に飛び込みながら、逃げに逃げ、赤い光点が無くなるまで全力疾走。
精霊領域によって補助されていても、動き出しは尊であるため、身体の負荷はなくすことはできずに疲労は蓄積される。それが例え僅かなものであっても、元々が体力の少ない男の娘な中学一年生だ。段々と息が上がり始め、脇が痛くなってしまう。
(も、もう限界!)
いよいよ無理だと思ったその時、敵反応が地図上から消えた。
「報告します。ノーフェイスの反応が探知領域外に出ました」
「そ、そう……よかった」
ほっと一息吐き、肩から壁に寄り掛かる尊だったが……
「警告します。自動兵器反応増大」
「にゃんでえ!?」
驚く尊の前で、カナタの言葉通りVRA地図上に光点が無数に現れる。
ただし、その光はノーフェイスより小さく、一点だけだったら気付けないほどだった。
そう、一点だけならだ。
「にゃにこの数は!? どこから出てきたの!?」
逃げてきた方角から通路を埋め尽くすほどの無数の小さな点。
「なんなの!?」
「推測します。形状・大きさ・飛行手段から『アサシンモスキート』だと推測されます」
「蚊のBMR?」
「肯定します。蚊の生体探知能力も模しているため、まだ対人戦闘が行われていた第三次世界大戦で主に使われた自動暗殺兵器です」
「あ、暗殺!?」
「肯定します。また、どの自動兵器より小型に製作可能で、最も小型のタイプであれば本物の蚊と変わらない大きさにし、偵察や他自動兵器もしくは司令塔などに接近し、クラックプログラムを流すなどもしていたようです。捕捉します。なお、量子通信が確立した今ではあまり意味がありませんが、複数の機体を使って空中に回線を形成する機能もあるようです」
「そ、そう? それで、どうしたらいいの? なんか囲まれてるっぽいんだけど……」
かなり速度で移動しているのか、現れたアサシンモスキートらしき光点は逃げる間もなく周囲に拡散し、徐々に範囲を狭めているのだ。
「提案します。近くにある部屋に籠りましょう。密閉性が高いので、侵入はできないはずです」
周囲には瓦礫が散乱し、根が至る所に張ってほとんどのドアが塞がれていたが、右側中央の部屋だけが無事だった。
「うん。わかった」
後もう少しで、アサシンモスキートを視認できそうなまでになりそうだったので、慌ててカナタの言葉に従い部屋に飛び込み鍵をロック。して、気付く。
「って閉じ籠ったら逃げられないじゃん!」
「肯定します」
「いや、肯定されても……」
「提案します。アサシンモスキートは、その小ささから自立AIは貧弱です。司令塔となる存在がいなければ、自動的に帰還モードもしくは隠密待機モードに移行します」
「司令塔?」
カナタの説明に、ハッとする尊。
「リュックサックのノーフェイス!」
「肯定します。装備からしてあの支援タイプが司令塔だと考えられます」
「倒せばアサシンが止まるのはわかったけど、あの連携を突破して一番後ろにいる奴を倒すの?」
「肯定します」
「そんなの無理だよ。さっきはなんとか腕を破壊できたけど、直ぐに対応されちゃったし……」
「否定します。ノーフェイスはペケさんより個体能力は劣ります」
「うん。紋章魔法もないしね。でも、四体がまるで一体みたいに行動するから、ペケさんより強敵だよ」
「肯定します。強調します。ですから、一対一の状況を作り出します」
「どうやって?」
「回答します。銃弾のデータ解析が終わりました。また、常時VRA攻防支援をサブモニターで視界内に展開することも提案します」
「そうすれば、ノーフェイス達の攻撃が避けられるってこと?」
「肯定します。宣言します。マスターに彼らの攻撃を当てさせません」
口調そのものは普段と変わってはいないが、言葉の中に強い意思があるように尊は感じ、思わず目を瞬かせ、微笑みながらカナタが模されている鍔を撫でる。
「そうだよね。向こうが成長している以上に、カナタも成長しているんだ」
ここまで自主的に意見をカナタが出したことに驚きより、喜びが込み上げてくる。
気分は父親に近いのかもしれない。
「訂正します」
「え?」
「マスターも成長しています」
「うん……そうだね」
尊にしてみればほとんどがカナタのおかげだと思っている。だからこそ、自身が成長しているなど考えはできても本気で思えるはずもなかったのだが、
「わかったよ。僕はカナタを信じる。ううん。信じてるからね」
心の中に確信が生じる。
先程まで在った戦うには余計な不安や動揺などが消え、意識を戦いへと集中させ始める。
「注意を促します。アサシンモスキートの単体攻撃力は暗殺用であっても精霊領域の前では脅威ではありません。ですが、長時間大量に同時攻撃をされた場合はその限りではありません」
「短期決戦。勝負は彼らがこの前に辿り着いた時だね」
尊はそう言いながら、頭の中でどう攻撃するかの様々なパターンを描き、それを思考制御で受け取ったカナタはそれが実現可能か演算する。
VRA地図には既に接近するノーフェイス四体の赤い光点があり、後一分もしない内に部屋の前に辿り着くことが予想できたが、それでも尊とカナタはシミュレートを繰り返す。
扉をショットガンで壊した場合、遠距離から壁越しに撃ち込んできた場合、爆発物で部屋ごと潰そうとした場合――
一つやり取りする度に尊の思考が沈み、意識がそれだけに集中され加速化される。
そして、そのやりとりが十を超えた瞬間、スライドドアに向かって正面を向いていた尊に攻撃予測線が重なる。
ただし、それは側面から。
ノーフェイス達がまだ十字路に差し掛かった場所にいるのにだ。
(対物ライフル!)
右側を映すVRAサブモニターには、隣の部屋の壁から赤い太い線が伸びていた。
正確に側頭部へと繋がる線に、尊は頭を前に振って避ける。
ほぼ同時に壁に穴が開き、通過する弾丸。
生じる衝撃波を精霊領域で多少は低減させていても、精霊力の節約のためか吹き飛ばされそうになり体勢が崩れる尊。
僅かな間の乱れだったが、それでもその間に二体のノーフェイス達が扉の前に移動し切ってしまう。
VRA地図上に、散と書かれた光点がドアの前に、その横に刀と書かれた光点、十字路に対と書かれた光点、その後ろに支と書かれた光点。
フォーメーションが完成され、ショットガンが先行した扉を壊すだろう。
そうイメージした瞬間、新たな攻撃予測線が現れる。
しかも、それは対物ライフルによって開けられた穴から、僅かに放物線を描いて。
(手榴弾!?)
(肯定します。支援タイプからです)
新たな攻撃の正体を予測すると共に、尊のイメージがカナタに伝えられ、斬撃軌道線が攻撃予測線に合わさるように展開される。
手の中で黒姫黒刀改の柄を回し、ゴルフのスイングのように振う。
部屋の中に放り込まれたリンゴのような黒い物体に黒い刀身の峰がジャストヒットし、入った同じ軌道で撃ち返す。
少し遅れて爆発音が生じ、VRA地図上で対物ライフルと支援タイプがそれぞれ別方向に通路に分かれる。
が、尊がそれを確認する余裕はなかった。
打つと同時に、ショットガンが予測通りドアを吹き飛ばされたからだ。
部屋の中央にいた尊に迫る凸字に湾曲した白い板。
(斥力付与!)
尊は慌てず思考制御で指示を出しつつ、上段に構え直す。
カナタが指示と共に受けたイメージ通りにドアを反射させ、尊はそれに追従する。
ショットガンが散弾を撃つと共に位置をチェンジしていた刀持ちが迫るドアを縦に一刀両断。
白い板が裂かれると共に、尊は刀の間合いに到達する。
ショットガンが援護しようと尊の横に回り銃口を向けるが、
(引力付与!)
両断されたドアが尊の隣に引き寄せられ、散弾が届かず、接近して連射し始める。
撃ち込まれる度に白い板が変形するが、精霊領域で支えられているため、散弾の威力が固定されている時より出ることはない。
一発、二発、三発、それだけの時間があれば今の尊には十分だった。
振り抜いて僅かに動きを止めている刀持ちの頭に黒い刃が叩き込まれる。
魔法が組み込まれているペケさんですら一刀両断にした一撃を、ただの自動兵器であるノーフェイスが耐えられるはずもない。
刀持ちは真頭から一刀両断され、左右に分かれて倒れる。
「まず一体!」
思わず叫びながら、尊は腰を低く落とす。
同時に撃ち込まれた四発目の散弾が、半分となったドアに大穴を開け、尊の頭上を通り抜けて残り半分のドアを吹き飛ばす。
(斥力付与!)
振り切った黒姫黒刀改を下から斜め横に振い、穴の開いたドア半分を更に横に割る。
尊のイメージを受け取ったカナタが、下半分をショットガンに向けて吹き飛ばす。
体勢を崩されるのを嫌ったのか、ショットガンは上に飛び、銃口を尊へと向ける。
(もう一度!)
残った上半分が浮いているショットガンに向け飛ばされる。
尊とショットガンの間に飛ばされたことにより、撃ち出された散弾を防ぐ。
宙に浮いたショットガンは撃ち出した弾丸の威力で後ろの吹き飛び、回転しながら着地。
その瞬間、上半分のドアに隠れるように走り出していた尊が、黒姫黒刀改を薙ぎながら通過した。
ショットガンの銃身共々、腕を切り裂き、胸を断って、黒いマネキンの上半身を斬り飛ばす。
(二体目!)
斬られた刀持ちとショットガンの腕や足が暴れ回るのを見向きもせず、尊は下段に構えながら前へ駆ける。
その間、小さな黒いなにかが集まってくるが、尊の身体に触れる前に淡い光によって留められては弾かれ通路に落ちていく。
アサシンモスキートが、瞬間的に斥力属性が付与される精霊領域によって破壊されているのだ。
しかし、例え破壊できてもその数は多く、一瞥しただけでも通路が黒に染まるほどいた。
斥力付与は、通常の精霊領域より精霊力を消費するのか、一回弾く度にゲージが僅かに減る。
既にゲージは四分の一を切り、青から黄になっているので、威力の高い攻撃を一度受ければ強制転送されてしまうだろう。
そして、それができるノーフェイスはまだ残っている。
(来ます)
手榴弾による爆炎がまだ僅かに残る十字路に飛び出してくる対物ライフル。
人工筋肉による身体機能によって強引に身体を固定し、即座に尊へと銃口を合わせた。
(シールド!)
光の盾が尊の全身をカバーするように拡大されて形成される。
右足前に火花が散り、反射した大経口弾が通り過ぎた壁を砕く。
精霊領域を駆使した疾走によって、尊自身に座標に固定されている空間湾曲の影響も相殺されているため、瞬く間に距離を詰められる。
しかし、いくら物理ダメージそのものをシールドによって防いではいても、相殺している現象がある以上、一撃を受ければ吹き飛ばされないように僅かに精霊力は減少してしまう。
(だったら! レーザー!)
対物ライフルに向けて光線を撃ち出すが、その瞬間、アサシンモスキートの密度が変わった。
より濃くなった黒の前に、撃ち出された光の線がターゲットに届く前に減衰して消えてしまう。
対レーザー粉塵代わりに蚊のBMR達が使われ、光線の威力が拡散・減衰させられたと尊は瞬時に理解したが、それよりなにより、
(読まれた!?)
自分の行動予測を正確にされたことに衝撃を受ける。
しかし、それに打ちひしがれている暇はない。
レーザーの脅威がなくなった対物ライフルが、接近してくる尊に遠慮なく大経口弾を叩き込んでくるからだ。
(三撃目、四撃目、後一撃防ぎきれば、弾が空に――)
距離が刀の間合いまで後一歩まで近付き、マガジンチェンジの隙を狙おう決めた次の瞬間、リュックが通路から飛び出した。
両手に持つサブマシンガンから激しいマルズフラッシュが生じ、シールドにばら撒かれた弾丸が着弾する。
ただ、撃ち込まれるのは威力の低い拳銃弾。シールドだけで十分に防ぎ切れ、牽制にすらならない。はずだった。
対物ライフルまで後一歩の距離まで近づいた瞬間、唐突に光の盾が砕け散る。
(シールド破壊!?)
シールドは空間湾曲であり、通常ではありえない状態であるため、元に戻ろうとする働きが強まれば魔力消費が増大される。そして、その働きが増大するのは、なにかしらの物理現象に晒された時であり、威力の大小はあまり関係ない。
つまり、短機関銃によって絶え間なく弾丸に晒され続ければ、瞬く間に内包魔力を消費されてしまうのだ。
尊がそのリュックの意図に気付いた時には既に手遅れであり、連携している対物ライフルがそれを見逃すはずもなかった。
攻撃予測線が真っ直ぐ胸に伸びる。
(まだだ! シールド!)
思考制御でカナタに指示。異空間収納から残り一つのシールドを銃口の前に出し、光の盾で銃口を塞ぐように展開。撃ち出された大口径弾が銃身の中で炸裂し、対物ライフルが裂き壊れる。
(これで!)
刀の間合いに入った尊は、黒姫黒刀改を切り上げる。
対物ライフルは得物を破壊されると共に武器から手を放し後ろへと飛んでいたが、尊の斬撃速度の方が一手早かった。
腰から肩へ黒い刀身が抜け、対物ライフルを両断する。
(三体目! 残りは!)
振り抜き上げた黒姫黒刀改をそのまま上段に構え、サブマシンガンを撃ち続けているリュックへ飛ぶ。
僅かに刀の間合いから外れている距離だったが、
(引力付与!)
によって宙に浮く尊の身体が一気にリュックに引き寄せられ、身体ごと刃を振り下ろす。
必殺の一撃に晒されたリュックは両手からサブマシンガンを落とし、前面リュックサックから大型ナイフを二振り抜きクロスに構えた。
互いの頭上で三つの刃が激突する。
刀持ちの刃筋ずらしが尊の頭に過った瞬間、黒い刃が大型ナイフの刀身を切り裂く。
反転しながらリュックの上を通り抜き、着地、を失敗し、前にこけて少し転がり、上下が逆になってようやく止まる。
「か、カッコ悪い……」
思わず赤面してしまう尊だったが、上半身を頭から裂かれたリュックがゆっくり倒れ、アサシンモスキート達が次々と壁に張り付いて白を黒に変えている様子にほっと一息吐いた。
「少し休憩したいね」
精霊力ゲージが赤なのに加え、自身の体力も限界近い。
心の底からの言葉だったのだが、何故かカナタは反応しなかった。
その代りのように黒姫黒刀改の柄を開き、宙に浮かせたままのシールドの紋章魔法を入れ替える。
「カナタ?」
行動の意味がわからない尊が呼び掛けた瞬間、強烈な閃光が発生した。
「へ?」
なにが起きたからわからない尊は変な姿勢のまま周りを見る。周りには光の壁が形成されているが、それがシールドの魔法を拡張具現したものだとわかるので、それが閃光の原因ではない。
「事後報告します。支援タイプがアサシンモスキートに最後の指示を出し、所持していた爆薬全てを起爆しました」
「ええっ!?」
「状況の切迫から、シールドを勝手に使用したことを謝罪します」
「いや、別にそれはいいんだけど……カナタも使えたんだね」
「疑問です。戦闘中何度も使っていましたが?」
「ああ、考えてみれば思考制御だと、指示を出しているだけ?」
「肯定します。補足説明します。起動の仕方さえ正しく行えれば誰でも紋章魔法は使えます」
「そういえば、ペケさんは内蔵している装置で使っていたわけだものね」
「肯定します」
そんなやりとりをして暫く、光の壁がゆっくりと砕け散る。
これでようやく身体を元に戻せると思った尊だったが、視界に入った光景にそのことを忘れて唖然としてしまう。
何故ながら……
「うわ……天井が吹き飛んじゃってるよ」
廃ビルが立ち並ぶ白い空が見えたからだ。




