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武装精霊 RDO  作者: 改樹考果
1.仮想世界で踊る黒刀の武霊使い編
26/107

Scene25『無面強襲』

 地下一階へ辿り着いた尊の目に最初に入ったのは、瓦礫の山だった。

 既にライトの紋章魔法は使用済みなので、周囲を煌々と照らしているがそれによって明らかになる光景がそれでは気分は相反するしかない。

 「二階より酷いと思っていたけど、ここまでひどいとは思わなかったよ」

 精霊領域によってふわふわと浮きながら周りを照らす光球を見上げてから、辺りをぐるりを見回す。

 構造的には地下三階・二階と変わらないため、尊がいる下り階段前を中心に八つの通路が存在しているはずなのだが、尊が確認した所、内五つの通路は潰れていた。

 階段近くまで瓦礫が迫っている上に、細かい守護の大樹の根がびっしりと生えているので、通るのは勿論、退かすことすら不可能なのだ。

 「これは思ったより上に行くルートを探すのが難しいかな? どうカナタ?」

 「肯定します。探知領域限界まで調べた結果、範囲内に地上に出られる場所はありません」

 「そうか……じゃあ、歩くしかないね。三つの内、どれを行けばいい?」

 「回答します。一番近くの通路を。それ以外は途中で行き止まりになっています」

 「うっ! もしかして、ここからだと地上に行けなかったりして……」

 「可能性はあります」

 深いため息を吐くしかない尊だったが、ここで立ち止まっててもしょうがないのでカナタが指し示した通路へと向かう。

 「まあ、その時はその時だね。駄目だったら二階に戻ろう」

 「了解しました」




 幸いなことに途中で通り抜けられない所に遭遇することはなく、先へ先へと進むことができた。

 ただ、なかなか地上へ行けるルートを見付けることができず、見付けたとしても……

 「これは……ちょっと無理っぽいよね」

 「肯定します」

 尊が今いる場所は、階段ホールより広い空間なのだが、その中央には巨大な穴が存在していた。

 人の五倍ほどの大きさのある土蜘蛛が十体いても簡単に通り抜けられそうなほどの広さがあり、それが地上から地下へとずっと続いているのだ。

 灯りの無い地下一階ルートと違い地上から明かりが降り注いでいるので、若干の安心感はある。が、だからといってそこから上に出られるかというと、そうでもない。

 「ん~エレベーターホールなのかな?」

 「肯定します。そう推測され、地下三階で停止しているかごらしきものが確認されているそうです」

 「動かないの?」

 「肯定します」

 「……まあ、これじゃあね……」

 そう言って見上げる穴の上には、網のように張り巡らされた黒い枝が存在していた。

 「根があるんだから、枝もあるとは思っていたけど、葉っぱも黒いんだね」

 エレベーターシャフトの壁から突き破って生えている枝には黒い葉っぱが付いており、それがなければ根だと勘違いしそうなほど同じ黒色をしていた。

 そして、問題なのがその葉の形状だった。

 「松みたいな葉っぱだよね。あれ、やっぱり刺さるのかな?」

 「肯定します。守護の大樹は全て破壊不可能なので」

 「だよね……」

 精霊領域補助全開でジャンプして越えられそうにないほどの地上との距離なのだが、枝と葉が見事に通り道を塞いでおり、強引に通ろうものなら串刺しになるのは目に見えていた。

 「下も下で同じ感じだし」

 そろ~っと大穴を覗き込むと、そこには上と同様に枝が生えていた。

 「他のエレベーターホールも一緒なのかな?」

 「否定します。確認されたエレベーターホールの中には、そのまま地下三階にまで到達できる場所があるそうです」

 「そうなの? じゃあ、なんでここはそうなっているんだろう?」

 「推測します。この場所がドームの近くだからではないでしょうか?」

 「そういえば、ドームにも守護の大樹があって破壊不可能なんだったけ?」

 「肯定します。そして、守護の大樹の影響が強まるのはドームの近くのようです」

 「ってことは、ここは都市の端っこなんだ……」

 思わぬところで自分の現在地を大雑把に知ることができたが、だからといって現状が変わるわけでもない。

 「とりあえず、先に進もうか」

 そう口にし、エレベーターホールに入った通路とは別の通路に向おうとした。

 「警告」

 が、いきなり視界に赤い半透明の線が現れる。

 驚きはしたが、尊はリアクションを取るより早くその場から飛び退く。

 直後にそれまでいた床に無数の火花が散る。

 「なに!?」

 「報告します。地上からの銃撃です」

 攻撃予測線がこれ以上出てこないことを確認しつつ、尊が上を見上げると、エレベーターシャフトの端に黒いマネキンが立っていた。

 「ノーフェイス?」

 「肯定します」

 自動小銃らしき物を構え、こちらを狙っている人型BMRに尊は思わず喉を鳴らす。

 いつでも通路に逃げ込める体勢を維持しなら様子を見ていると、これ以上の攻撃は無意味と判断したのか、ノーフェイスはその場から去って行った。

 「……やっぱり地上ではまだ自動兵器の攻撃が続いているんだね」

 「肯定します。探知領域にも時折反応がありました」

 「そっか……こっちに来れないから報告しなかったの?」

 「肯定します……必要でしたか?」

 「ううん。あ、でも、できる限り情報は共有した方がいいかな? さっきはちょっとびっくりした」

 「了解しました。謝罪します。申し訳ありません」

 「別に謝らなくたっていいって」

 そう微笑みながら、尊はもう一度ノーフェイスが現れた地上を見上げた。

 (銃が前に見た時と違っていたような?)

 漫画などである程度の知識はあっても、遠目から少ししか見られなかった銃の種類なので判別できるはずもなく、尊はそのことを直ぐに気にしなくなった。




 エレベーターホールを抜け、暫くした後、ようやく地上へ行ける階段を発見することができた。

 開けた空間ではなく、閉じられた部屋の一室にあったそれに尊は首を傾げる。

 「これまでの階段とは違う感じだね?」

 「肯定します。上に存在している建築物内部に出る階段のようです」

 「ビルとかで見掛ける形状だものね」

 ある程度上がると踊り場が現れ折り返す形式の階段を見上げながら、尊はちょっと開け息を吐く。

 「ビルの中に出るなら、いきなり自動兵器に遭遇することはないかな?」

 「強調します。少なくとも、探知領域内には反応はありません」

 「じゃあ、安心だね」

 武霊の探知に間違いがあるはずもない。そう信じ切っている尊は躊躇うことなく階段に足を踏み入れた。

 が、その瞬間、けたたましい警報音が鳴り響く。

 「え! ええっ!? なにっなに!?」

 わけがわからず周りを見回すと、階段の一段目壁際に転がる瓦礫がVRAの矢印で指し示される。

 尊が慌ててそれを蹴ると、そこから小さな円筒の機械が現れた。

 「警報装置!? まずい!」

 黒姫黒刀改を抜き、直ぐに突き刺し黙らすが、既に遅かった。

 「警告します。探知領域内に接近するノーフェイスを探知」

 VRA地図が展開、地下一階と地上の俯瞰地図が表示される。

 「四機!? しかも、フォーメーションを組んでる?」

 地図に現れている四つの赤い光点が、四角形の隊列を組みながら一切乱れることなく接近してくることに尊は驚愕する。

 地上で見た時は、ただサブマシンガンを撃つことだけしかしていなかった印象しかない。

 だからこそ、嫌な予感を覚えた。

 しかし、逃げるにしても、相手はガーディアン系ではない以上、いつまでも追ってくる可能性もあり、なにより増援を呼ばれる可能性もある。

 「接近してくるノーフェイス以外の敵は!?」

 「ありません」

 「警報装置に通信機器は付いていた?」

 「音のみです。推測します。音が届く場所にいた自動兵器のみが接近していると考えれば、これ以上の増援を呼ばせないために撃破することを推奨します」

 「ノーフェイス自身が通信する可能性は?」

 「あります。強調します。ですが、今のところその気配はありません」

 「通信妨害はできる?」

 「不可能です。量子通信であれば、通信した反応は探知できますが、現状の私では術がありません」

 「量子系の属性か魔法が必要って感じ?」

 「肯定します。強調します。あくまでできるかもしれない可能性の話です」

 「わかった。通路で迎え撃つよ! あと、万が一の時の逃走ルートも調べておいて」

 「了解しました」

 部屋から飛び出し、開けっ放しにしてそこから少し離れた位置に陣取る。

 「一対一の状況を作り出すよ。一体が通路に飛び出すタイミングでキーを使うから、タイミングを計って」

 「了解しました」

 VRA地図上に数字が表れ、カウントダウンが開始される。

 数字の減少と共に、赤い光点が近付く度に尊の心臓が高まるが、意識を邪魔するほどにはならない。

 (落ち着けてる。ペケさんとの戦いが役に立ってるんだ……これならいける!)

 カウントが十を切り、剣先をドアへと向ける尊。

 「九、八、七、六、五、四、三、二、一、零、キーロック!」

 黒いマネキン一体が通路に飛び出すと共に、狙い通りドアが閉まる。

 「よし! シールド! 一気に!」

 前面に光の盾を展開し、一気にノーフェイスに近付こうとした。

 自分に向けて撃ってくる。そう思っての行動だった。

 だが、ノーフェイスは予想に反した行動に出た。

 尊へと身体を向けず、振り返って銃口をドアへと向けたのだ。

 そして、尊は見た。

 サブマシンガンだと思っていたノーフェイスが持つ銃器が、ショットガンになっていることに。

 人が使うようなショットガンの場合、散弾でドアそのものを破壊し切ることは不可能であるため、蝶番を撃って中に入ることがある。

 尊はそのことを漫画などから知っており、なおかつ、閉じているドアはスライド式だ。

 開かない。のは明白なのに、嫌な予感を覚えた。

 何故なら、その知識はあくまで人が使うことを前提にしているからだ。

 尊が刀の間合いに接近し切るより早く、ノーフェイスが引き金を引く。

 その瞬間、まるで大砲のような炸裂音が響き渡り、強烈な衝撃が発生する。

 だが、精霊領域に守られている尊は影響を受けずに刀を振るえる位置まで近付けた。

 しかし、攻撃することができなかった。

 何故なら、黒い刀を持ったノーフェイスがショットガンと尊の間に割り込んできたからだ。

 即座に尊はターゲットを刀持ちに切り替え、カナタも応え斬撃軌道線を展開。

 上段から振われる黒姫黒刀改に対して、刀持ちは下段で応える。

 二振りの黒刀が激突し、金属音が響き渡った。

 (斬れない!?)

 (刃筋をずらされました)

 岩の塊すら切り裂く黒姫黒刀改の攻撃力を僅かなずらしで防がれたことに尊は戦慄する。

 それはつまり、剣撃戦において道具の有利性すら覆せるほどの技量を刀持ちは持っているっていることになるのだ。

 だが、尊に恐れ戦いている暇はなかった。

 自分に向ってドアから太い攻撃予測線が伸びたからだ。

 「バインドネット!」

 粘着性の網を前方に射出しながらバックステップ。

 僅かに遅れて、なにかが尊の前を通り過ぎ、隣の壁に大穴が開く。

 尊の確認する余裕はなかったが、カナタがVRA画面で階段に立って長大で大経口な銃器を構えているノーフェイスを映し出した。

 (対物ライフル!?)

 狙撃銃より凶悪な大型の銃に顔が引きつる。

 使用する弾種によっては土嚢や壁などの障害物に隠れる対象や、軽車両に対してすら損傷を与えることが可能なことを知っているからだ。

 いや、それだけではない。その知識でさえ、人が使用の前提なのだ。

 ショットガン同様、ノーフェイス用に改造されている可能性が高い。

 (でも、向こうには異空間収納はないはずだから、弾切れを狙えば)

 なんとかこちらの有利な点を見付けようとする尊だったが、その考えすら即座に新たなVRA画面によって否定される。

 対物ライフルより上にいる四体目のノーフェイスが、大容量なリュックサックを前後ろに背負っており、どう見ても補給物資を持っているようにしか見えなかった。

 しかも、その両手には最初に見かけた時と同じサブマシンガンのおまけつきだ。

 近中遠支援の四つが揃ったフォーマンセルなノーフェイス達に、尊は即座に決断した。

 (逃げるよ!)

 (了解しました)

 しかし、その判断は既に遅かった。

 カナタがVRA地図上に示したルートへ走ろうと振り返ろうとした瞬間、刀持ちが突っ込んでくる。

 気が付けば放っていたバインドネットは両断されて通路の脇で塊となっていた。

 (そんなことできるの!?)

 自分にはできなかったことに驚愕すると、

 (警告。高威力)

 などとカナタに知らされ、黒姫黒刀改で防御するしかない。

 刀持ちの突きをそらし、そのまま切り裂こうと黒い刀身を滑らせるが、刃がノーフェイスの身体に到達する前に横に倒れて回避される。

 しかも、その瞬間にショットガンが放たれたのだ。

 ほとんどをカナタが移動させた光の盾で防ぐが、僅かに漏れた散弾が身体に当たり、精霊力を僅かに減少させる。

 僅かに行動を阻害されただけだが、それだけなら倒れている最中の刀持ちを追撃可能。

 (まずは一体!)

 黒姫黒刀改を振り落とそうとした瞬間、再び赤い太線が視界に入る。

 対物ライフルの射線軸上には壁があるのだが、それすら貫通する威力なのは既に確認済み。

 バックステップをしようと足に力を込めた瞬間、なにから絡み付く。

 足元を映すVRA画面が展開され、刀持ちが倒れながら姿勢を変え、足で挟みにきているのが映った。

 勿論、無理な姿勢で完全に決まるほどの距離ではなかったが、それでも僅かに後ろに飛ぶのを送らされてしまう。

 (くっ! 間に合え!)

 願うようにバックステップをした尊の視界が、一気に回る。

 壁越しに放たれた大口径弾が額をかすり、あまりの威力にカナタが精霊領域で完全に相殺するのを断念した結果、尊の天地はシャッフルされてしまったのだ。

 (え!? ゲージが半分削られた!? って、そんなことよりこの状況はまずい!)

 一瞬の混乱の後、気付いた時には壁に逆さまに叩き付けられており、慌てて体勢を立て直そうとするが、それより早くショットガンの銃口を向けられていた。

 (逃げられない!?)

 逃走すらできない現状を認識すると同時に、散弾が叩き込まれた。

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