第20章
私、この寒さに堪えれません!
幕末の冬はキツかった……。とにかく寒い!!
毎朝、布団にくるまって起きる気もないですよーモードで困ってます。
土方さんと朝から寒いので布団の中でくっつきながら会議です。
「温暖化?そんなに未来は便利な物があるのに地球に優しくないのか」
「そうそう!エアコンで部屋は温いけど自然を破壊してるとか知っていながらも使ってしまうんよ!だから寒い!!」
「俺、来世でちゃんと地球に優しくしてやろう」
「トシさん寒いから隙間作らないで(笑)」
「でも起きないと総司がまた部屋に来る……「副長ぉ~♪おはようございまぁ~す」」
『スパーン』
あぁ……始まった。
結局、目覚まし時計は総司のこの1発目から朝が始まる。
「毎朝毎朝毎朝……お前は同じ事を何回聞きたいんだ?」
「僕は親切に起こしに来ただけなのに(笑)」
沖田総司、この笑って言う時の腹グロは恐ろしい。
「総司、今日から俺と地球に優しくしろ」
「?また愛美ちゃんと楽しそうな話してたんですね?地球に優しくはしますけど副長に優しくしても……」
鬼ゴッコの始まりで幕末の朝は始まる。
と、私も仕度して急がないと!
総司目覚まし時計は毎朝で、初めての朝はビックリしたけど馴れたら総司も良いとこあるのに……。
わざわざ怒られる?
お陰様で布団から飛び起きれるんだけどね。
「おはようございます」
井上さんは台所で悩んでいた。
「あぁ愛美さんおはようございます。」
この間の『もち米』を眺めて考え事をしていた。
「どうしたのですか?」
「もち米を水に浸して置きたいんだけど大きな入れ物が無くてねぇ……」
「きれいなタライは調度良いと思いますが……。」
「タライか!愛美さんありがとう。タライを3つほど買いに行こう」
「解決してよかったです」
「洗濯しないから思い付かなかったけど、タライだったら何とか間に合うかな」
そう考えるともうすぐ『お正月』がくるのか……。幕末にきて28日目なのかな?
忘年会も終わってしまってるしボーナスも貰い損ねたし最悪やん私!
少し暗い顔で朝御飯の仕度をしていると
「おっはよぉー愛美ちゃ~ん」
あっ朝から元気な原田さんがもち米の俵を運ぶのに手伝いに来てくれた。
「おはようございます。原田さんは毎朝元気で羨ましいです」
「愛美ちゃんは朝は苦手な方?」
「なかなか寒くて……起きれないなぁ」
「じゃあ朝は俺が暖めに行ってあげ「朝から軽いし佐之助!愛美ちゃんおはよう」」
「永倉さんありがとうございます」
永倉さんが来てくれて幕末チャラ男の原田さんから解放された。
そう言えば藤堂さんは来ないの?
トリオで行動してるイメージがあるから藤堂さんが気になるけど……。
「あの……永倉さん、藤堂さんは来ないの?」
「あ~夜の巡回でさっき寝たから来ないよー。昨日、なんか街で露店の商人達が場所取りあいに仲介して大変だったみたいだよ。」
「巡回も色々と大変なんですね」
「そうなんだよ。露店なんか1つの組織だけじゃないから場所代やら親方同士の派閥なんかあるから大変だぜ」
なるほどね!それは今の時代にもある話なんだけど抽選にして場所を取るから揉める事はないけど。
「しんぱっちゃんさぁ俺、あそこの団子屋のオマサちゃんと初詣行きたいんだなぁ。誘ったら断られたら嫌だし……」
「佐之助だったら軽い言葉たくみに成功するんじゃないの?店行って感じも良かったし」
佐之助さん、心配しなくても夫婦になるから大丈夫だよ(笑)
なんて今は私から言えないし。
男子の恋バナは時代とか関係なくあるんだな(笑)学生の頃を思い出すわ
「愛美ちゃんは副長と初詣?」
「わかんないよ、また『仕事仕事』で断られるかも」
「だったらさぁ愛美ちゃんも良かったら一緒にみんなで行かない?副長が行けなかったらまた声かけてくれたらいいから」
「永倉さんありがとう。また副長に聞いてみるね」
そんなこんなで朝御飯の修了。
台所から出ると寒い!!
やっぱり火を使ってるから暖かいなぁ
あの足首を挫いた日から齋藤さんが膳を運んでくれた。
広間もみんなが居れば多少だけど暖かい。
「いただきます」
今日は里芋の味噌汁で温まろう♪
沖田さんは……。
とにかく偏食が酷い‼
野菜は嫌いみたいだし、魚なんか骨があるから無理とか
子供か?(笑)
「総司、ありえない。」
「えっ?」
「私が朝から頑張って作った……ご飯を残すとかありえない。」
「愛美ちゃんの……。ごめん……」
かなりへこんでるみたい?
「おい、愛美。総司に食べさせてやれ」
えっ?今、何て言ったの?
トシさん、この『沖田総司』に食べさせてやるって意味が……。
総司は横にいてブラック一杯の微笑みで
「愛美ちゃんに食べさせてもらう♪」
……。トシさん、これは計算されてるんじゃないとは思ってないだろうと
恐ろしい事を企むから
絶対に総司だからトシさんに何か仕掛けるに決まってる。
「はい、魚の骨取ったから寄せてる身の部分は食べれるよ。どうぞ!」
と膳に返したら
「あ~ん♪」
えっ?
「愛美ちゃんに食べさせてもらう♪」
チラッと私はトシさんに目でテレパシーを送ったけど飽きれ顔のトシさんが首を横に降って溜め息をした。
「おい!総司!!自分で食べれる「だって副長が食べさせてやれって命令しましたから」」
「ちっ……。」
うわぁ!私、どうしたらいいの?
こんな事になるだろうとか想像してだけど『沖田総司』は大胆過ぎる‼
「愛美ちゃん、あ~ん♪」
語尾に音符なんかいらないから……。
トシさんは不機嫌に舌打ちしているし
「総司は大きい赤ちゃんだよね」
「僕は副長の命令を聞いただけですよ」
仕方無いから渋々と総司の口に運んであげた。
「これだったら毎日ちゃんと食べれます!それに愛美ちゃんの箸で食べれるなんて……」
はっ!箸まで計算してたの?
案の定、もう少しで鬼になりそうな土方さんが睨んでいた。
全部完食したけど何で総司は悪巧みしてくるの?
「明日から骨だけ取ってやれ。それに総司は自分で食え」
「もっと愛美ちゃんに食べさせてもらいたいなぁ~」
沸騰寸前の土方さん、これ以上に煽るのは止めて欲しいんだけど
「総司!!お前は明日から俺が食べさせてやる」
「僕は『男色』に興味ないですよ……。」
「じゃあ明日から一人で出来るだろ?」
そんな問答のやり取りの中でふと気付いたけど『沖田総司』は幼い頃に両親を亡くし近藤さんに面倒を見てもらい、物心がついた頃には剣を握る宗次郎。
親に愛情を注がれ生きてない人。
ただ剣を握る総司と腕前と病気の事しか知らなかった。
年齢もたぶん?で残ってるし
そんな『沖田総司』は幼い部分が時々、何かの拍子で出てくる。
だから土方さんは兄として慕ってる。
ただ私の存在があるから総司も土方さんをからかって楽しんでるの?
ますます理解できない。
「また一人ぼっち……か」
ボソッと言った総司の言葉は誰も気付いていなかった。
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もう今日は『大晦日』だった。
庭で楽しそうに餅を付く皆がいた。
近所の子供たちに餅を配ったり遊んだりする総司は凄く優しくて子供たちは楽しそうに笑ってた。
土方さんは部屋にこもって何か書類を書いていた。
トリオは鏡餅を作っているみたいだけど歪な形で失敗ばっかり……。
こんな平和な時間が毎日あったらなぁ……。




