第17章
今日も息が白くなるぐらいの寒い中、洗濯をしていた。
相変わらず齋藤さんも手伝ってくれた。
「齋藤さん、今日もいちだんと冷えますね!お稽古は大丈夫なんですか?」
「稽古は総司に頼んだ。」
そっか……そう言えば総司も腕は凄く良いし強くて有名だったもんね。任せて安心って感じね!
それにしても寒いっ!
手が悴んできてヤバイ(笑)
そんな私を見て齋藤さんが
手を暖めてくれた。
「すみません……。」
「愛美さんの手、大丈夫ですか?」
本当は大丈夫じゃないけど大丈夫と一応言わないと。
「大丈夫ですよ。ありがとうございます。」
洗濯を済ませ今日は買い出しに行かなくては行けなかった。
京の町に一人では迷子になるので付き添いと巡回を兼ねて土方さんに着いてきて貰う事にしてもらった。
部屋に戻る途中に原田さんと永倉さんと藤堂さんの3馬鹿トリオに会った。
「ちぃ~す!愛美ちゃん元気?」
軽く声を掛けてきたのは原田さんだった。原田さんってチャラ男な感じで馴染み易いけど……。
「こんにちは。元気ですよ」
少し頭を下げて急いで部屋に向かった。
「「「やっぱり愛美ちゃんいいねぇ」」」
「うるせえ!廊下で騒ぐな!」
出ました。鬼三さん3馬鹿トリオに雷を落としてます(笑)
もう慣れてきたので部屋に戻った。
「トシさん、巡回の時に一緒にお使いも着いてきてもらって、すみません。」
「愛美が迷子になったり一人で外に出して何か合ったら俺が困るからな」
/////////。私ったら幸せ♪
何だかこんな時には『愛されてる』が伝わる。
一応、お出掛けの仕度をして土方さんの巡回時間を待っていた。
そう言えばポケットにリップがあった様な……。とタイムスリップした時の服を出してリップを探した。
あっあった!
ほんのり色付くメ○べ○ンのピンクのリップ。
ひさびさにリップつけるなぁ
真冬だから必需品っしょ!
そうこうしているうちに土方さんが筆を置き、巡回の仕度をしだした。
一瞬、顔が合ったけど土方さんが驚きもう一度、私の顔を見られた。
「愛美、紅でも引いているのか?」
「少し色付くリップなんだけど目立つかな……」
「その『リップ』とはまた意味が解らないけど……可愛いから目立つ!」
そんなに目立つ顔なんかな?
土方さんと一緒に歩く時ぐらいお洒落もしたいでしょ?
って髪はアイロンないしストレートしか出来ないけど
「ちゃんと着いてきてくれよ!」
「うん!頑張る」
初めての京の町は観光気分でドキドキワクワクしていた。
巡回メンバーは
副長 土方歳三
総長 山南敬助
そして私と3人で町に出た。
右隣も左隣も豪華メンバーの指に入る二人に挟まれ緊張してきてしまった。
出来るだけ歩幅を私に合わせてくれて歩いてる。
右も左も解らないけど何だか町の風景に私は混じってないなぁって思った。
通りすがり何となく見られてるのは髪の色が違う事、それと山南さんに土方さんの間に挟まれ歩いてるから、と沢山あるみたいだけど気にしたら負けよ負け!
観光気分で楽しまなくては……。
何気なく目に入った店があった。
簪屋にかわいらし桜の華に金色の差す部分、てかわいらしと言うより派手で目に入ったんだけど流石にあの簪は目立つからあまり売れないのかな?
「トシさん、あの……」
「どうした?」
「あの簪、ちょっと気になって……。」
試着ぐらいはこの時代も出来るだろなって思い少し店に寄ってもらった。
やっぱり近くで見ると綺麗なガラス細工で桜の華で角度で薄いピンクになったり濃いピンクになったり不思議な感じで気に入ってしまった。
でも簪ってどうやって付けるの?
「トシさんこれってどうやって付けるの?」
「?愛美は簪は普段使わないのか?」
「ないの……。これ……気に入っちゃった」
土方さんは簪を手に取り少し私の髪をねじり簪をさした。
山南さんが驚き
「凄く似合ってますよ!愛美さん、今日の紅とより一層華やかになりますね。」
そんな褒められて……
と横にいる土方さんの方が照れていた。
「?」
鏡がないから自分で確認出来ないけど何故?土方さんが照れるのか少し意味が解らなかった。
「ちょっと待ってろ」
店の方に土方さんが入っていった。
店の主人と何か話し簪を購入した。
「えっ!いいの?いいの?」
「大切に使えよ」
「うん!ありがとう♪」
そんな感じで初めての京の買い物に私は凄く嬉しかった。
絶対に大切にするよ!
だって土方さんからのプレゼントなんだから。
どんな感じで簪がついてるのか気になって気になって仕方なかった!
今日みたいな良い天気だったら光のかげんでキラキラとなってるんだろうな。
ところで肝心のメインの『買い物』とは餅米を頼まれ一人では持てないので着いてきてもらった。
お米屋に着くと土方さんが店に入って何か話ながら店主と取引していた。
その合間に山南さんと二人で路上で待っていると……。
少し洋風な感じの3人が歩いてきた。
あっこの人が
『坂本龍馬』『桂小五郎』『岡田以蔵』
坂本龍馬は、そのまんまって感じの人で
岡田以蔵は人斬り以蔵って呼ばれてる様な人じゃない普通に男の子って感じで、桂小五郎……めちゃんこ嫌なタイプ!!
あの人の事を思い出してしまいそうな……。あの人……桂木さん。
山南さんと一緒にいるから大丈夫だと思うけど……。
坂本龍馬は私を見て異国に興味のある人なので不思議そうに見てきた。
岡田以蔵は私を見て下を向き顔を真っ赤にしていた。
桂小五郎は私を見て近寄ってきた!
そして山南さんの方に
「この女子は君の恋仲かい?」
山南さんは返事をすぐに出した。
「お嬢は土方歳三の恋仲だ」
「たかが恋仲だろ?と言う事はまだワシにも可能性があるみたいだな」
「いや……キモい」
思わず私は桂小五郎の言葉にキモいと言ってしまった。
店から出てきた土方さんが対立組の3人が居るとは知らず私に近付く桂小五郎に気付き
「おい!愛美から離れろ」
腕をグイッて引っ張って来たのは土方さんではなく桂小五郎だった。
「離して!イヤッ気持ち悪い……」
もう泣きそうで引っ張っている腕を桂小五郎は私の手の甲を唇を当てた。
『パーン』
私は反射的に桂小五郎の頬を平手打ちしてしまった。
そして離れた瞬間に土方さんが抱き寄せてくれた。凄く土方さんの怒ってるオーラが伝わってくる。
山南さんだけが冷静に
「今日の所は引き取り願いたい。これ以上、事を荒立てる訳にはいけない」
「失礼しました。桂の失態はお許しください。よく仕付けておきます」
と坂本龍馬が一礼をして3人が去っていった。
私は生理的に涙が溢れ出ていた。
「ごめんな……」
土方さんが謝りながら私の頬から流れる涙を優しく拭ってくれた。
山南さんには確か恋仲が居たの、えっとかごの中の小鳥……。
だからこれだけって感じに見えたんだろう。
「ふぇ~ん……もうあの人無理!」
「後で消毒してやるから、な!」
餅米は後で屯所に持って来てくれるらしく一先ず私達も屯所に帰った。
「もう愛美は町に一人では出せないな」
手の甲を水で洗い流して、これでもかってぐらいに洗ってくれた。
後ろから抱き締めてくれながら私に触れた部分を……洗い流して綺麗にしてくれた。
「トシさん……迷惑かけてごめんね」
「愛美が可愛いからこんな事になっただけだろ?悪いのは俺が守ってやれなかったから嫌な思いさせてしまった。」
違うよ!違うっ!あの人が悪いの
「愛美、今日は一緒に風呂に入って全部綺麗にしてやるからな」
「もうトシさん!恥ずかしい事を平気で言わないで(笑)」
「ご機嫌直ったか?今晩はもっと消毒してあげないとな」
やっと笑顔が戻った私を見て土方さんも安心してくれた。
なんだか日々、土方さんの『愛』が伝わってくる。
この幸せが続いたらな……。