第7章
部屋に戻らせてもらったけど
火鉢で部屋が暖かくなっていた。
布団も敷かれていて寝間着も準備していてくれてた。
土方さんが私の為に……。
初対面からツンツンしてたけどツンデレしちゃったらまた妄想の世界に入ってしまいそう。
だけど……私、好きだった存在の土方さんの前で沖田さんと仲良く飲んで楽しんでいたとかあんなに密着して今さら土方さんが好きでしたって言えない。
ふしだらな私やん……。
土方さんが好き。
好きだった。
今は解らない、と言うのか私の感情がどうこうなっても相手に関係ないって感じよね。
馬鹿らしい!
この時代の人を好きになっても好きになってもらってもダメなんだって……。
自分に言い聞かせる様に考えてしまう。
だけど……私、総司の感触が残っている腕を触れてる。
何で?
私は知らない間に涙を流していた。
「おい、愛美入るぞ」
「……はい」
土方さんが部屋に戻ってきた。
あの後、どうなったとか今は聞けない。
「ひ……土方さんごめんなさ……」
泣いてうまく言えないけど、私の涙を指でソッと拭いてくれた。
土方さんの大きな手で……。
泣いてる理由も聞かずただ優しくなぐさめてくれた。
「考えたら愛美は知らない場所にいきなりきて周りも知り合いも居ない寂しい気持ちまで俺は考えてやれず……すまん。」
私の寂しい気持ちは総司は解っていたのかも知れない。だから仲良くしてくれたのか……。好きとか気持ちの前に私の事を考えてくれたの?
寂しい気持ちのスキマに入って来たら勘違いしてしまうやん。
土方さんも今の私の寂しい気持ちに入って来たらまた勘違いしてしまう。
「寂しい気持ちに入って来たら勘違いしてしまいます……。」
思いきった事を言ってしまった!
だけど本当だから
「勘違い?すればいいんじゃないの」
意外な答えで動揺してしまった。
そんな答えが返ってくるなんて予想外だったから、私の方が逆に答えを返せなくなってしまった。
「……土方さん、迷惑だけはかけたくなかったのに……。」
クシュっと私の頭を撫でて
「もう疲れただろ?寝ろ」
初めて見た笑顔だった。
そんな笑顔に恥ずかしくって目が合わせられない。
準備してくれていた寝間着に着替えようとした。ってこれ……どうやって着るの?
「すみません、あ……あのぉ……」
まるで幽霊みたいな格好で立って
「うわっ!」
「そんなに幽霊っぽかったんですか(笑)」
「ちょっと今まで見たことが無い格好だったから驚いただけだ」
そりゃ驚くと思う(笑)
この時代の着物を着れないから頑張ってみたものの酷い格好やもんな……。
でも普通に接してくれて嬉しかった。
「私の時代には着物は特別な日とかしか着ないので普段は洋服を着るので上手く着物は着れなくて……」
「洋服とは?鎖国は廃止になるのか?」
「ですね。でも歴史は私は変えてはいけないので言える範囲内でしか言えないけど……。」
「とにかく酷い(笑)着崩れ以下だ。着せてやろうか?」
「だ……だ大丈夫ですっ」
着せてくれるとか恥ずかしいやん!
それだけは着れなくても土方さんに恥ずかしいのを見せたくない。
「お、おやすみなさいです。」
「ああ、今日はゆっくり寝ろ」
泣きつかれたのか私はすぐに夢の中に入っていった。
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その後の事は知らなかったけど
土方さんは私の寝顔を見て髪を撫でながら
「俺は女は近付いてくる者しか相手にしないが愛美は感情を入れてしまうと辛くなるからな……」
そんな一人言を寝てる私に言ってたみたい、それは後から知る事になるんだけど。
私がいつこの時代から消えるのか、解らない。けど土方さんも明日はどうなるのか解らない。そんな幕末が好きとか恋とか想えば想うほどに辛くなるから感情なんて持つだけ辛くなる。
時代のせいだから……。
「愛美の時代で会いたかったな……。」
優しく手をソッと握りながら私に触れるぐらいか触れないぐらいの口付けをした。
土方さんも同じ様にすぐ深い眠りに入った。