第6章
広間に『新撰組』の人達が集まり夕食が始まる。
勿論、私がこの女禁の屯所に居ることが珍しげにヒソヒソ聞こえてくる。
「この女子は俺の義理の兄さんの親戚妹で副長の親戚なので失礼の無いように。自己紹介は自分でしろ」
あっ!そう言えば幹部の人達も私の名前も聞いてなかった。
私がパニクってるので気をつかってくれたのかな?
「あの……私、副長の親戚で愛美マナミと申します。よろしくお願いします。」
「愛美さんよろしくね」
「はい、こちらがお世話になるので……」
近藤さんも初めて私の名前を知った。
「愛美ちゃん、親戚の中では副長の噂は知ってるよなぁ?」
「モテて……あっ世の女性達がほっとけないぐらいの噂は兄さんに聞いてました(笑)」
「こら!愛美、いらない事は言うな」
初めて私の名前を土方さんが読んでくれた。でも芝居としてでも一瞬少し『ドキッ』としちゃった。
「ごめんなさい。」
それから『歓迎会』と名前をつけ
酒盛りが始まった(笑)
みんな楽しい笑顔でワイワイと始まった歓迎会に私は出来るだけ近藤さんと土方さんと斎藤さんと山南さんの近くで参加した。
斎藤さんが冷静にお酒を楽しんで……いなかった(笑)
かなり普段のストレスが溜まっているのか斎藤さんは酔うと別人になっていた。
山南さんは酔うほど飲まないみたいだけど少し泣き上戸なのか
「みんないつもありがとう……本当にありがとう……うぅ」
そして原田さん、藤堂さん、永倉さんは3人で……3人トリオでワイワイと盛り上がっていた。
沖田さんは酔うほど飲まないって言うか予想外にイケるみたいで……
「愛美ちゃん、楽しんでる?」
沖田さんがヒョコッと顔を近付け接近距離が近く恥ずかしかった////////。
反射的にチラッと土方さんの方に目をやってしまった。
冷静な態度で酒盛りに参加して……ない?
もしかして飲めません伝説は本当だったの(笑)
沖田さんが笑顔で話し掛けてくれ
「僕がお酒注ぐから愛美ちゃんも一緒に飲もう♪」
「えっあの……私が沖田さんに注ぎます」
「やだなぁ沖田さんじゃなくて僕の事は『総司』って呼んでよ」
「良いんですか?馴れ馴れしくさせてもらって……。」
「僕が良いって言ったら一番隊長の命令だよ。愛美ちゃん♪」
「じゃあ……そ、総司さん」
「やだなぁ~『さん』は外して『総司』で呼んでよ」
「総司……。」
「愛美ちゃん、良くできました!」
年齢も近いのですぐに仲良くなれた。
沖田さんと盛り上がってしまってついつい勧められたお酒を飲んでいた。
「総司は好きな女の子とか居ないの?」
「気になる人はいるけどね」
「めっちゃ気になるぅ~どんな人?」
「//////////。い……言えないよぉ」
「顔赤いよ(笑)」
普段はみんな普通の人なんだ(笑)
けど土方は……
「ちっ……。」
舌打ちしてる時は余り楽しくない時みたい。ちょっとクセとか読めてきた。
「あぁ~飲み直しに出掛ける」
とツンツンな言い方で広間を後にした。
「愛美ちゃん、副長は外に出掛けたら朝まで帰らないから良かったね」
「うん!ツンツンしちゃっていつもあの口調?」
「京に来てから神経質になってるみたいで僕も副長とは兄弟の様に仲良かったけど最近の副長は変わったかな」
「そうなんだ……。やっぱり任務の事を考えてるからかな?」
「愛美ちゃん硬い話は止めて楽しもう♪」
沖田さんって冷たいって印象だったけど現実は全然、普通の男の子だった。
年下だからなのか『可愛い』って思っちゃう。草食系癒し男子?かな?
「愛美ちゃんは僕よりお姉ちゃんだけど僕、年上のお姉ちゃんがいいなって思ってたけど愛美ちゃんは年齢差があまり感じないね」
「それって誉め言葉?それとも私が幼いって言うの?総司(笑)」
「どっちもかなぁ~」
「もぅ!総司はオコチャマなのに」
オコチャマで沖田さんが少し反応した顔をした。
「愛美ちゃん♪僕がオコチャマかどうか試してみる?」
悪戯っぽく微笑みながら沖田さんが顔を接近してきたのでビックリのあまり硬直してしまった。
「お~い愛美ちゃ~ん」
あまりにも固まり過ぎて沖田さんは少し風に当たって休もうと広間から二人で廊下に出てきた。
私は柱にもたれ沖田さんは距離もあけず隣に座った。
「お……沖田さん」
「違うよ、総司でしょ?間違えた子にはお仕置きしなくちゃ、ね」
って草食系癒し男子が胸キュンな流行りの『壁ドン』で廊下の柱に手をつき私を見下ろしながら……
「おい総司、このチビ女に興味でも持ったのか」
えっ?土方さん?何で屯所にまだ居るの?
しかもいつから見てたの?
「副長は愛美ちゃんと僕が二人でいて気になりますか?」
沖田さんも挑発する様な返事に私、どうしたら良いのかオロオロしてしまうやん。
「……ちっ。別に」
「副長も楽しんで下さいね!気をつけて行ってらっしゃい」
沖田さんが土方さんに言いながら私の肩に腕を回しわざと恥ずかしくなる様な事してるの?
「気が変わったんだ。今日は出て行くのはやめだ」
「じゃあ愛美ちゃん、副長と一緒に寝ちゃうの?僕の部屋で「総司……」」
土方さん、出掛けたら良いのに(笑)
比べたら悪いけど私は沖田さんと仲良く過ごしてる方が楽しいのに。
「チビ女は一応、俺が預かってるから保護者として……して……」
言葉に詰まってる土方さん。
まだ私の事を疑ってる風に見てるの?
何『チビ女』とかアダ名も着いちゃってるし!
「じゃあさ今日は3人で寝ようよ。僕が副長の部屋にお邪魔しますね」
沖田さん、酔ってるから?
大胆不敵な態度に私が困ってしまった。
私は沖田さんと仲良くなれて嬉しいけどこれ以上に私がどうこう沖田さんとなりたいとか求めてなかったし肩に腕を回したままなんですけど////////。
「きゃっ」
一瞬何があったのか沖田さんの膝の上に乗せられ
「愛美ちゃんちっちゃくて可愛いから僕の膝の上に乗せちゃった」
クスッと笑顔で言う沖田さんが土方さんに何を意味してるのか理解できない。
顔に手をあてて隠すけど私、真っ赤になって見られたくない!
「愛美ちゃん♪」
ひゃっ!これでもかってぐらい沖田さんは私のウナジに顔を埋めながら土方さんをからかってた。
「もう総司の馬鹿っ」
「良い匂いがするから甘えちゃった」
土方さんと目があった。
初めて見た顔をしていた。
だから沖田さんもからかって私に恥ずかしくなる事をしてるの?
土方さんが居なかったらこんなことしないよね?
「愛美、降りろ」
「あっ……えっ?」
「僕は離さないよ」
ムギュッと沖田さんが腕をきつく力を入れて離れない様にくっついた。
土方さん、降りろって私の意思で乗った訳じゃないのに、総司に言えばいいのに……。
だいたい酒の席で自分が出て行ったのにこの廊下までの流れも知らないのに
「土方さんは総司と私が仲良く飲んでたのがダメなんですか?」
凄く答えられない事でも言ったら黙ってこの場から行ってくれるかなって思って言っちゃったけど土方さんって黙っていても女子から寄ってくるし沖田さんみたいに普通に話したり笑ったりしないし警戒心も持たれてそうな感じの人に命令系で愛美ってムカつく!
ん?土方さん、私の事を名前で呼んだ気がするんですが?
「もう愛美ちゃんと仲良く飲んで楽しんでるのを邪魔しないで下さい……。」
「邪魔して悪かった。お前がそうやって俺に言うのは初めてだな。ただ飲み過ぎじゃないか?」
「僕が愛美ちゃんにくっついてるのはお酒のせいじゃないですよ!土方さんの方が酔ってるんじゃないんですか?僕と愛美ちゃんに嫉妬ですか?」
大胆不敵すぎるでしょ!私の事とか土方さんが思う訳もないじゃないの?
だけど否定しないし土方さんってよく解らない人。本当に私が今まで妄想で恋してた気持ちがムダな時間だったな……。
「もしかしたら嫉妬かも知れんな。俺の顔色を見て愛美に少しやり過ぎじゃないか?」
えっ?沖田さんは土方さんが解っていて?
でも気持ちがなくて沖田さんがここまで行動するほど女と遊んだりしてないように見えるけど……。
「嫌いな子にはくっつかないですよ」
いくら酔ってるとかなっても確かに ここまでしないよね?
沖田さん私が勘違いしてしまうような話し方で行動で困ってしまう。
「わ……私、どうすればいいですか?部屋に戻りますけど……。」
だんだんとドロドロなる前にこの場から逃げたいんですが
私の存在は歴史には無い存在。
だから沖田さんも意地悪しないでほしい。土方さんもスルーしてほしかった。
いつ元の現実に帰れるのかわからないのに嫌な思い出だけしか残らないのに……。
私の一言も歴史を変えるのかと思うと少し怖くなってきた。