第21章
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
そんな挨拶の中、八木邸と前川邸の合同で元旦を迎えた。
勿論、私は『芹沢鴨』と言う人物には土方さんの遠い親戚で女中の仕事の手伝いとして説明されていた。
この芹沢さんは評判もあまり良くなかったみたい。実物と写真で見て……。
そんなに悪くないように見えるけど
元旦の挨拶のそんな中、総司は近所の子供と遊んでいた。
どちらかと言うと総司を誘いに子供が屯所に来るのだけど子供と遊ぶ総司には誰も文句は言わなかった。
むしろ、今は『壬生浪士組』として京の町では評判は良くなかったみたいで総司が子供と遊ぶのには評判の目を上げるみたいな部分もあるみたい。
近藤さんと芹沢さんは上座でその横に幹部達が座っている。
幹部達が……。って土方さんの隣にいる女子は誰?誰?誰?
美人でトシさんと並ぶと美男美女。
しかも馴れ馴れしく『トシ』なんて呼んで土方さんなんかその女子にペコペコなってる始末……。
私は誰だか知らないけど自分の中でイライラしてきてるのがわかる。
いわゆる『嫉妬』なのは顔に出さない様にしていたのに……。
元旦から調子がくるう!
むっかつく!今、耳元まで近づいてヒソヒソとっ!あぁ……持ってる箸を折りたい気分!しかもクスクス笑ったり仲良くツッコミ入れたり!
面白くない!
実に楽しくない!
「お~い愛美!こっち来いよ」
トシさんが浮かれながら私を呼ぶ。
隣の女子に横目で見ながらイライラと歩いて行った。
「本当!トシが言ってた通りね」
何で私の事を見て笑いながら言う?
その余裕の笑い!
「のぶ姉あんまり余計な事、言うと……」
のぶ姉?
……って多摩に居るお姉さん??
凄く綺麗な人。この人がトシさんの実の姉なんだ。
「愛美ちゃん、お久しぶり(はじめまして)」
「姉さんって気付いていなかったから私、妬いちゃった……。トシさんも言ってくれてないから私……」
「トシが悪い!ちゃんと愛美ちゃんに私が来るの言わないから余計な事考えちゃってんじゃん!」
はぁ……。何か一気に肩の力が抜けてホッとした。しかし姉さん綺麗な人。
「ほんっとうにトシには勿体ないぐらい可愛いね。あんたちゃんと掴まえておきなさいよ!こんなに良い子を泣かしたら私が許さないからね」
のぶ姉さん、怖い……。
結構な感じでトシさんに言ってるんだけど……。
私はトシさんに嫉妬している。
でもこの嫉妬はタイムスリップしてきた私が嫉妬しても歴史に何の関係もなくただ私の夢の中での話で終わってしまう。
のぶ姉さんに見初められても
夢がさめたら物語。
私には記念としての思い出。
「そう思うとあんたさぁいつも可愛い娘ばっか恋仲なるじゃん。どうやってたぶらかすんさ?」
「たぶらかす!?ば……ばか!本気で思ってんだけど姉ちゃんには恥ずかしいから見せねぇだけだ」
「あはは!トシも恥ずかしい事言ったりするんだ」
お腹を抱えて笑いながら話してるけど……本当は私が土方歳三のファンでした。
なんて言えないけど
「私もトシさんが良いと想い恋仲になりました。実家ではトシさんは姉さんが見てきた弟ですけど……あの……。あの……本当は私がトシさんの事このぐらい好きと思いますよ」
と私は『このぐらい』を手でリアクションして姉さんに伝えてみた。
「じゃあ俺はこーのぐらいだな」
腕が長い分、負けた!
「じゃあ私はもっともっとこぉ~んなぐらいよ」
と、立ち上がったいて頑張ってリアクションしてみたら
私、転けそうになり
「ひゃっ!」
と同時にトシさんが私を支えてくれた。
「熱い熱いって(笑)愛美ちゃんのそんな所に惚れたんでしょ?トシって世話好きなんだもんね」
「見苦しい所、スミマセン……。私、どんくさくて……。」
「女子はそのぐらいが可愛いのよ。私みたいにこの弟が居れば可愛げなくなってしまっちゃったわ」
姉さんと私はクスクス笑いながらトシさんの色々な事やら話をしていた。
勿論、隣に居るトシさんは面白くないみたいで近藤さんの席に移動して行った。
トシさんが席を外してから
のぶ姉さんと私は少し真剣な話をしていた。
「愛美ちゃん、トシと居たら苦労ばっかりだけどね、あの子がちゃんと私に紹介するのは気持ちの整理がついたからだと思うの。これからもトシの事、お願いするね」
「……。私で本当に良いのですか?どんくさいしまたまだ子供っぽいって言うか大人の色気もないし……。それに……」
「もっと自信持って良いのよ!私は愛美ちゃんが夫婦になってくれたら嬉しいけど……。トシも恥ずかしがってるけど姉だから第六感で何となくトシと愛美ちゃんは運命の人って感じてる。トシは愛美ちゃんが居ないとダメになりそう……。」
のぶ姉さんの第六感は女の勘でたぶんだけどそうなるのかな……。
生まれ変わっても絶対にお互い必ず見つけるって約束した事や、知ってるかの用に見透かされてる。
「何がこれから私達2人にあるか予想もつかないですけどトシさんに守られ大切にされて、そして……」
「可愛い『赤ちゃん』連れて里帰り待ってるからね」
「/////////////。はっはいっ!」
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元旦はトシさんも仕事がないみたいなのでトリオも行きたがっていた初詣の話題をしていいのかな?
「副長、少し部屋に戻って待ってます」
「あぁ……」
みんなの前では暗黙の了解であってもトシさんって言えなくて副長と呼ばなくてはならない。
広間を抜けて部屋に戻りホッと一息入れた。それにしても疲れてしまった。
楽しい元旦がまさか嫉妬にヤキモチ、そして緊張しまくり……。
凄く綺麗人だったなぁ。
私にはない大人の色気があって
私なんて子供っぽいだけで『惚れられた部分』がわからない。
少し着物を崩しダラダラとして休憩していたらいつの間にか眠ってしまった。
「トシさん、お願い!ちょっとオムツ換えてあげてほしいんだけど」
「ちょっと待ってろ。最近、俺も『育メン』になってきただろ?」
夢の中でそんな会話をして平和な家での何気ない夢だった。
夢なので勿論、平成の時代での家族。




